第22話 防衛に向けて
カーティス家の説得から一日が経過した。
今日はギルドに説明に行こうと考えていた。
しかし、ナナ師匠の勧めで今日からPTでの戦闘を繰り返すように言われた。
襲撃までにLVとPT連携度を上げる為だ。
各所の説得はリムさんが色々と調整中だ。
ギルドの説得はロイヤル様が動くらしい。
クリスマス大作戦でギルドとの親交も深まり、連携が取りやすいからとリムさんが言っていた。
と言う訳で、今朝早くからクラスとキロスを連れてダンジョンに向かっていた。
鉄小僧が出るダンジョンだ。
セントさんが管理を任されているので国の許可が取りやすく、近場にあり鉄鉱の採取で国軍用の武器調達も出来る。
まさに一石三鳥なのだ。
・クラス
「ふふふ、今日からずっと一緒だね。」
・キロス
「学園の休暇許可も取れたし。
思いっきりLVあげするぞ!」
朝から上機嫌のクラス。
キロスも嬉しそうだった。
今回の移動は馬車を使っていない。
二人ともかなりの速度で走りながら話している
馬車より速く走れるようになったのだ。
・キロス
「鉄小僧か、銅小僧の上位種だったね。
銅小僧と聞くと懐かしいな。
銅鉱採取依頼のお陰でニュー兄と出会えたし。
あの時は怖かったけど、今は感謝しかないや。」
懐かしいなぁ~。
・「あの時のキロスはカッコよかった。
必死にクラスを守ってたし。
ギルドまで全力で走ってくれたお陰で俺も今生きてるしね。」
・クラス
「運命の出会いです。」
走りながらもモジモジするクラス。
器用な走りをするね、、、
現場に着くまで走りながら昔の話をしていた。
~屯所「ウルフゲート」~
・ドンク
「おう、ニュートまた来たか。
今日はどうしたんだ?」
ここにはまだ情報が届いていないらしい。
軽く教えておこうかな。
・ドンク
「聞いてくれよニュート。
クリスマス大作戦とか提案したライオットのせいであっちこっち走りまくりだぜ?
こことギルドを何往復もする俺の身にもなってほしいもんだ。まぁ、お陰で新しい技術も教わったから文句はないけどよ。」
俺が話す前に師匠の愚痴が炸裂する。
ここと国を何往復もか、、、大変そうだ。
・「こんにちは、ドンク師匠。
もうすぐ国で大きな戦いがあります。
多分ですが、急ぎ鉄製品の武器防具を作成してほしいと依頼が来ると思います。」
・ドンク
「おお?マジか?
遂に戦争が始まったのか?」
・「いえ、魔物の襲撃が4日後に起こります。」
・ドンク
「いつ来るか解ってる襲撃?
どんな襲撃だよ、聞いた事もねぇ。」
グランさんの事を説明した方が良いかな?
ドンク師匠ならライ兄の名前の方が良いか。
・「ライ兄が情報源です。」
・ドンク
「あいつは予言も出来るのか?
相変わらず規格外だな。
よし解った、今日から制作に移ろう。
魔具の作成は一時中断だな。」
ライ兄の凄さが解る。
直ぐに話が進んで行くんだもん。
でも、それよりも気になる単語が、、、
魔具?なんですかそれ?
うわ~めちゃめちゃ気になる。
・ドンク
「魔具が気になるって顔してるな。
今度教えてやるよ。
ニュートなら大丈夫だろう。
ライオットに逢ったら許可申請しておく。」
新しい事は大抵ライ兄が関わって来るよな。
ここぞって時にはライ兄の名前で何とかなっちゃうし、本当にすごい人だなぁ。
・キロス
「ニュー兄、まだぁ~?」
キロスがしびれを切らしていた。
ドンク師匠と話すと時間を忘れてしまう。
・ドンク
「積もる話はまた今度だな。
ダンジョンに潜るんだろ?
悪いがまた鉄鉱を取って来てくれ。
今、空きのアイテム鞄が5つある。
3つほど持って行ってくれるか?
入りきらない鉄鉱はお前の練習として加工しておけ。
おっと、ダンジョン攻略はしないでくれよ?
一定期間ダンジョンが停止しちまうからよ。
鉄鉱が取れなくなっちまうと困る。
普通ならしない心配だろうが、お前が絡むと何かやっちまうそうでな。」
笑いながら話している。
ダンジョン攻略の話が出るなんて思わなかった。
まぁ、冗談なのだろうけど。
・「解りました。
ありがとうございます。」
俺はアイテム鞄を受け取る。
そして3人はダンジョンに向かう。
・「今回は出来るだけLVを上げる。
後は鉄鉱の採取も追加で行うね。
3日間で各々の目標を立てて欲しい。」
俺は具体的な目標を掲げさせた。
ナナ師匠の提案で、ただ敵を倒すんじゃなくて何かしらの目的をもって戦った方が効率がいいと教えられたからだ。
・キロス
「目標かぁ~、急に言われてもなぁ。」
まぁ、そうなるよね。
・アスト
「んじゃアタシが出すわ。
小規模の爆発で済む高威力の魔法を使えるようになりなさい。やり方は教えてあげるから。」
・キロス
「小規模で高威力?
何か矛盾してない?」
・アスト
「だから面白いんじゃない。
それともキロス坊ちゃんはやる前から出来ないって投げ出すのかしら?」
・キロス
「むむむ、言ったなアスト。
やってやろうじゃないか!」
アストのお陰でキロスの目標は出来た。
クラスはどうするかな?
・クラス
「私はずっと考えている事があるの。
それを実現できるように努めてみる。
後で相談に乗ってくれる?」
クラスも大丈夫そうだ。
俺は既に目標の設定は終わっている。
と言うか師匠に課題を出されたんだ。
・ナナ(今朝の一場面)
「お前、ミミちゃんと闘ったとき8割ほどの魔力しか纏えてないだろう?全力の『闘魔術』だと他の魔法が使えないって所か。
だったら次の目標は解るよな?」
俺の目標、、、常に全力で『闘魔術』を使う。
その状態で『魔弾』『魔装術』を使用する。
この2点を習得する事だ。
・「じゃあ進もう。」
3人はダンジョンに入っていく。
ここから3日間、ずっと戦い続ける事となる。
それぞれの目標を掲げながら。
ステータス
レベル 42
筋力 389 +72
知力 221 +60
敏捷性 431 +108
特技
闘魔術
体術LV59 補正LV11 筋力22 敏捷性 33
鍛冶LV25 補正LV5 補正値 筋力50
魔装術LV34 補正LV6 知力 60
龍鱗の籠手 筋力 +50 敏捷性 +75
~オルドラ王国~
現在、国の重要人物がすべて集まっている。
更に防衛に参加する各ギルドの長達も。
大きな決断をする時だけ集まる顔ぶれだ。
そんな緊迫した空気の中、隠密部隊長ミズキが国王と向き合っている。
殆どの重鎮は知らない。
ミズキが既に隠密部隊を引退している事を。
それでも国王はミズキを信頼している。
その為、これ程重要な場面ですら信用される人物となっているのだ。
・国王
「ふむ、事情は理解した。
先日受けた拳聖ナナの情報と同じだな。」
決戦2日前、ミズキから報告を受ける。
信じがたい事だが無下にする事も出来ない。
敵の襲撃は想定しておかねばならない
ナナの言う通り防衛線は張るべきだ。
国民の安全のために。
・国王
「本日より各箇所に防衛網を展開させる。
『国羅門』は剣聖オーランドの部隊。
『白堊門』は拳聖ナナの部隊。
『国土門』は残りの部隊を展開。
各ギルドと協力して死守せよ。
『南海門』に関しては信頼のおける数人の冒険者に任せる事にする。」
・司令官・バルドロスト
「ご命令とあれば従うまで。
しかし、『南海門』の防衛だけ手薄なのは何かしらの策があるのでしょうか?」
当然の質問をする。
やはりそこがネックとなる様だ。
・ナナ
「『南海門』にはアタシの弟子が付く。
数人で十分だと言ってるんだ。」
この辺の駆け引きは苦手なナナ。
・バルドロスト
「自慢の弟子なのは理解した。
だがそれとこれとは別の話だ。
門が突破されれば国民が危ないのだ。
『南海門』の防衛力強化を進言したい。」
・国王
「ならん、防衛の配置は変更しない。」
・バルドロスト
「納得出来ませぬ。」
硬直状態のまま話が進まない。
・王国騎士団団長・ライル
「『国土門』の防衛はかなりの人数が居る。
少し『南海門』に回しても宜しいのでは?」
やはり大半の人が『南海門』防衛に不安を残している様子だ。
・剣聖オーランド
「ナナよ、何故少人数の冒険者にこだわる?
それにセント、息子と娘が参加するのだろう?参加すること自体驚いたが、心配ではないのか?」
・セント
「今回の作戦では例の冒険者も動く。
大規模な魔法を展開する予定だ。
味方が巻き込まれる可能性が高いと踏んだ。
少数人数で動いた方がやりやすいのだろう。」
・バルドロスト
「ならば一部隊だけでも送っておいた方が良いのではないか?」
・セント
「気の知れた冒険者だけの方が良いのだろう。
軍の者だと上からの命令で動く。
連携が取りにくくなってしまう。
失敗は許されないからこそ冒険者同士で構成されているのではないか?オーク殲滅戦で冒険者の戦いは理解しただろう?
一瞬の迷いが命取りだ。」
・バルドロスト
「氷鬼姫セリスの大魔法か、、、
確かにあれ程の魔法を放つのであれば少ない方が良い。だが、セリスはギルド長を降りたのだろう?」
・サリス
「はい、妹はギルド長を辞めました。
しかし作戦には冒険者として参加します。
『南海門』防衛は冒険者のみでお願いします。」
サリスはライオットとセリス、更にマルチが不参加なのは知っている。前日にミズキから聞いたからだ。
そして防衛配置の内容も知っている。
グランと直接会っているから。
サリスはグランの作戦に協力する事にした。
グランの作戦を指示する側に援護射撃をする。
少数で防衛すると言う事になれば必ず反対意見が出る。そこでライオットとセリスの名を借りる事にした。
氷鬼姫の異名を持つセリス。
更に今話題の冒険者ライオット。
この二人が揃っていれば何とかなる。
・バルドロスト
「そうか、セリスが出るのならば大丈夫か。」
・ロイヤル
「ライオット君も出るからな。
『南海門』防衛が一番安定するかもしれん。」
・五貴族の一角・バーバラ・カインズ
「失言はお控えになってください、お爺様。
私は彼を知りません。
彼はそれほどの人物なのでしょうか?」
・オーランド
「ライオット君か、確かに不思議な人物だ。」
・ライル
「あいつね、まぁ任せても良いんじゃない?
あのハリスが認めた奴だしな。」
・サリス
「あの人なら何かしらやってくれそうだし。」
サリスはライオットが参加しない事を知っている。しかし何かしらの手を打っているのだと確信していた。
彼が居なくてもあの方が居る。
あの方さえ動いてくれれば何とかなる。
ライオットならグランを動かしてくれる。
そう考えていた。
・国王
「ライオット君が居るから大丈夫だ。
私も信頼している。」
・バーバラ
「そこまでの人物とは、、、
一度会ってみたいものです。」
今年で26歳になるバーバラ・カインズ。
この若き天才は今まで孤独だった。
人は彼女の才能に恐れを抱いてしまう。
余りの規格外の存在。
お陰で友達はいない。
建前だらけの貴族が言い寄って来るだけ。
そんな中、祖父ロイヤルにライオットと言う人物を夫にと、やたらと進められている。
今までそんな事は無かったのに。
五貴族と冒険者。
血筋を大切にする貴族にとって、身分的には考えられない組み合わせだ。
五貴族として一生独り身で行く覚悟だった。
ロイヤルも致し方ないと諦めていた筈だ。
それなのに猛プッシュしてくる。
彼女の気持ちは少しだけ揺れていた。
彼女は今まで恋愛をした事が無い。
興味はあったが既に諦めた事だ。
諦めていた小さな夢が今、動き始めた。
名の知れた大物達が認める人物。
偉大なる祖父が進める人物。
国王ですら一目置く存在。
興味が出て当然なのだろう。
・バーバラ
「冒険者ライオット、、、
今度会いに行こう。」
この時バーバラは決心した。
・国王
「ライオット君の話が出ると良い意味でも悪い意味でも話が脱線するな。」
笑いながら話す国王。
ピリピリしていた空気が和やかになる。
・バルドロスト
「あの時セリスにくっついていた小僧か。
成長したものだ。」
堅物で知られるバルドロストも笑顔になる。
そんな光景を目の当たりにして驚く参加者。
結局、バルドロストの笑顔が決定打となりナナの防衛案が通る事になった。
『南海門』は数名の冒険者のみ。
無謀と思われる作戦が始まろうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます