第19話 決行
私はエリナに全ての真実を明らかにするX(エックス)デーをクリスマスイブと決めていました。一番インパクトを残せる日・・・、その日以外には無いと決めていました。
それまでの約一カ月半の間、何度かエリナのカレにエリナとの約束をドタキャンさせ、そのたびにエリナから約束をドタキャンされましたという連絡を受け、エリナの彼の行動を探っている振りをしました。
もちろん私は何もせず、翌日エリナに、今回もカレの居場所をつきとめられなかったの、ごめんねと謝るという小芝居を続けました。
そのたびにエリナはいいえ、カレがドタキャンしてくるたびにレイコさんに早く仕事を切り上げて待ち伏せしてもらったり、通学ルートを探し回ってもらったりで本当にすまなくって・・・、もうあきらめても良いんですよ。と本当にすまなそうに可愛い猫目をうるませて私を見つめていました。
エリナが私に本当に感謝してくれている。そしてふたりで秘密を共有してひとつの目的に向かって物事を進めている・・・、そんな状況に私はわくわくしてしまっていました。でもこんな茶番はいつまでも続けているわけにはいかない・・・。
クリスマスイブに、エリナとエリナの彼は当然のようにお泊りデートの約束をしていました。
街の中心街にあるおしゃれなシティホテルのレストランで食事をして、そのままスイートに泊まるというトレンディ雑誌のお手本のプランのようなデートでした。
私はその情報をエリナから聞き出し、同じホテルの別室を予約しました。クリスマスイブの宿泊なのでもう予約は厳しいかなと思っていましたが、スイートやダブルの部屋と違ってシングルはまだ空いていました。
そしてエリナの彼に、クリスマスイブに少しだけで良いから時間をつくって欲しい、とお願いしました。さすがにエリナの彼は、その日は彼女と約束していて、キャンセルはできないよ、麗子さん。と、今回は絶対ダメという決意を持った返事でした。その態度は想定内でした。
わかっているわ。でもディナータイム前の早い時間なら良いでしょう?ホテルの部屋も予約してあるのよ、と言いました。
そして予約してあるホテルがどこかを告げるとエリナの彼はとても驚いた表情をしましたが、素早くその日の行動プランを頭の中でシミュレーションしている様でした。
同じホテルでその時間までなら、麗子さんと会った後にエリナと食事することが出来る、そう思った様でした。
わかった、麗子さん、その後に予定があるので長くはいられないけれど、クリスマスイブに少しだけ、一緒に過ごしましょう、と言ってくれました。私は全て計画通り、と笑みを浮かべました。
その笑みは、自分が時間の都合付けたことを私が喜んでいるからだと、エリナの彼は勘違いしている様でした。
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