宇宙人の登場する話と言えば、現代的でシャープでスマートな印象を受ける一方で、時には無機質的な冷たさが文章表現によく表れるように思います(もちろん私個人がそう感じることが多いということです)。それ自体悪いことではないのですが、その中でこういった心のつながりをテーマに書くことは難しいように思います。しかし、この作品はこれまで私がそう思っていたことをいい意味で裏切るものとなっています。誰よりも人間らしい宇宙人が主人公との関係を深める描写は確かな温かみを感じることができ、それがより私たち読者を物語へと引き込む仕掛けとして機能しているように思います。それから、タイトルもよかったですね。ひらがなでストレートに『ふるさと』と表現することによって、『ふるさと』を想う宇宙人と主人公の近似性を明確にし、本質的には宇宙人と私たちは同じであることが強調されているように思います。心に残るいい小説でした。