インティオとオメガ 前編
SF国内を旅する2人の魔法使いがいました。
一人は
もう一人は
歩く二人の周りを舞う粉雪はニクスが魔法で降らせているものです。
ニクスがイノセントに話しかけます。
「イノセントさん。これから行くS区ってどんなところなんですか?」
イノセントは目を輝かせて、答えます。
「とっても面白いところだよ!
大きくて透明なチューブの中を乗り物がビュンビュン走っててかっこいいし、建物が高くてかっこいいの!
F区と真逆で、科学だけの街だから新鮮で面白いんだ」
イノセントは楽しそうに杖を振り回します。
危ないですよ、とニクスが言う前に、自分の顔に杖の先をぶつけてしまいました。
鼻を赤くした魔法使いとその弟子は少しして、S区の手前までたどり着きました。
見上げると幾何学模様でガラス張りの巨大なタワーが見えます。S区のシンボルです。
突然イノセントが、あ!と大きな声を出しました。
「ニクス君、雪止めて、雪!」
早く早くとせかすイノセント。
ニクスは困惑しながらも言われた通り、手袋を外して掌の紋章を額の紋章にかざします。
すると一瞬額の紋章が淡く光ります。
舞っていた粉雪は溶けて消えてしまいました。
「急にどうしたんですか、イノセントさん」
「あのね、S区は基本的に魔法が禁止なんだ。
S区の人たちは真面目な人が多いから、不確定要素が多い魔法は緊急事態じゃないときは使っちゃダメなんだって。
僕も始めてS区に行ったときに、間違えて魔法を使って怒られちゃったんだ。」
気をつけようね、と言いあいながら、二人はS区に足を踏み入れました。
S区は2人が思った以上ににぎわっていました。
「前来たときも、こんな感じだったんですか?」
ニクスがイノセントに聞きます。
「ううん。前はこんなことなかったよ。
今日はお祭りでもしてるのかな」
よく見ると、人々の多くはタワーに向かっているようです。
「僕らも行ってみようよ。なにかあるのかも」
イノセントが提案すると、ニクスははい、と返事をしてついていきます。
タワー周辺は街中よりもごった返していました。
誰もがタワーに入りたがって列に並んでいます。
イノセントが列に並んでいる科学者に聞きました。
「ねぇ、これって何の列なの?」
科学者は魔法使いのイノセントとニクスを見て、少しいやそうな顔をしてから答えました。
「ついさっき、雪が降ったんだ。S区は天候も完璧に管理されているというのに。
だから文句を言いに来たんだ。」
「雪が降ったせいで、困ったことがあったんですか?」
「ああ。気温、湿度、日照時間、それら全てが研究に関わってくる。
魔法なんてまがい物に頼っている君たちにはわからないだろうけどね」
そういって科学者は、シッシッと2人を追い払いました。
ニクスは、しまった、と思いました。
雪が降った原因は、きっと自分だと思いました。
イノセントも、同じことを考えていました。
「イノセントさん、俺、謝ってきます」
「僕も行くよ」
2人はタワーの中に入って、列の最前を目指しました。
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