第30話 各々の修行
ドンクさんから新しい武器を受け取った俺は、直ぐに師匠の屋敷に来ていた。師匠はまだ城に居るのだろう、屋敷に師匠の姿は無かった。
・「師匠が帰ってくる前に武器の性能テストでもしておこうかな。」
俺は『竜神の籠手』を見つめた。
まずは自分自身の強さを把握しないとね。
ステータス
レベル 49
筋力 501 +180 計681
知力 302 +100 計402
敏捷 542 +195 計737
特技
闘魔術(魔力量によって能力値が増加する)
体術78 補正LV15 筋30 敏45
鍛冶37 補正LV7 筋70
魔装54 補正LV10 知100
龍鱗の籠手 筋 +150 敏 +150
これが俺の現在の能力値だ。
きっとライ兄はもっと凄いのだろう。
俺は俺の出来る事をするしかない。
それが一番の近道だ。
・「まずはこの武器をモノにする。」
俺は武器の能力を再確認する。
確か特殊能力は
『特殊能力 魔石再生 切削 散布
物理・魔法防御コーティング仕様』
だったな、一つ一つ試してみよう。
まずは籠手に魔力を流す。
すると『ガーディアンの魔石』を嵌めてある部分が回転する、そして魔石の粉が量産されていき籠手の周りに展開されていく。
・「これが『切削』の能力なんだね。」
削られた筈の魔石が再生している。
これならいちいち魔石を取り出す手間が省ける、ライ兄は俺の魔石を使った必殺技の事まで考えてくれたんだね。
・「あとはサリーヌさんが教えてくれた『散布』の能力確認だ。」
俺はサリーヌさんに言われた通りに魔力で魔石の粉を操ってみる。手こずる所はここだろうと思っていたのだが、かなりスムーズに動かす事が出来た。
どの様な技術を用いればこんな事が出来るのか解らない、すぐそばで見ていたのに理解で居なかった。
やっぱり職人って凄いな。
・「後は無意識のレベルで『切削』と『散布』が出来る様になれば相当強いぞ、俺の戦術にピッタリの武器だ。」
実は『闘魔術』を使うと他の事が注意散漫になる傾向にある、それは師匠にも指摘されていた事だ。だけどこの武器なら魔石を取り出したり在庫の心配はいらなくなるし、魔石の粉の散布の為にその場に移動する手間が省ける。
今までは粉を巻くためにワザと吹っ飛ばされたりしてたからね、結構無駄な場所にまき散らしてた時もあったし、これはかなりの戦力アップと考えて良いんじゃないかな?
だって任意の場所に魔石の粉を移動させられるんだもん、慣れてこれば量の配分だって出来る様になるんじゃないかな?
・「これは思った以上に凄い武器かも。」
俺の鼓動はかなり早くなっている、『竜神の籠手』で俺の可能性が広がっていくのが感じられた。
・「早速練習だ!使いこなさないとね。」
俺は早速武器の特性を生かしながら特訓を開始した、少しずつでもいいから慣れていくんだ。
~数時間後~
・ナナ
「ニュート、こんな所に居たのか。」
呆れ顔の師匠が帰って来た。
・「あ、おかえりなさい。」
・ナナ
「おかえりなさいじゃ無いだろう、勲章の授与式に出ない奴なんて初めて見たぞ。」
そう言えばそうだった。
勲章の事をすっかり忘れていた。
・ナナ
「ほれ、これが勲章だ。」
師匠が勲章を俺に投げて渡す。
・「ありがとうございます。」
俺は勲章を受け取った。
案外軽いんだね。
・ナナ
「とりあえず説明しておく、その勲章があればある程度の事は融通が利くようになるぞ、例えば国管理のダンジョンでLV上げが出来たりする。その他にも色々と得点があるが、お前には必要のない事だろう。」
ダンジョンでのLV上げは嬉しいかも、そろそろLV限界突破アイテムが欲しい所だしね。
・「そろそろLVが50になります、限界突破のアイテムを取りに行きたいのですが何処が良いですかね?」
・ナナ
「『原初の果実』か?それなら家に一個あるぞ。私はもう使わないからお前にやるわ。」
マジでか?
師匠があっさりとくれました。
・ナナ
「そうだな、ただあげるのも面白くないな。どうせなら力ずくで取ってみるか?」
師匠が悪い笑顔になる。
こういう時はアレですね。
・「望むところです!」
いつもの模擬戦ですね。
丁度新しい武器にも慣れてきたころだし、実戦テストを兼ねて戦ってみようかな。
・「全力で行きますからね?」
・ナナ
「生意気な!」
こうして師匠との模擬戦が始まる、いつもは俺の惨敗で瀕死まで追い込まれるのだが、今回は違う!
・「行きます!『闘魔術全開』」
全魔力での闘魔術。
ベルガルのお陰で使えるようになった。
・ナナ
「良いね、流石は自慢の弟子だ。」
師匠は笑いながら『闘気術』を発動する。
俺は新しい武器の性能を確かめつつ戦う。
初見の師匠はとても楽しそうに対応していた。
~これまた数時間後~
・「ま、、、まいりました。」
ボロボロになった俺が居た。
今回もいつも通りの展開でした。
・ナナ
「新しい武器みたいだな、流石に最初は焦ったぞ?何処で手に入れたか知らないが良い武器じゃないか、大切に使えよ?」
スッキリ顔の師匠がそう答えた。
まるっきり歯が立たなかった。
・ナナ
「しかしアレだな『闘気術』を使ったアタシについてくるまで成長したのは喜ばしい限りだ、これなら文句なしで合格だろう。『原初の果実』は飯の時にでも渡してやる、しっかり精進しろよ。」
師匠は嬉しそうに屋敷に戻っていった。
俺は倒れた状態で空を見ていた。
・「師匠にはまだまだ届かない、ライ兄なら師匠とどうやって戦うのかな?どっちが強いんだろう。俺は幸せ者だ、目指すべき目標がこんなにも近くに沢山ある。一つずつクリアしてライ兄を追いかけるんだ。」
ニュートは拳を空に向けて誓う。
ボロボロにやられてはいたが、何故か清々しい気持ちになっていた。
それから数週間。
拳聖ナナとの模擬戦、更にはベルガルとの戦いを繰り返して過ごしていった。新しい武器も使えば使うほどに馴染んで行き、無意識のレベルで魔石の粉を展開させられるまでに上達していく。
数え切れない程の戦いを通して磨かれていくニュートの精神と肉体、拳聖と言う師匠とベルガルと言うライバルのお陰で日々成長を遂げた。
そして、、、
・「師匠、レベルが54になりました。」
2回目の限界が近づいて来た。
・ナナ
「そうか、んじゃ『原初の果実』を取りに行かなきゃいけないな。勲章があるんだから軍のダンジョンにでも行くか?」
・「そうですね、明日から向かってみます。」
俺は直ぐにでも行動に移した、早くLV限界を超えて師匠に追いつきたかったからだ。師匠はLV75らしい、どうやらそれ以上は『原初の果実』を使っても上がることは無かったと聞いた。
師匠のLVを知ったのはつい最近の事だ。
他にLV75なのはオーランドさん位だと言っていた、魔族や獣人は寿命が長いからそのLVの者は結構いたらしいが、人間族が追い込まれるのも頷けるよね。
昔の事はどうでもいい、まずは俺自身がそのLVまで這い上がらないとね。
・「今日は明日からのダンジョン攻略の為に色々と準備してきても良いでしょうか?」
・ナナ
「おう、そうしろ。
私は城での雑務を熟してくる。」
何だかんだでお城の仕事もこなす師匠、俺が師匠を超えるには時間が掛かりそうです。俺は師匠の言葉に甘える事にした、師匠に追いついて追い越す事が一番の恩返しだと思ったからだ。
俺はまず街に出て食料を調達する。
それからギルドに行って馬車の手配。
後はお城でダンジョン攻略の手続き。
それからクラスにも話しておかなきゃね。
最近は余り逢ってなかったな。
クラスはクラスで修行をしていたらしい、何でも将来に向けて必要な修行だって言ってたけど俺も教えて貰った方が良いのかな?ベルガルに聞いてみようかな。
・「クラスの家に行くのは久しぶりだ。」
俺はカーティス家の屋敷にやって来た。
相変わらず大きな屋敷だ。
そう言えば5貴族の候補になったと聞いた。
結構前に5貴族の一つが取り潰しになって一枠空いていたらしい、そこにカーティス家が入るかもしれないという事だ。ライバルが多くてすんなり行かないみたいだけど、上手くいくと良いな。
・ベルガル
「カーティス家へようこそ。」
気が付いたら目の前にベルガルが居た。
あれ?まだ呼びかけもしてないんだけど。
・ベルガル
「我がライバルの気配なら直ぐに解る。
良く来たな、クラス様がお待ちかねだ。」
今ではすっかり貴族の振る舞いが見についているベルガル、人間界のルールを意外とすんなり受け入れていた。俺と話す時はいつものベルガルなんだけどね。屋敷内や貴族の間ではその真面目な働きぶりとクラスに対する忠誠心、さらに容姿が良い為にかなりの人気者になっているらしい。
俺はベルガルに連れられて屋敷に入る。
ここに来るのも久しぶりだ。
・ベルガル
「ここでゆっくりしててくれ。」
ベルガルがクラスを呼びに向かった。
その間、俺は武器を眺めていた。
イメージトレーニングってやつだ。
どんな風に戦いうのかをイメージする。
これも大事な修行だと教わった。
暫くイメージトレーニングをしていると
・クラス
「お久しぶりね、ニュート。」
クラスが現れた。
・「クラス?」
久しぶりに現れたクラスはすごく綺麗だった。
見違えてしまうほどに。
・クラス
「どうかな?似合ってる?」
なんて声を掛けたらいいのかな?
・「凄く綺麗だよ、まるでセーラさんみたい。」
クラスのお母さんそっくりだと思った。
だからそのまま言葉にしてみた。
・クラス
「本当?嬉しい。」
嬉しそうに笑うクラスは本当に綺麗だ。
この短期間でこうも変わるものなのか?
・ベルガル
「流石クラス様ですね。
ニュートが鼻の下を伸ばしてますよ。」
何だかベルガルにバカにされた気がした、でも見惚れていたのは事実だから何も言えない。
・クラス
「ふふふ、何だか凄く嬉しい。」
優雅に笑うクラスは別人みたいだった。
・クラス
「それで、今日は何の用でしょう?」
フワフワ浮くような感じと言えば良いのかな?流れるような仕草で問い掛けてくるクラス。
・「明日からダンジョンに行くから挨拶しておこうと思ってね、数日間は篭って『原初の果実』を取ってこようと思ってるんだ。」
俺の言葉でクラスが変わる。
・クラス
「明日から行くの?」
優雅な振る舞いからいつものクラスになった、どちらかと言うとこっちのクラスの方が好きかな。
・ベルガル
「クラス様、振る舞いが元に戻ってますよ?」
・クラス
「あ、、、。」
どうやら修業とは振舞いの勉強とかだったみたいだね、5貴族に入るには必要な事なのかな?『貧民街』出身の俺には解らない事だらけだ。
・クラス
「ニュートの前だから良いの!」
・ベルガル
「まぁ、息抜きも必要ですかね。」
クラスの盾から世話係も熟すベルガル。
クラスの事なら何でもお見通しだ。
・ベルガル
「最近はずっと頑張ってましたからね、私からもセント様に伝えましょう。一緒に冒険しに行きたいのでしょう?」
・クラス
「流石ベルガル!わかってるぅ。」
少しクラスのキャラが変わってる気がする。
修行の反動なのかな?
俺としてはクラスが来てくれるのはありがたいけど良いのかな?セントさんが許してくれるとは思えないんだけど。
・クラス
「はぁ、久しぶりにニュートと冒険出来る。早く明日が来ないかな。」
すっかり行く気になってるクラス、これはセントさんの説得を頑張らなきゃだな。
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