第33話 ダンジョン突入

次の日、朝からセントさんと話をした。

セントさんは自分の目指していた事を恥じていたみたいだった。「5貴族になれるというチャンスを逃したくない」そんな欲に駆られて家族の本当の幸せを考えていなかったと話してくれた。

その上でクラスの事を頼むとも言っていた。


・「俺はクラスの事を守りますよ。」


そう答えたが何か違っていた感じがした。


・セント

「今はそれでいい、今は。

クラスの傍に居てやってくれ。」


そんなセントさんの言葉が頭から離れなかった。

何か間違えたかな?


ちなみにキロスは今日から学院に戻った。

クラスの修行?は一時中断となり、冒険者として俺と一緒に居る事になった。俺としてはありがたい限りです。


・ベルガル

「ニュートは鈍感なのだな。」


ベルガルに馬鹿にされたが何のことかわ解らなかった、今度詳しく問いただした方が良いかな?


・クラス

「私は幸せです。」


昨日まで元気のなかったクラスもすっかり元気になってくれた、セントさんの了承も得た事で一緒にダンジョンに行く事となった。


・クラス

「ベルガルが一緒ならダンジョンを看破してしまいそうね、でもゆっくり攻略していきましょう。あんまり早いとまたニュートに逢えなくなっちゃう。」


ナナ師匠の所に居ると戦ってばかりでクラスとは逢えない、多分その事を言ってるんだろう。


ダンジョンに向かうのは俺とクラス、ベルガルの三人だ。前衛2人、後衛1人のPTとなる、ここにキロスが入ったらバランスの良いPTが出来上がりそうだ。


・ベルガル

「主に攻撃はニュートとクラス様に任せよう、敵の攻撃は我が引き受ける。」


ダンジョンに向かう途中で作戦会議をする。

戦闘中の連携は大事だからね。


・ベルガル

「移動に関して先頭はニュートに任せる、お主の感覚でスカウトをやってみろ。クラス様は我とニュートの間で安全第一で行きましょう。」


クラスはPTの生命線だからね。

しっかり守らなきゃ。


・クラス

「解ってる、ヒーラーの務めね。まずは自分の安全を確保するわ。」


攻撃魔法も回復魔法も使えるクラス。

そう考えると凄い優秀な後衛だよね。


俺達は数日を準備に当ててからダンジョンに向かった、本当なら軍の管轄なので一般冒険者は入る事が出来ない。しかし俺には国から授与された勲章がある、お陰ですんなりと通してくれた。


早速ダンジョンに潜る事にした。


・ベルガル

「まずはPTとしての機能を確認しながら進もう、我もこうしてPTとして動くのは初めてなのでな。」


何気にダンジョン攻略を一番楽しみにしていたのはベルガルだったらしい。昨夜は楽しみで眠れなかったと聞いた、やっぱり繊細な部分があるんだね。


・クラス

「久しぶりの感覚です。」


俺もダンジョン攻略は久しぶりだ。

そう考えるとゆっくり進む方が良いな。


俺達はダンジョンを進んで行く。

敵の強さは非常に弱い。

弱く感じてるだけかな?


一日目は3層まで進むことが出来た。

敵は弱いのだが、どうも道が入り組んでいてすんなり進めない。軍の演習に使われるのも納得だよね、地図を書きながら進むので遅くなるのだ。


・ベルガル

「こうして少しずつ進むのも悪くないな、地図を買わなくて正解だった。」


実は5層までの地図は売っているのだ。

しかし今回は買わずに攻略する事にした。

今後の練習と考えて買わなかったんだ。


・「いい練習になるよね、これで敵のLVが高かったらもっと手こずりそうだから今の内に慣れておこう。」


俺達は簡易的なテントの中で話し合う。

その後は簡単な食事をして各々で眠る。

テントはクラスが使い、俺とベルガルは交代で火の番と見張りを行った。訓練と言う事でベルガルも眠る事にしたようだ、信頼関係を深めるという意味でこういう連携も大切だよね。


次の日は更に深くまで進む。

軍では5層まで管理していると言っていたな。

現在はその5層に来ている。

敵の強さは脅威なものではない。

まだまだ楽に倒せるくらいだ。


・ベルガル

「3層に比べれば少し強くなってきたな。」


敵の攻撃を受けてみての感想だ。

全ての敵を一撃で粉砕するのではなく、敵の情報も調べつつ進む。お陰で今日は5層でキャンプをする事になった。


・クラス

「ここまでが軍が把握している所ね、この先は更に慎重に進まなきゃいけないね。」


・ベルガル

「クラス様の言う通りです、ここからがスタートだと言ってもよいでしょう。」


ベルガルが見た事ない程ニコニコしている。

楽しみで仕方ないんだね。


ダンジョンに入って3日目、俺達は6層に足を踏み入れた。

敵の強さが目に見えて変わる。

だけどまだまだ弱く感じてしまう。


・「こうして師匠やベルガル以外と戦ってみると自分の強さを実感できるね、自惚れるわけではないけど昔の自分と比べたら少しは強くなったと思えるよ。」


魔物を殴りながらベルガルと話す。


・ベルガル

「うむ、この辺の魔物なら我々が出会った時に戦った魔物の方が数段強いだろうな。ニュートとクラス様はかなり強い人間だと思うぞ。」


・クラス

「ベルガルにそう言って貰えると嬉しいけど、私はもう自惚れないって決めたの。どんな敵でも油断はしないわ。」


クラスの頼もしい一言にベルガルが嬉しそうな顔になる、本当に頼もしい仲間だなぁ。


俺達は何の問題もなく進んで行く。

ちなみに6層は草木が茂っていて進みにくい、更に敵が連携してくるので厄介なんだろう。俺は気配で敵の位置が解るので問題ない、俺の指示でクラスの魔法を放ち、更にベルガルと俺の追撃で終わってしまう。


・クラス

「問題は広大過ぎて地図が作れない事ね。」


そう、6層は道が無い。

そしてやたらと広い。

お陰で迷いまくっている最中である。


・ベルガル

「この霧も厄介だな、どうも方向感覚を失ってしまう。お陰でぐるぐる回っているみたいだ。」


6層に降りてまずした事は大きな木に傷をつけた事、行ってみれば進行方向を決めて矢印を書いた感じかな?それによって進む方向を示したのだ。お陰でぐるっと回って戻ってくると見覚えのある傷が解ってしまう。


・「この傷って最初に付けたやつだよね?」


最初は真似をして俺も付けてたので解る。

最初の木だけ傷が2カ所あるのだ。


・ベルガル

「こうなると対策が必要かもしれぬ、軍が5層までしか進行していない理由が解るな。」


とりあえず今日は5層のキャンプに戻る事にした。

対策が必要だと感じたからだ。


キャンプではベルガルが渋い顔をしていた。


・ベルガル

「クラス様はどう思われますか?」


・クラス

「闇雲に進むのは危険ね、迷ったのも霧のせいだけじゃない気がするわ。少し気になる事もあるし、明日調べてみて考えてみるわ。」


気になる事って何だろう?

ベルガルは気付いているみたいだけど。


・ベルガル

「流石クラス様です。」


一人で納得してるよ、俺にも教えて欲しい。


・ベルガル

「ニュートは気付いていないか?」


・「うん、何も解っていないかも。」


ニヤニヤしているベルガル。

嬉しそうな顔をしてるね、いつも難しそうな顔をしている印象だから楽しそうで何よりだよ。


・クラス

「最初に木に傷をつけたけど、私達が付けた傷しかなかったの。普通なら誰もがやる事だと思わない?」


・「あ、、、確かに。」


・クラス

「多分、あの木は傷をつけても再生するわ。どれくらいで治るかわ解らないけど下手をしたら迷って出られなくなる可能性もある、私達はたまたま戻れたので良かったけどね。このまま無策で散策を続けるのは危険かもしれない。」


クラスの説明に頷くベルガル。

俺だけが気付いていなかったのか。


・ベルガル

「仲間の短所をお互いが補い合う。

PTとは良いものだな。」


ベルガルが意味深に呟いた。


・「クラスが居てくれてよかった。」


心底そう思う瞬間でした。


ダンジョン4日目、俺達は再び6層に足を踏み入れた。クラスが懸念していた木の傷はすっかり元に戻っていた。


・クラス

「想像以上に再生スピードが早い。」


・ベルガル

「うむ、これは厄介ですね。」


結構深刻な問題みたいだ。


・ベルガル

「どうする?ニュート。」


無策で進むのは危険だって言ってたな。


・「このまま進むのは危険だと思う、一度戻って情報を集めた方が良いかな?何かしらこの状況を覆すアイテムがあるかもしれないし、帰りの事を考えると正直食料も心もとない。」


俺は俺なりに状況を整理してみる。


・クラス

「冷静な判断だと思うわ。」


・ベルガル

「良い判断だ。」


2人の評価が上がったみたいだ。

無理に進む必要もないしね、『原初の果実』が取れなかったのは残念だけど。でも死んじゃったら意味が無いし、この場は命をかける程の状況でもないだろう。


・ベルガル

「では戻るとしよう、帰りは地図があるから比較的早く戻れるだろう。」


途中で一泊しながらダンジョンを出る事にした。

狙いの品は取れなかったがいい経験が出来たと思う、ベルガルとのPT連携も良い感じになって来たしね、収穫はあった筈だ。


こうして俺達のダンジョン攻略は終わった。


その筈だった、、、

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