第1話 (3)

そういえば、今年の4月。白咲と同じクラスになって再開したその日。白咲が言った言葉を思い出す。


「慶崎くん。お久しぶりです。二年生で同じクラスになれるなんて、運命、だね?」


まったくもって運命ではない。一年生の春、あの駅で白咲と出会ったあと入学式で同じクラスだと判明した後に言われると少しドキッとしてしまうかもしれない。しかしあの駅のホームの時点で入学式なんてとっくに終わっていたし、今はもうあれから一年経った二年生だ。偶然にも程がある。

しかし、再会した後にそこまで言うのは酷なので、俺は苦笑いでその場をにごしたのだった。

その時は、少し不思議な子なんだな。それくらいしか受け止めていなかった。


その白咲は今、


「慶崎くん、好きだよ♡結婚式はいつにしようか?」


机にひじをついてスマホをいじっていた俺に同じく両手で頬を掌にのせ、肘をついて前の机から教室のど真ん中で求婚をしてらっしゃる。

ついにお付き合いもすっとばして結婚の予定までたてられている。


クラスの連中はいつもの風景すぎてどうでもいい。とでも言うように、特になにも反応はしめしていない。


「結婚もしないし、教室で求婚するのもやめろ。何回言ったらわかるんだ」

「だって、わたしと慶崎くんが結婚するのは運命なんだもん。遺伝子レベルで決まっているの」


頭のネジがはずれていやがる。こういった告白や求婚は二年生の春、同じクラスになってからずっと続いている。20回を超えてから数えるのをやめた。それにしても女…というか白咲は運命という言葉が大好きだな、本当に。


「しつこい。もう二度と話しかけないでほしい」

これを言うのももう何度目か知らず。

「ひどーい!慶崎くん。こんなにも好きなのに!」


涙目になる白咲をするりと抜けて、窓際にいた茶髪と黒髪の友人に二人助けを求める。


「助けてくれ。ストーカー女が今日も求婚してくる」

「は?まだ付き合ってなかったの?さっさと付き合えばいいのに」

「ノロケ乙。さっさと死ね」


酷すぎる。なんだこいつら。この友人二人もまた癖のある人物なのだが、それはまた今度。

また今日も頭のネジがぶっとんだ白咲から逃げる一日が始まる。


俺にはどうしても、白咲とは付き合えないのだ。少なくとも今は。

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