第6話 ライオット

・「すっげぇ。

こんな所で戦うのか、、、」


・セント

「ニュート君、あそこの席だ。

ギルドの皆さんも一緒に観られるようにしておいたからな。」


・「ありがとうございます。

まだ、誰も来てないや、、、」


・キロス

「ニュート兄ちゃん、行こうぜ。

俺も、こんな所で戦ってみたいな。」


キロスに急かされ席に移動する。


・クラス

「お父様、、、

私、ニュート様の隣が良いのですが。」


・セント

「ニュート君に色々と聴きたいからな。

すまないが隣は譲って欲しい。」


・クラス

「むぅ、、、、し、仕方ないです、、。」


・キロス

「ねぇちゃん、俺が変わってやるよ」


・セント

「なっ、、、

キロスはニュート君と見たいんだろ?

無理しなくて良いんだぞ。」


・キロス

「大丈夫だ!

俺よりも、ねぇちゃんの方が兄ちゃんと一緒に観たいだろうし。

昨日の夜からすっげぇ楽しみにしてたの、俺知ってるんだ。

母さんからも宜しく言われてるしな」


・セント

「ぐぬぬぬ、セーラめ

余計な事を、、。」


・クラス

「お母様、、、、ありがとう」


キロスとクラスがいそいそと場所を変わる。

ニュートの隣に来たクラスはニコニコだ。

その反対でセントがプルプルしている。


・セント

「わ、私はまだ認めていないからな。

クラスは、、、クラスは、、

お父さんと結婚するって言ってたんだから、、、」


隣でぶつぶつ呟くセント。

しかし、ニュートはサッパリ聞いていなかった。

ライオットの事ばかり考えてうわの空だ。


・クラス

「、、、、ト様、、、ニュート様?

ニュート様、大丈夫ですか?」


・「えっ?あ、ごめん。

考え事していた。

何だった?」


・クラス

「ニュート様はライオット様と、どの様な出会い方をなされたんですか?」


・「あぁ、、俺がまだ貧民街にいた頃に出会ったんだよ。

たまたまリトルボアが空から降って来て、喜んでたらさ、実はライ兄が崖から落として倒してた所だったんだ。

久しぶりに栄養のある食事を母さんと妹に食べさせてあげれると思ったんだけど諦めた。

そしたらさ、ライ兄は半分の肉と魔法石をくれたんだ。

いつか自分が困った時に助けてくれればそれで良いって言ってさ。

お陰で栄養のある飯を家族に食べさせれた。

それから、魔法石と残った肉を売ったお金で、妹は学舎に行かせることができたし、母さんの病気も治せれた。

ライ兄には感謝しかない。

俺もあんな冒険者になりたいんだ。」


・クラス

「素敵な方なんですね。」


・セント

「そうか、君は貧民街の住人だったか、、、。

私は出身など気にしないが、、、

君達さえ良ければ、君の家族を我が一族に招き入れても良いぞ?

領地に新しい家を贈呈する。

妹さんには国立の学舎も紹介しよう。

ニュート君はクラスとキロスを助けるだけでなく、キロスを大きく成長させてくれたからな。

これくらいはさせて欲しい。

どうかな?」


・「良いんですか?

セントさんには甘えてばかりで申し訳ないです。

でも、出来ればお願いします。

俺、妹や母さんを幸せにしてあげたい。」


・セント

「君は私の家族も同然だ、気にする事はない。

早い方が良いだろう。

先ずは召使いに話をさせて置くよ。

それから私が言って話をしよう。」


・「ありがとうございます。

本当に、ありがとうございます。」


ニュートは深く頭を下げた。

セントはすぐに外に出て行った。

召使いさんに話をしにいくのかな?

数人の召使いさんが必ず付いている。

その辺は、さすが5貴族だなぁっと思う。


・クラス

「ニュート様、良かったですね。」


・キロス

「良かったな、ニュート兄ちゃん!

その内、本当の兄ちゃんになってくれよな」


・「キロスはもう弟同然だよ。」


・キロス

「うん、、、、

まあ、そう言う事じゃないんだけど、ありがと」


・「???」


ニュートはイマイチ話の内容を理解していなかったが、とりあえず笑顔で流しておいた。

クラスが顔を赤くしながら何も話さないのが少し気になったので、何か話そうとした時、、、

闘技場が騒ついてきた、、


・キロス

「ニュート兄ちゃん、空から人が降ってきた。」


どう言う事? 

俺は闘技場を見渡す、、、

すると中心にはサリスさんとライ兄がいた。


・「ライ兄だ!

あれ?ライ兄、、、動かないけど大丈夫かな?」


何やらサリスさんがライ兄を揺さぶり起こそうとしている。

そして、そのまま運ばれて行った。


・キロス

「なあ、、、ニュート兄ちゃん。

あの人がライオットさん?

何か運ばれてったけど、、」


・「あ、あぁ、、あれがライ兄だ。

どうしたんだろう?」


・クラス

「怪我もしている様子でした、、心配です。」


そんな中、サリーヌさんとドンクさんがセントさんと共に現れた。


・サリーヌ

「ギルドで呼ばれてるって言っても全然信じないんだから、、、あの兵士。

後でぶん投げてやろうかしら、、、」


・ドンク

「まあ、そう言うなサリーヌ。

セントさんだったな、俺の弟子のニュートがお世話になってるみたいで、、、」


ドンクさんが頭を下げている。


・セント

「いやいや、ニュート君にはこちらがお世話になってる様なもんだよ。

良いお弟子さんをお持ちで。

さぞ、ドンクさんも素敵な師匠なのでしょうな」


いやいや、はっはっはっと、

後ろでは大人の会話が繰り広げられている。


・サリーヌ

「ニュートちゃん、ライオットちゃんは来た?」


・「うん、来たんだけど。

何処かに運ばれちゃった。

怪我してたみたい。」


・サリーヌ

「まあ、そうなの?

ヤダ、心配。

お見舞いに行かなきゃ、、、」


サリーヌさんがアワアワしている所にサリスさんが登場した。


・サリス

「それには及ばないわ。

今、リーシュが向ったらしいから。」


・サリーヌ

「そう、リーシュちゃんが、、、。

なら安心ね、、

もう、ライオットちゃんったら心配させて。

戻ってきたら、思いっきりギュッと抱きしめちゃうんだから。」


ギュッとしたら色々悪化するよ、、、

そう言えないニュートだった。


・セント

「さて、皆揃いましたな。

、、、ギルド長のセリス殿がまだか?

とりあえず、ニュート君の憧れの冒険者、ライオット君の勇姿を観られると思うと胸が熱くなります。

キロス、しっかりと観るのだぞ?」


・キロス

「はい!それに対戦相手のタスラーさんは火属性を使うと聞いてるから参考にするよ。俺も強くなりたいから」


セントは優しく微笑んでいる。

キロスはニュートに会ってから少しずつだが変わってきた。

我儘な性格が素直になった。

人を見下す事も無くなった。

自ら進んで、嫌いだった勉学や歴史学の方もやり始めている。

親にとってこれ程嬉しい事はない。


それから暫く経った時、、、

遂にライオットが登場した。 


決闘が始まる、、、

ギルド員2名 対 軍所属の2名の決闘。

ギルドメンバーは大騒ぎだ!

ライオットとマーダーがギルド側

タスラーとハンダが軍側の対決

中々決闘など観ることもないらしい。

普通に楽しんでいる。


・セリス

「まあ、ウチらの完勝だな。

ゆったりと観てようぜ。」


ギルド長はそう言う。


・セント

「いやいや、こちらも負けませんぞ!

っとセリス殿、いつの間に、、、。」


セントさんが驚きつつも反論する。

俺、すごい場所に挟まれてない?


・クラス

「ニュート様、、、

私はライオットさんを応援しますよ!

一緒に応援しましょう。」


クラスが声を掛けてくれる、、、

セントさんの視線がすっごい痛い。

ライ兄、、、俺、ここ怖い。


ドゴーン


戦いが始まった、、、んだよね?

今の炸裂音は何?


・クラス

「ニュート様、ライオットさんが、、」


ライ兄を見ると、どでかいハンマーを持った奴に追いかけられてる。

ライ兄は無様に逃げ惑っている。


・「ライ兄、、、

いや、あの動き、、、何か違和感がある。」


・ドンク

「気付いたか?ニュート。

ライオットの奴、マーダーから1人を引き離すためにわざとやってやがる。」


・「誘い込みか、、、そう言えばリトルボアも誘い込んで崖から落としたって言ってたな。」


・クラス

「ニュート様?」


・「大丈夫、、、

あれはライ兄がわざとやってる事だよ。

本気で攻撃させない為に大袈裟に動いているんだ。

、、、、多分。」


ちょっと自信の無いニュート。

それ程、ライオットの逃げ方は無様だった。

すると、タスラーが無数の火の玉を出した。

そして一気に放つ。


・キロス

「すっげぇ、、何だあの数。

あんなこと出来るのか?」


・セント

「よく見ておけ、キロス。

お前もその内、あのレベルまでいくんだぞ。」


・キロス

「わかった!」


キロスは一瞬も見落とさない様にしっかり観る。

そして、その時が来る。

マーダーの水魔法が全てを撃ち落とす。


・キロス

「嘘だろ、、、」


・セント

「ばか、、な」


場内も驚きを隠せない。

しかし、ニュートは別の所を観ていた。

ライオットの戦いを、、

ハンマーがライオットに迫る。

ライオットは事もあろうに迎え撃とうとしている


・「ライ兄!

危ねぇ、逃げろっ!」


思わず叫んでしまう。

しかし、届いていないのかライオットは振り下ろされるハンマーを、右のグローブで迎え撃つ。

ニュートの声で、ギルド側の人達がライオットの方に気付く。


・クラス

「あぁぁぁぁ。」


クラスが目を伏せる。

この瞬間、ニュートは確かに見た。

ライオットの拳が当たる直前、、、

魔力が武器に入る所を。

そして、、


ドパァァァァン


・「なっ、、、ら、ライ兄?

凄すぎる、、。」


・サリーヌ

「あれは、、、風属性の加工?

いえ、加工とは少し違う感じだわ。

あんな風に武器を破壊するなんて、、、

あの子、本当に凄いわ。」


・ドンク

「流石ライオットだ、、、

良いか、ニュート。

一瞬も見逃すなよ?」


・「わかってる。

ライ兄、、、本当にすげぇ」


あり得ない事が目の前で起こっている。


・「ライ兄、、、まだまだ遠くにいるんだね。

俺は何処までも追いかけて行くよ、、

いつか、ライ兄に背中を任せて貰える日まで。」


・クラス

「ニュート様、、、」


戦いはまだ続いて行く。

すると凄まじい炎がタスラーによって作り出されていく。

そしてマーダーに向けられて放たれた。


・セント

「まずい、タスラーが本気になった。

あの『火球』の威力は絶大だ、、、

悪いが決闘を止めるぞ。」


・サリス

「お待ち下さい。

まだ、勝負が決まったわけではありません。」


・セント

「しかし、、、」


・サリス

「大丈夫です。

なんたって一緒に居るのがあのライオットさんですから。」


・「そうだ、ライ兄が居る

ライ兄なら何とかしてくれる筈だ!」


みんながライオットを観る。

すると、ライオットは地面に座っていた、、、


・ドンク

「、、、、ライオット。

し、信じて良いんだよな?」


皆、疑心暗鬼に陥った、、、。

その間も『火球』はマーダーを追いかける。

マーダーは『火球』から距離を取りながら考えている


・セリス

「ほう、追尾機能があるのか。

スピードは遅いが中々の魔法だな。」


・セント

「そうだ、あの玉は敵に当たるまで消えない。

止めるなら早い方が良い。」


・サリーヌ

「セリスちゃん、もうアタシ限界よ!

マーダーを助けに行かせて。

ライオットちゃんは何をして、、、って

ライオットちゃん!

なに地面に落書きなんてしてるのよ〜!」


・セリス

「まあ、落ち着け、

ライオットが慌ててないなら大丈夫だ。

本当に危険だと感じたら自分を犠牲にしてでも護りに行くのがライオットだ。

アイツが動いていないのなら安心していい。」


・サリーヌ

「でも、、、、」


・セリス

「まあ、見てな」


殆どの人がタスラーの魔法の行方を見守る。

だが、ニュートだけは違った。

ニュートだけはライオットを観察していた。


・「ライ兄、、、、一体何を、、

鞄から出してるの、魔法石だよな?

ドンクさん、ライ兄を見て下さい。」


・ドンク

「何だ?今、マーダーがだな、、、

、、、ライオット?

あれは、何だ?」


・サリーヌ

「どうしたの?

ライオットちゃん、まだ落書きなんかして、、

ん?魔力を使ってるな、、。」


サリーヌのおじさん部分が出てきた。


・サリーヌ

「何だ?魔法石を砕いて地面になにかしてるぞ。

いや、消した、、頭を捻りつつ、、また書いた。

何やってるんだ?」


サリーヌさん、、、完全におっさんになってる。


・クラス

「魔法陣、、、ではないでしょうか?

魔道書で読んだ事があります。

地面に式を描き、魔力を流して奇跡を起こすと」


・「魔法陣?ライ兄、、、」


『スプラッシュ・カノン』


マーダーの声がした瞬間、

タスラーの火球が消滅した。


・セント

「わ、、、私は夢でも見ているのか?

水魔法で火魔法を打ち消した、、、

そんな、ばかな。」


・キロス

「凄い、、、水属性が最弱で、、

火属性が最強では無いの?

、、、いや、違う。

最強なんて無いんだ。

出来ない事なんてない。

どんな事でも出来るって事だ。そうだよね?

ニュート兄ちゃん!」


・セント

「キロス、、?」


・「そうだな、、、

決め付けると先に進めなくなる。

最強だと思えばそこで努力しなくなってしまう。

成長が止まってしまうんだ。

やろうと思えば何だって出来るんだ。

さっき、ライ兄が武器を破壊したみたいに。」


キロスとニュートがキラキラした目で言い合う。


・セント

「もう、我々の時代では無いのかもしれないな。

新しい時代の波が来ている、、、か。」


・クラス

「お父様、、、」


・セント

「大丈夫だ、クラス。

私もまだまだ引退する気はない。

若い者には負けんよ。」


セントの心も熱くなって来た。

次はライオットの番だ。

ハンダがタスラーに何かを言われてライオットに突進する。

ライオットはそれを躱したが、ハンダが直ぐに反応する、、、そして


ズルッ


ドゴーン


・セリス

「なんだ?

あいつ盛大に自爆したぞ!」


・サリーヌ

「ライオットちゃん、、、

貴方、、、とんでもないわ」


しかし、分かる人には神技に映る。


・ドンク

「サリーヌ、ニュート、、、見たか?」


・「うん、、見た。」


・サリーヌ

「えぇ、見たわ。

そこのお嬢ちゃんの言う魔法陣じゃなかった。

起爆式の魔法陣なんて知らないわ。」


・「そうなの?

魔力を使えば出来そうな気がするけど、、」


・クラス

「ニュート様、魔法陣とは直前魔力を流さないと起動しませんの、、、ライオットさんは魔法陣に触れてはいなかった。」


・ドンク

「その通りだ、、、あれは、有り得ない事だ。

魔力ってのは不思議な事に、地面に張り巡らせてもすぐに消えちまうんだ。

何故かは分からねえ。

物に流した魔力は残るんだから不思議だわな。

だから、地面に書いた魔法陣には直接触れないと

ダメなんだ。」


・「なのに、触れずに発動させた、、、

だからあり得ないのか、、、

魔法石を使ってたよね?

あれがあると出来る?」


・サリーヌ

「分からないわ、、だって、

魔法陣は魔導書でしか読んだことないもの。

後でライオットちゃんに聞かなきゃ。

良い?決闘が終わったらライオットちゃんを捕まえるわよ。」


・ドンク、ニュート

「了解」


『神雷』


ズドン


マーダーと呼ばれるギルド員が雷を落とす。


・セント

「か、、、神の鉄槌?

あの子は一体、、、」


・セリス

「アイツはマルチ、

それ以上でも以下でもないよ。」


・サリーヌ

「マルチ?

マーダーの事?

マルチって何?」


・セリス

「あ、、、、。」


セリスがトドメの爆弾をサリーヌ達に落とし、

サリスがしっかりと説明をしていた。

マーダーと呼ばれていたギルド員は、本当の名前がマルチさんだって事を俺にも教えてくれた。

そして、決闘が終わる。


・「ライ兄、、、

聞きたい事が沢山あるよ。

色々話したいな、、、」


・ドンク

「ニュート、行くぞ!

ライオットを確保だ。」


俺はセントさんを見る。

今回一緒に来たのがセントさん一家だったから。


・セント

「行って来なさい、ニュート君。

我々はこのまま戻るとしよう。」


・「ありがとう、セントさん。

キロス、クラスまた逢おう。」


・クラス、キロス

「また(な」


・セント

「クラス、焦る事はない。

ゆっくりとニュート君を追いかけなさい。」


・クラス

「お父様、、、、」


クラスはニュートに対して何も出来なかった。

それが悔しかった、、

しかし、父に焦る事はないと言われ、、

少し、救われた気がした。


・クラス

「きっと、、いつか隣に行ってみせます。

ニュート様、、、」


ニュートはサリーヌとドンクと共にライオットに駆け寄っていた。


ガシッ


・サリーヌ

「ライオットちゃん。

今から工房に行くわよ、、、

みっちりと教えて貰うんだから!」


・ライオット

「えっ、嘘、マジで?

サリーヌさん?

いや、、、いやぁぁぁぁぁぁ」


こうして、無事?ライオットを拉致したサリーヌは工房まで走る。


・ライオット

「ちょっ、サリーヌさん。

早い、怖い、早い〜」


・サリーヌ

「黙ってな!舌噛むぜ。」


おっさんサリーヌが街を駆け抜けていく、、、

後ろにはドンクとニュートを引き連れて。

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