第23話 南海門の攻防

~魔物襲撃当日~


俺達は今『南海門』に来ている。

門兵が3人だけ残っていた。

無人にするわけにもいかないよね。

色々聞かれたが適当に答えておく。

此処の門から少し離れておこう。


・キロス

「ニュー兄、どの辺で陣を構える?」


・「そうだな、何処から攻めてくるのかな?

とりあえず少し高い所を探してみるか。」


どこかいい場所が無いか探そうとした。

その時、聞き覚えのある声がする。


・グラン

「やぁ、待ってたよ。」


グランが現れた。


・「グラン、こんにちわ。」


・クラス

「初めましてクラスと申します。」


・キロス

「あんたがグランか?

ニュー兄から聞いてるよ。

僕はキロス、よろしくね。」


しっかりと挨拶をする3人。

グランは少し驚いている。


・グラン

「よかった、みんな僕の事を信じてくれたんだね。ニュート君に感謝しなきゃ。」


笑顔で答えるグラン。

こうしてみるとグランは可愛い男の子だ。


・グラン

「魔物の襲撃は夜になると思う。

一応、キロス君の為に高台を作っておいたよ。

簡易的なもので申し訳ないけどね。

魔物の軍勢は高台の正面からやってくる。

君と杖の魔法で対応して欲しい。」


やはりアストの事を知っている。

後はアストに魔王なのか聞きたい所だ。

キロスとクラスが居る手前、聞けないか。


・アスト

「やっぱグランツじゃん。

何その恰好?ウケるんだけど。

アンタがあたしを復活させたの?」


アストが話しかける。

俺はビクビクしながら聞いていた。


・グラン

「おお?グランツ?知らないな。

杖がしゃべるなんて驚きだ。」


芝居が下手なグラン。

意外な弱点を見つけた、、、


・グラン

「とりあえず高台に移動しない?

キロス君、その杖を貸して貰っても良い?」


キロスは俺に指示を仰ぐ。

俺は頷いて答えた。

杖を貸して良いか迷っていたのだろう。


4人は一緒に話しながら歩いている。

暫く歩いていると高台らしきものがある。

そこは小さな丘になってて見晴らしが良い。

簡易的と言っていたがなかなか立派な物だ。

道中、隙を見てアストと話していたグラン。

少し2人で話したいかな?


・「キロス、クラス、ちょっと良いかな?

グランはここで待ってて。」


夜までまだ時間はある。

積もる話もあるだろう。

暫くアストと2人きりにしておこう。

俺達は先に高台に移動した。


高台を調べてみる。

うん、素晴らしい出来だ。

素材は見たことがないものだな。

まだ俺の知らない加工材料なのかな?

色々と質問したい、、、

でもまだ話しているみたいだし。

仕方ないので3人で作戦会議しておこう。


数時間後、、、


グランはやっと戻って来た。

気のせいかな?ちょっとやつれた感じ。

キロスに杖を返して俺の所に来る。


・グラン

「さっきは気を使ってくれてありがとう。

魔物と闘う前にかなり疲弊したけどね。」


やっぱりいろいろ言われたんですね。

アストって怖そうだもん。


・グラン

「でも、久しぶりに仲間と話せた。

感謝しているよ、ニュート君。」


・「ニュートで良いですよ。」


この人は信用してもいいだろう。

魔族とか関係ない。

そんな気にさせてくれる。


・「俺の事も仲間と思ってくれると幸いです。」


グランは驚く、そして笑顔になる。


・グラン

「君はアストから聞いたらしいね。

元魔王グランツだ、今はグランと名乗ってる。

だからグランと呼んでくれ。

今は子供の姿だし、普通に話して欲しい。

魔族と知りながら仲間と呼んでくれた事。

凄く嬉しいよ。」


俺は改めてグランと握手した。

頼もしい仲間が出来た。


・グラン

「そろそろ日が傾いて来たね。

数時間後には魔物がやってくるはずだ。

覚悟はできてるかな?」


・「冒険者だからね、覚悟は既に出来てる。」


・グラン

「そうか、ニュートは立派な冒険者なんだね。」


キロスとクラスがやって来た。

俺はグランの事を仲間だと改めて紹介する。


・クラス

「まぁ、なら私とも仲間という事ですね。」


・キロス

「そっか、んじゃ改めて宜しく。」


快く迎え入れる2人。

グランは少し照れている様子だ。


・グラン

「まさかこんな展開になるとはね。

僕も俄然やる気が出て来たよ。」


グランは最初、情報だけを伝える気でいた。

しかしニュートに出会い気が変わった。

ライオットに焚きつけられてやる気になった。

そして今、仲間の為に戦おうと決意した。


・グラン

「そろそろ僕の持ち場に戻るよ。

キロス、クラス、ニュート。

絶対に死ぬんじゃないぞ?」


そう言い残してグランは消えた。


・キロス

「目の前で消えちゃった。

グランって凄いんだね。」


・クラス

「そうね、でも今は切り替えなくっちゃ。

私達は私達の出来る事をしましょう。」


クラスの言うとおりだ。

グランのお陰で敵の動きは把握した。

あとは実行するのみ。


もうじき『南海門防衛戦』が始まる。


*ニュート ステータス*

レベル 48

筋力 441 +146

知力 281 +80

敏捷性 498 +114


特技

闘魔術(魔力量によって能力値が増加する)


体術67 補正LV13 筋26 敏39

鍛冶37 補正LV7 筋70

魔装術43 補正LV8 知80

龍鱗の籠手 筋 +50 敏 +75



~南海門防衛線~


遂に日が暮れた。

キロスは高台で待機中。

俺とクラスは高台の下で待機している。


・クラス

「こんなこと言っちゃダメなんだろうけど。

少し怖いよ。」


クラスが本音をこぼす。

当然だろう、3人しかいないんだ。


・「クラスは俺が必ず守る。」


俺はそう言って手を握る。

魔物の軍勢と聞いているだけだ。

想像しか出来ない今、正直俺も怖い。


静かな夜だった、、、

とても静かな、、、


突然、夜空に光が見えた。

『国土門』の方角だ。


・キロス

「ニュー兄、国土門方面で魔法が見えた。」


キロスからの報告。

遂に始まったらしい。


・「気を引き締めろ、始まるぞ。」


クラスはニュートの手をに強く握る。

俺は気配を探る。

近場には魔物はいない。


・キロス

「来た、真っ直ぐにこっちにやてくるよ。

すげぇ数だ、、、」


俺にも見えるよ、凄まじい数だ。

200?いや300?

もっと多く見える。

クラスはニュートにしがみ付く。


・キロス

「どうすればいい?もう撃つ?」


キロスは若干混乱気味だ。

こんな軍勢、初めて見る。

どうする、、、


・アスト

「まったく、おこちゃま達は頼りないわね。

指揮してあげるからありがたく思いなさい。」


緊迫した空気をアストが斬り裂く。

知らない内に弱気になっていた様だ。


・アスト

「キロスは魔力を練って待機。

広範囲で放つ、3発で壊滅させるわよ。

クラスは取りこぼした魔物を遠距離攻撃。

クラスはこっちに来て。」


アストがテキパキと指示を飛ばす。

こういう場に慣れているのだろうか?


・アスト

「良い?対軍勢で大事なのはタイミング。

合図を出すからそれまで我慢よ。

キロスには攻撃位置の指示を出す。

クラスは臨機応変に攻撃して。

ニュートは待機、解った?」


・キロス

「はい」


・クラス

「はい」


・ニュート

「了解!」


緊張が高まる。

魔物の軍勢が目に見えて大きくなってくる。


・アスト

「怖いでしょうけど耐えなさい。

最初の攻撃が肝心よ。」


アストが俺達の状態を見て声を掛ける。

そういえば昔、ドーンさんが話してたな。


『大人数の戦いではビビった方が負けだ、負ける方はビビった誰かがさっさと攻撃を仕掛けちまう。そうなったら作戦もクソもねぇ、ドロドロの接近戦になっちまう。』


小さい頃は早く攻撃した方が有利と思ってたんだけど、今ならわかる。一撃でより多くの敵を倒した方が良い。


・「キロス、自分を信じろ。

俺もクラスも居るんだ。

安心して自分の役割を果たせ。」


・アスト

「ちょっと、あたしも居るんだけど!」


アストのお陰で場が和む。

やっぱり頼りになるなぁ~。


魔物の軍勢はかなり近づいて来た。

早く攻撃したい気持ちが痛い程よく解る。


・アスト

「もう少し我慢よ。」


心臓が張り裂けそうだ。

信じられない程、脈打つのが解る。


・アスト

「よく耐えたわね、準備は良い?」


・キロス

「はい。」


・アスト

「狙うのはあそこ、放ちなさい。」


アストの号令でキロスが牙をむく。


・キロス

「行くぞ、『アストラル・フレア』」


キロスの魔力が一気に高まった。


シュン、、、


小さな魔力の塊が飛んでいく。

魔物の軍勢の先頭から少し後ろ。

その場所に到着した瞬間、、、

魔力がはじけ飛ぶ。


ドゴーーン


一瞬で広がる爆炎。

信じられない大爆発が発生する。


・アスト

「キロス、次はあそこを狙って。」


・キロス

「解った!『アストラル・フレア』」


再び放たれるキロスの魔法。

2度目の大爆発で魔物たちが消滅していく。


・アスト

「散開なんてさせないわ。

最後はあそこよ!」


・キロス

「食らえ『アストラル・フレア』」


3連続で放たれる大魔法。

普通の人なら1発も放てない程の魔力。

キロスは見事に放って見せた。


・アスト

「よくやったわ、キロス。

あなたは休みなさい。

撃ち漏らしが見えたらクラスが撃つのよ」


・クラス

「解った!」


キロスの魔法で目の前は大惨事だ。

地形が変わってしまった。

爆炎の中から数体の魔物が飛び出てくる。


・クラス

「『魔弾・流星』!」


その瞬間を狙ってクラスの魔法が放たれる。

一撃で魔物を葬り去る。


・アスト

「へぇ~、クラスもやるじゃん。

その調子で続けて。」


クラスの魔法が無数に飛び交う。

あれ程いた魔物の軍勢が消滅して行く。


・キロス

「はぁはぁはぁ、、、姉ちゃん頑張れ。」


魔力枯渇寸前のキロス。

それでも意識は保っている。

戦いを見届けるつもりだ。


・アスト

「お出ましの様ね、ニュート出番よ。

魔物の最後尾にいる羽が生えてる奴。

あいつを倒して。」


アストの指示に従い飛び出す。

道すがらの魔物は一撃で粉砕して進む。

もう残りはわずかだ。

だが気を緩めるな。

さっきアストの緊張が伝わって来た。

それ程の敵なのだろう。

俺は羽付きの魔物に向かっていった。


・???

「やってくれたな、人間。」


俺は目視で捉えていた。

魔物が何かしゃべった?

そう思った瞬間。


・「消えた?いや、こっちだ!」


少し離れた位置で消えた羽の魔物。

いきなり背後に現れる。

だが俺もそれに反応。

カウンターで攻撃を試みた。


ドス


捉えた、、、いや、浅いか?

羽の魔物はガードしていた。

そして距離を取る。


俺の後ろから他の魔物が襲ってきた。

迎撃しようと反転した瞬間。


ドシュ


羽の魔物から繰り出された攻撃で息絶えた。

俺を守った?


・???

「正直驚いた、あの攻撃を防ぐどころかこちらに攻撃してくるとはな。

久しぶりに生きのいい敵に逢えた。

こいつは俺の獲物だ。」


魔物がしゃべった、、、?


・???

「見た目はこんなんだが、魔貴族ってのを名乗ってる。魔物なんぞと一緒にするなよ?」


魔貴族?聞いた事ないぞ。


・ベルガル・ゾート

「ベルガル・ゾートだ。

貴様の名は?何者だ?」


・「ニュート、、、、冒険者だ。」


なんだ、、、何なんだ?

尋常じゃない存在感。

目の前に立っているだけで倒されそうだ。

重い、、、逃げ出したい。


・ベルガル

「俺の殺気に耐えるか。

いいぞ、なかなか見所のある小僧だ。」


俺の周りは魔物に囲まれている。

だが少しづつ狙いをクラスに移していく。

恐らくクラスなら対応できるだろう。

でも出来るだけ倒さなきゃ、、、


・「くそ、、、、」


だが動けない。

こいつから視線を外せない。

気を抜けば殺される。

何とかしなきゃ、、、


・ベルガル

「注意散漫だ、仲間が気になるようだな。

それではつまらん。

折角良い獲物を見つけたのだ。

俺に集中出来るようにしてやろう。」


そう言い残しベルガルは消える。

そしてあろうことか魔物を倒し始めた。

唖然とする俺、クラスの魔法も止まった。


そして数分と経たずして魔物が全滅した。

ベルガルだけを残して。

俺の前にベルガルが戻って来た。


・ベルガル

「どうした?まだ何か考えてるな。

貴様の仲間を殺せば良いのか?

そうすれば俺とお前だけになる。」


またベルガルが消える。

仲間を殺すだと?

クラスを?キロスを?

ふざけるな!


『闘魔術』


俺はベルガルに向かって飛ぶ。

ベルガルがクラス達に迫る。


・「やらせるかぁぁぁ」


クラスに攻撃を仕掛ける前にベルガルを吹き飛ばしてやった、間に合った。


・「クラス、キロスを連れて逃げろ。

こいつはヤバすぎる。」


俺が指示を出すがクラスは動けない。

あいつの殺気にやられたか?

そうこうしてる間にベルガルが立ち上がる。


・ベルガル

「驚いたぞ、なかなか良い攻撃だ。

仲間がいた方が力が出せる様だな。

では、こうしよう。

貴様を殺した後に、仲間を殺してやる。

必死に抗ってみろ。」


ベルガルは楽しそうに提案する。

冗談じゃない。

むざむざ殺されてたまるか!

俺は覚悟を決める。

全力でこいつを倒す!

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