第4話
【名前を】
俺は、卒業アルバムを開いていた。
わたしは、卒業アルバムを開いた。
彼女の名前を思い出したかった。
彼とすごした日々を、思い出したかった。
そこには、今よりずっとあどけない彼女と、照れ隠し全開の幼すぎる俺がいる。
そこには、今よりずっと馬鹿な夢を見てた、不器用に彼と笑うわたしがいる。
「桐宮、桜々子」《きりみや、さくらこ》
「立風、硝介」《たちかぜ、しょうすけ》
「「思い出した、」」
さくらこ。きりみや、さくらこ。彼女を体現するに相応しすぎる可憐な名前だった。
しょうすけ、しょうすけ。わたしはその名前を何度も呼んで、笑いかけたり、怒ったり、色んな感情を乗せて彼を呼んだ。
そこには、ただただ甘酸っぱいだけの、2匹の井の中の蛙がいる。
真夏の桜 彩鶴 @kokoa558
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