第29話 新たな武器
ライ兄が去った後も俺達は暫く部屋で雑談をしていた、話の中でライ兄の事はセリスさん達に任せて欲しいと言う事になった。俺に出来る事はたかが知れている、セリスさんやミミさん、マルチさんに任せた方が良いだろう。
悔しいけど俺には何も出来ない。
・???
「貴方がニュート君ですね。」
突然後ろから声がした。
聞き覚えのない声だ。
俺は直ぐに振り向いた。
・ミズキ
「初めましてライオットの第一夫人ミズキでございます、貴方の事は主人よりよく聞かされております、なんでも優秀な冒険者の方だそうで。」
ライ兄の第一夫人さん?
と、、とりあえず挨拶しなきゃ。
・「えっと、ニュートです。
宜しくお願いします。」
咄嗟に出た言葉がそれだった。
ライ兄の第一夫人って聞いてビビっちゃった。
・クラス
「クラス・カーティスです。」
クラスもすかさず挨拶をする。
珍しく緊張しているのが見て分かった。
・ミズキ
「ニュート君の彼女様ですね。初めましてライオットの第一夫人ミズキでございます、以後お見知りおきを。」
流れるような挨拶をするミズキさん。
しかしその後ミズキさんとセリスさん、更にはマルチさんも参加してのバトルに発展した。どうやらライ兄の第一夫人の座を掛けて言い争っているらしい。
何故かそこにミミさんも参加していた。
ミミさんもライ兄のお嫁さんなのかな?
ライ兄は計り知れない人だ。
・ベルガル
「何とも退屈しない人物のようだな。
ライオット殿か、いつか戦ってみたい。」
・クラス
「ニュートの彼女!」
ベルガルとクラスはそれぞれ反応が違う。
クラスは両手を顔に当ててくねくねしていた。
大丈夫かな?
・「俺、ドンク師匠の所に行って来るよ。」
実はライ兄に貰った図面の事で頭がいっぱいだ。
早くどんなものか知りたくて仕方がない。
そんな言葉でクラスが我に返る。
・クラス
「ニュート、勲章の授与はどうするの?」
・「クラスが代わりの貰っておいてよ。
ライ兄の図面が気になって仕方がないんだ。
お願いしても良いかな?」
俺はクラスに正直な気持ちを伝えた。
ワクワクが止まらないんだ。
・クラス
「えっと、、、い、良いよ。
私が貰っておくね。」
クラスが快く了承してくれた。
ワクワクを抑えきれないんだ。
俺は全力で城から出て行った。
・ベルガル
「クラス様、宜しかったのですか?」
・クラス
「あんなに嬉しそうなニュートは本当に久しぶりです。ライオット先生の事になると周りの事なんて何も考えられなくなっちゃうの、少し妬けちゃうな。」
・セリス
「まあ、ライオットだから仕方ねえさ。」
いつの間にか言い争いを終えたセリスがクラスに話しかける、ミズキの姿は既に部屋になかった。
・マルチ
「ライオットには誰も勝てない。」
マルチも賛同してきた。
・ミミ
「アタシもそう思うよ!」
・クラス
「でもいつか、私に夢中にさせて見せます。」
クラスは固く決意するのだった。
・ベルガル
「ライオット殿は本当に魔王様みたいだな。」
ベルガルは遠くを見ながら呟いたのだった。
~オルドラギルド~
・「ドンクさん居ますか?」
ギルドに着くや否や受付のお姉さんに声を掛ける。
・受付嬢
「ドンクさんは今『貧民街』の方に行っています、何でも新しく武器屋が出来たとか。」
ドーンさんの所だな!
俺は受付のお姉さんにお礼を言って直ぐに『貧民街』にあるドーンさんの武器屋に向かう。
ライ兄は一体どんな物をくれたのかな?
武器の改造図面って言ってたよね。
それってこの『龍鱗の籠手』の改造図?
想像するだけで鼓動が早くなる。
楽しみで仕方がない。
俺は出来る限りの全速力で向かった。
~ドーンの武器屋~
・ドーン
「ドンクさんよ、やっぱり武器は能力だ。」
・ドンク
「いいか?販売するならコストが重要だ。」
二人の鍛冶職人が言い争っている。
一人は能力の高い高額な物を、一人は誰でも買える安くて量産できる物を作るという方針を掲げてバトルしている。
・ドーン
「やっぱ武器と言えば能力よ、この武器さえあればどんな局面も乗り越えられるって代物じゃなきゃ作る意味がねえ、それこそが男のロマンだ!」
・ドンク
「言いたい事は解るが夢ばかり見てちゃ商売は出来ねえぞ?大体高いもんってのは貴族が買って行くもんだ、金持ちのボンボンがその武器を使いきれると思うか?武器任せで自身の能力を伸ばす奴が居るとは思えねえ。それじゃあ折角の高性能武器も可哀そうだと思わねえか?」
どちらも引く気はないらしい。
お互いにお互いの主張が解る。
なのでどちらも強気には出られないのだ。
お陰でこの言い争いが決着する事は無かった。
そんな時、
・「ドンク師匠、居ますかぁ!」
店先から大きな声がした。
・ドーン
「なんだ?あの声はニュートか?」
ドーンが真っ先に声の主に気付く。
・ドンク
「あいつは城で勲章を授与されてる筈だぞ?」
ドンクはニュートが来るはずが無いと思っている、勲章とはそれ程に意味があるものだからだ。
・「ドンク師匠!やっと見付けました。」
息を切らしながら入ってきた人物。
それは紛れもなくニュートだった。
・ドンク
「おめぇ、勲章はどうした?」
・「そんな事よりもこれも見て下さい!」
・ドンク
「勲章をそんな事って、一体何なんだ?」
ドーンとドンクが何やら図面を眺めた、暫く眺めているとこの図面の異常性が理解できる。
・ドンク
「おいおい、これどうしたよ?」
・ドーン
「こんな改造、出来るのか?」
・「ライ兄から預かってきました。
ドンク師匠なら理解出来るって。」
ドンクはその言葉で火が付いた。
最近の非常識はいつもライオットから生まれいる、お陰で驚かされてばかりなのだ。
・ドンク
「くっくっく、ライオットの奴め。」
ドンクは笑いが止まらない。
・ドンク
「ドーン、手を貸しやがれ。ライオットに負けちゃいられねぇ、このとんでも改造を上回る武器を作ってやろうじゃねぇか!」
ドンクは決意した。
図面以上の性能を引き出す事を。
その為には他者の協力が必要だ。
・ドーン
「任せろ!」
二人は工房の中に入っていく。
俺も一緒に着いて行った。
・ドンク
「ニュートお前の武器をそこに置け、後はライオットが預けた魔石とやらもだ。それと悪いがサリーヌを呼んできてくれ。」
俺は言われるがままにギルドに向かう。
あんなにやる気になった師匠は初めてだ。
俺までドキドキしてきた。
一体どんな風に改造するんだろう。
ギルドでサリーヌさんを見つけた。
説明する時間が勿体無いと感じた俺はサリーヌさんを担いで『空走』を使った、流石にこれにはサリーヌさんがビビっていた。
でもそのお陰で直ぐに『貧民街』に到着する。
・サリーヌ
「ニュートちゃん、あんたライオットちゃんに似て来たわね?全く、二人してアタシをビックリさせるんだから。」
相変わらずのくねくねサリーヌさん。
久しぶりに見たけどやっぱりキツイ。
苦笑いしか出来なかった。
・ドンク
「おう、早かったなニュート。」
・サリーヌ
「一体何なのよ、これからお花を見に行こうと思ってたのに。しょうもない用事だったら只じゃ済まないわよ?」
サリーヌさんが脅してくる。
しかしドンクさんは自信満々でこう述べた。
・ドンク
「それを読んでみな。」
サリーヌさんはライ兄から預かった図面を見る、そして音読し始めた。
・サリーヌ
「えっと何々?『お久しぶりですドンクさん、今回はニュートの武器を改造できる図面を書いてみました。ニュートの戦い方と必殺技に合わせた改造なので少し複雑になりますがドンクさんなら作れると信じています。と言うか、ドンクさんなら作れますよね?何たって俺の師匠なんだからこれくらい作って貰わないとね! あなたの弟子ライオットより』。」
サリーヌさんがフリーズする。
・ドンク
「どうだ生意気だろう?こんなやり方で俺に挑戦してきやがった。これは負けるわけにはいかねぇだろ。」
何故か凄く嬉しそうなドンクさん。
・サリーヌ
「ふっふっふ、ひよっ子が生意気言いやがって!良いだろう、こんな図面の武器よりももっと良い武器を造り上げてやる。みてろよ小僧が!」
サリーヌさんがおっさんになった。
これはこれでちょっと怖い。
・サリーヌ
「おらぁニュート、さっさとこっちに来い。」
チョットじゃなくてめちゃめちゃ怖いです。
・ドーン
「では私はこれで。」
ヤル気になっていた筈のドーンさんがサリーヌさんの迫力に負けて逃げ出そうとしている。
・サリーヌ
「おいこら店の主人、何処に行く?
お前も来るんだよ。」
逃げようとしたドーンさんも捕まってしまった。
・サリーヌ
「こんなに胸が熱くなったのはいつ以来だ?
ライオット、中々やるじゃねぇか。
たまげる位の武器を作ってやるぜ!」
・ドンク
「久しぶりに腕が鳴るぜ。
全力で行くぞ、ドサリガンド!」
・サリーヌ
「おう!やったるぞ。」
こうしてギルドの仕事そっちのけで俺の武器改造が始まる、作業は殆ど寝ずに続けられた。俺も一緒に武器の改造に携われたのは幸せな事だ、知らない知識がドンドン入って来た。
と言うかドサリガンドって呼ばれたのにサリーヌさんが怒らない、そんな光景も初めて見たよ。
~3日後~
遂に武器が完成した。
その名も『竜神の籠手』
武器補正値 筋150 敏150
特殊能力 魔石再生 切削 散布
物理・魔法防御コーティング仕様
『ガーディアンの魔石』で『魔石再生』、それにドンクさんとドーンさんが『切削』の技術を埋め込み、サリーヌさんの風属性で『散布』の能力を内蔵させた。さらに魔石の粉を武器にコーティングする事によって防御幕を自動展開させるという凄い技術まで織り込んだ至高の一品となった。
・ドンク
「どうだ、神器を超えてやったぜ。」
ゲッソリしたドンクさんが居放つ。
ドーンさんは既に床に倒れている。
・サリーヌ
「こんなすげぇもん二度と作れないな。」
珍しく弱気のサリーヌさん。
・ドンク
「ほれ、ニュート。」
ドンクさんが籠手を俺に投げ渡してきた。
・ドンク
「ライオットからの贈り物だ、それに俺達の技術のすべてをぶち込んだ。後はお前が使いこなせるかどうかだ。」
俺は籠手を見つめる。
俺の大切な人達の想いが詰まった武器だ。
・「必ず使いこなして見せます。」
俺は籠手を装着して掲げてみた。
今まで以上にしっくりくる感覚だった。
・サリーヌ
「貴方なら大丈夫、自分を信じなさい。」
サリーヌさんの言葉が妙に頭に残っていた。
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