第4話 生き残る為の死闘

次の日、、、


・「昨日は、酷い目にあった、、、

ギルドに行くのが少し怖い、、、」


ニュートはギルドに向かいながら呟く。

昨日のサリーヌとの特訓がトラウマになりつつあったのだ。

しかし、宿舎からギルドはそれ程遠くない。

考えながら歩いていると直ぐに着いてしまう。


・「あ〜、入るのが怖い、、、

でも行かなきゃ、、、でもなぁ〜」


サリーヌの囁きが脳裏にチラつく。

ギルド前でウロウロしていると、、


・好青年

「へい、坊や。

ギルドに何か用かい?

怖いのなら一緒に入ってやるぜ。」


不意に声をかけられた。


・「大丈夫、ちょっと考え事してただけだから。

心配してくれてありがとな。」


・好青年

「どういたしまして!

ギルドに用事はあるみたいだな、、

では共に入ろうではないか。

行くぞ、坊や。」


そう言ってニュートの背中をポンポンと叩く。

ニュートはそのままギルドに入って行った。


・ミミ(ギルド工房、朝昼の受付

「あ、ハリスさんだ。

お久しぶりですねぇ〜。」


・ハリスと呼ばれた好青年

「久しぶりだねミミちゃん。

早速だけど姉御居る?」


・ミミ

「あ〜、セリスさんは明日帰ってくる予定で出掛けてますよ。」


・ハリス

「そうか〜、なら仕方がないな。

サリスさんは奥に居るかな?

原初の果実を取りに行くスケジュールを聞いておきたくてね。」


・ミミ

「サリスさんなら奥で財務処理してると思われます。」


・ハリス

「了解!ではそちらに向かおう。

坊や、そう言う事だから俺はこの辺で、、、

何か困った事が有れば相談に乗るよ。

じゃあまたな」


ハリスは眩しい笑顔と共に奥に消えて行った。


・「ミミさん、あの人は誰ですか?」


・ミミ

「ギルド長のパーティーメンバーの1人だよ!

敵の攻撃を引き付けてくれるみんなの盾だね。」


・「へぇ〜、じゃあ凄い人なんだな。

優しかったし、、、

冒険者の悪いイメージがここ最近で変わってきたよ。」


・ミミ

「あら、嬉しい!

良い人も沢山いるけど、悪い奴も居るからね。

気をつける事は忘れない様にね。

そうそう、ドンクさんから伝言だよ。

部屋の銅鉱でインゴットを作ってろ、、、

無くなったらまた取ってこい。

以上です」


・「ありがとう、ミミさん。

じゃあ早速、部屋で頑張ってきます。」


ニュートはドンクの仕事場屋に入る。


・「さて、昨日の事を思い出、、、、」


寒気を覚える。

戦慄が蘇る、、、


・「くそ、頑張れ、、、、乗り越えるんだ、、俺」


昨日のサリーヌの特訓で掴んだ魔力操作を行う。

上手く魔力を回せる、放出も出来る。

変な汗も出る、、。

サリーヌの囁きがまだ微かに残っている。


・「負けるな、、、俺。」


砕けそうな気持ちを奮い立たせ、魔力操作を思い浮かべる。


・「完成品のイメージ、、、

魔力を素材に流し込んで、、、

内側から加工、、」


ボシュッ


・鍛治スキルを取得しました。


・おお、これで良いのか?

スキルを覚えたぞ!

加工は失敗しちゃったけど、、、

よし、沢山やってスキルのレベルを上げよう。

そうすればきっと、、、


ニュートは何度失敗しても加工を繰り返す。

何度も何度も、、、、

そう、、、何度も

本人は気づいていないだろう。

何度も加工をする事がどれほど凄い事か、、

魔力変換は行っていないとは言え、魔力を使って加工をしている事には変わらない。

ならば何故、彼は魔力枯渇にならないのか?

そこには、常識を常識では無くす可能性がある。

この国では、誰も知り得なかった秘密が隠されていた。


・「結構やったけど、結局一つも出来なかったや。

また銅鉱取りに行ってくるか、、、」


ニュートはギルドを出て、採石場に向かって走り出す。

レベルが上がったからだろう、想定よりも速く採石場に着く様になった。


・「さてと、要領は一緒だ。

岩小僧を倒しつつ、銅鉱を掘る。

とりあえず、ポイントの裏山に、、、、」


・女の子

「あの〜、すみません。

冒険者の方ですか?」


ニュートが振り返ると男の子と女の子が居た。

すると、また可愛い女の子が話しかけてきた。


・女の子

「私達、ギルドの依頼で銅鉱を掘りに来たのですが、中々見付からなくて、、、もし、知ってたらポイントを教えて頂けないかな?」


冒険者の間ではよくあるやり取りだ。

中には情報料として相応の品等を要求する場合もある。

だが、ニュートは、、


・「俺も銅鉱を取りに来たんだ。

ポイント教えてあげるよ。」


見返りなど求めない。

ニュートには目指すべき目標があるからだ。

みんなを笑顔に出来る冒険者になる。

だからこそ見返り等は求めない。

笑顔がそこにあれば良いと考えていた。


・女の子

「本当ですか?ありがとうございます。

私、クラスって言います。

こっちの子はキロス、私の弟です。」


・キロス

「ポイントの場所に案内しろ。

ねぇちゃんに何かしたらタダじゃ置かないぞ!」


・クラス

「こら、キロスなんて事言うの。

お願いしなきゃダメでしょ?」


・キロス

「ぬぐぅぅ、、、お、、、お願い。」


・「ははっ、大丈夫だよ。

俺はニュート、よろしくな。

キロスはまだ小さいのにもう冒険者か

凄いな!」


・キロス

「へへん、凄いだろ!

火属性だから強いんだぞ!

お前も何かあったら守ってやるからな」


・「そっか、頼もしいな。

いざとなったらよろしくな!」


・キロス

「うん!任せろぉ〜」


キロスは認められたと思い、嬉しくなってその辺を走り回る。


・クラス

「弟が申し訳ありません。

ニュートさんは小さい子の扱いが上手なんですね。」


・「俺にも妹が居るからな。

何となく扱い方はわかる。

それに、キロスは必死にお姉ちゃんを守ろうとしてたから、立派だと思ったのは本当だ。」


三人は採石場の裏にあるポイントへと歩いて行く


・「そう言えば、銅鉱は見たことある?」


・クラス

「いえ、採石場をつるはしで壊して、この鞄に入れれば良いと言われましたので、、、でも、先程まではどれだけ入れても弾かれてしまったのです。」


成る程、アイテム鞄持ちか、、、

お金持ちの子かな?


・「とりあえず、この辺なら銅鉱が沢山取れるだろうから、頑張ってみてよ。

俺はもう少し奥でやる事にするから。」


・クラス

「何から何までありがとう。

ニュートさん、気をつけてね。」


・キロス

「ニュートの兄ちゃん、ありがとなぁ〜」


2人と別れて奥に進む。


・「この辺で良いか。

とりあえず銅鉱を掘りつつ、加工も行おう。

岩小僧も見掛けたら討伐する方向で、、」


ニュートの採掘作業が始まる。

黙々と掘る、、加工を行う、岩小僧を倒す。

以上の作業を繰り返す。

同じ作業でも文句を言わずに続ける事が出来る。

ニュートも、ライオットと良く似ている性格をしていた。

夢中になるとご飯すら忘れる所もそっくりである


・「しかし、、、加工がうまく行かないな、

こんなもんなのかな?

まあ、文句を言っても仕方ないし、

これも強くなる為だ、頑張ろう。」


ニュートの採掘は続く、、、はずだった


・悲鳴

「うわぁぁぁぁぁ!」


・「!?今の声は、キロス?」


・悲鳴

「いやぁぁ、キロス逃げてぇ」


・「クラスか?

こっちからだ。急げ!」


ニュートは悲鳴が聞こえた方向に全力で走る。


・クラス

「キロス、危ない!

うぐっ、、、、」


・キロス

「ねぇちゃん!ねぇちゃん!」


グォォォ


・「近い、、急げ、、間に合え!」


少し開けた場所に出る。

見えた!

足を怪我しているクラスを、キロスが必死に庇っている。

クラスは涙を流しながら逃げろと叫ぶ。

キロスはクラスの前から動かない。

キロスも、、、涙を流している。

恐怖で支配されそうな自分と戦いながらもクラスを守ろうとする

大きな影が拳を振り上げ、、、振り下ろす。


・「せぁぁぁぁ!」


ニュートの右の飛び蹴りが拳を吹き飛ばす。

更に、体勢が崩れたのを確認し側頭部への左後ろ回り蹴り。


巨大な影はゆっくりと倒れる。


・「2人とも、大丈夫か?」


・クラス

「あ、あ、ニュート、、、様」


・キロス

「ニュートにいちゃん!」


絶望と涙でボロボロの2人に希望が宿る。

しかし、ニュートはすぐに現実に引き戻す。


・「いいか、よく聞け。

俺では、こいつには勝てない。

かと言って全員で逃げ切れるとも思えない。」


ニュートの勘がそう教えてくれる。

この敵は強すぎる、、、

2人の希望が、、、恐怖へと変わる。


・クラス

「わ、、、私が囮になります。

ニュート様、キロスを、、、どうかキロスを」


・キロス

「嫌だ!ねぇちゃんを置いていけない。

いやだぁぁぁぁ!」


ニュートは考える、、、

三人で、戦っても死ぬ

1人を囮にすれば2人は助かるかもしれない。

俺が囮になっても、足を怪我しているクラスを抱えて逃げれる程キロスに力は無い。

どうする、、、冒険者ならどうする、、

ライ兄なら、、、


ゆっくりと、、巨大な影は起き始める。

2人に絶望の文字を与えながら、、、


・クラス

「いい?キロスよく聞きなさい。

冒険者なら状況を把握しなさい。

私は足が動かない、なら囮は私になる。

それがパーティーなの。

全滅しない事が1番大事なの。

冒険者になりたいんでしょ?

なら、私を囮にして逃げて、、、お願い。」


・キロス

「うぁぅぅ、、嫌だ、嫌だ、嫌だ!

絶対に、俺は、、、見捨てない」


クラスが泣き崩れる。

まだ幼き弟が死んでしまう。

ニュートは既に敵を見据えている。

私達はここで死ぬんだと思った、、、


・「キロス、、、よく言った。」


2人はニュートを見る。


・「良いか、よく聞け。

助かる道はこれしか無い。

キロス、お前は全力でギルドに走れ。

ギルドのドンクと言う男を呼んでこい。」


・キロス

「えっ?」


・「返事しろっ!」


・キロス

「は、、、はいっ!」


・「わかったな?

ドンクだ、、、ギルドに行けばわかる。

お前なら出来る。」


・クラス

「ニュート様、、、、」


・「クラスは俺が死んでも守る。

魔物ってのは1番弱っている獲物から狙うもんだ。

必ずお前はフリーになる。

そこに勝機を見出すんだ。

最後まで諦めるな!

絶対に生き残る道はある。

目を瞑るな、諦めるな、下を向くな!

これは時間との勝負だ。

行けっ、キロス。

お前の足で勝利をもぎ取ってみろ!」


・キロス

「あ、、、、、はいっ!

わかった、必ずドンクさんを呼んでくる。

絶対に、絶対に呼んでくるから。」


キロスは泣きながら走り出す。


・クラス

「ニュート様、、、

キロスを助けて下さって、本当にありがとうございました。

さあ、貴方もお逃げになっ、、きゃあ」


・「足が痛むかもしれないが、キロスが帰ってくるまで耐えてくれ。

一応、隙を見て添え木はする。

一旦ここを離れる。」


お姫様抱っこでクラスを持ち上げ、一時的に戦線を離脱する。


グォォォォ!


逃がさないと言わんばかりに、巨大な岩が無数に飛んでくる。


・「やっぱり、遠距離攻撃があった。

クラス、しっかり俺にしがみついて!」


ニュートは岩を避ける。

距離を取っていたのが幸いして、避ける事は容易だった。


・クラス

「あぅ、、、」


・「痛む?

アイツが飛ばした岩のお陰で添え木に良さそうな木片がゴロゴロしてるから、とりあえず応急処置だ。」


クラスの足に添え木をして固定する。


・クラス

「少しなら回復魔法が使えます。

ニュート様が怪我をしたら私が、、、」


・「まずは自分の足を回復するんだ。

そして、出来るだけ俺にしがみついてくれ。

その方が避けやすいから。」


・クラス

「ニュート様、、、私が囮になれば、、」


・「それは却下だ。

俺は誰も死なせない。

それが俺の目指す冒険者だから。

さあ、、、次が来るよ。

回復しながらでも良い、俺にしがみついて」


ニュートはクラスを抱いて飛ぶ。

巨大な岩がドンドン飛んでくる。

ニュートはクラスを絶対に離さない。

クラスもニュートを信じてしがみつく。

後ろでは信じられない轟音がこだまする。


・「助けが来るまで逃げの一手だ。」


ニュートは巨大な影と距離を取る

飛んでくる岩を避け続ける。


・クラス

「ニュート様!後ろに、、」


・「岩小僧?

アイツが呼んだのか?」


いつの間にか囲まれている。

巨大な影は岩小僧諸共、粉砕する様に岩を飛ばして来る。


・「くそ、、、

後ろの岩小僧を倒しつつ、下がりながら避ける。

クラス、しっかり掴まっててよ。」


ニュートは岩を躱しつつ足技のみで岩小僧を倒しながら下がる。

決して距離を離しすぎないように、かつ近すぎないように、、、

一定の距離を保ちつつ助けを待つ。

精神と体力がドンドン削られる。

岩小僧にするのは必要最小限の攻撃のみ、少しでも隙があれば休む事に徹する。

時間を稼ぐ。


・クラス

「ニュート様、このまま逃げる事は不可能なのでしょうか?」


・「出来るかもしれない、、、

だけど予想外の攻撃が来る可能性が高い。

そうなれば避けるのが難しい、、、

ならば慣れてる攻撃を避け続けた方が安全だ。

もうじき助けが来る筈だから、、、」


キロスがギルドに向かってから、多分1時間ほど経った筈だ、、、

早ければ既にギルドに着いている頃、、

もう少しだ、、、


・クラス

「ニュート様、敵がドンドン増えていきます。」


・「数が多い、、明らかに増えている。

飛んでくる岩の中に混じっていたのか?

くそ、岩小僧を生み出して飛ばしてるって事?」


周囲には岩小僧が多数、、

更に増えていく。

ニュートはそれでも逃げ続ける。

気を付けて避けていても、岩小僧の増殖のせいで少しずつ追い詰められる。

もう、何体倒したかわからない。

それでも攻撃と増殖は終わらない。


・「くぅ、、、終わることのない攻撃。

体力が削られていく。

心が折れそうだ、、、」


ニュートはクラスをもう一度強く包む。

守るべき者の存在を再確認して、消えかけた闘志に再び火を灯す。


・クラス

「ニュート様、、、、?」


・「もう少しだ、、、

クラス、諦めるな!」


自分に言い聞かせる。

しかし、、、、


・「くっ、、、」


ついに追い込まれてしまった。

周囲を岩小僧に囲まれて、後ろには大きな壁。

巨大な影はゆっくりと近づいて来る。


・「もう到着していても良い頃だ、ならば。」


ニュートは後ろの崖をみる。

崩れやすそうな場所を見付けるとすぐに走り出す


・クラス

「ニュート様、何を?」


・「もう近くまで来ている筈なんだ、

なら、後は場所さえ知らせれば良い。」


巨大な影から岩が飛んでくる。

ニュートは躱しながら見付けたポイントで止まる


・「クラス、、、

俺を信じて、目を瞑ってしがみついていてくれ。」


・クラス

「、、、はい」


クラスはニュートを強く抱きしめる。

今まで以上に強い力で抱きしめる。

震えているのがわかる。

怖いんだろうな、、、

わかるよ、、俺も怖いから。


・「さぁ、掛かってこい!」


言葉は通じてないだろう、、、

だが、ニュートは叫ぶ。

巨大な影はそれに応えるように、、

無数の岩を飛ばす。


・「いくぞ!」


ニュートは飛んでくる岩に向かって全力で走る。


・「当たっちゃダメだ、

掠ってもダメだ、

止まるな、緩めるな、、

走り抜けぇぇぇぇ!」


自分を鼓舞する様に叫ぶ。

岩を躱す、躱す、躱す、、

敵は自分の飛ばした岩に遮られてニュートの場所がわからない。

ニュートは隠れる様に動く、、、そして

巨大な影の股下を滑り込んで抜ける。


・「ぬ、、けたぁぁ!

このまま走り抜けるぞ、、」


ニュートは安堵した。

死地の中で見出した逃げ道を掴み取ったのだ。

誰でも喜ぶだろう。

ニュートは安堵してしまったのだ。


ガブっ!


・「なっ!がぁぁぁぁぁ」


岩小僧がニュートの右足に噛み付いていた。

岩を避け切った、、、強敵を抜けた、、

安堵の感情で足元の敵を見落としてしまった。


ズザァァア


2人は倒れる。

ニュートは辛うじてクラスを抱き抱える。

背中で滑り、クラスが怪我をしない様に考慮する。

結果、、、


・クラス

「あぅ、、、ニュ、、ニュート様、、

大丈夫ですか?

ニュート様!」


岩小僧に噛みつかれたまま滑り込んだ為、牙が深く食い込んでしまう。


・「ぐぅぅぅ、、くそ、、、」


ドカっ!


・岩小僧を倒しました。


左足の一撃で撃破する。

しかし、右足は使い物にならないだろう。


・クラス

「すぐに治療を、、、」


クラスの回復魔法のお陰で切断と言う最悪の事態は脱れる。

しかし、完全回復には時間が掛かる。

敵は待ってはくれない。

巨大な影はゆっくりと、確実に近づいて来る。


・「ありがとうクラス。

お陰で立てる様になったよ。

もうじきアイツの射程範囲に入る。

それまでに逃げるんだ。」


・クラス

「嫌です。

ニュート様を置いては行けません。」


・「ふふ、キロスと同じ事言ってる。

勘違いしないでね。

1人の方が逃げやすいからさ。

先に逃げてくれると助かるな。」


・クラス

「ニュート様、、、、わかりました。

約束してください、

ニュート様もすぐに逃げると。」


・「わかってるよ。

さあ、行って、、、岩が飛んでくる前に。」


クラスは大きく頷き、そして走り出す。

大きな涙を流しながら走って行く。


グォォォォ


巨大な影の咆哮、、、

クラスは思わず振り返った、、、

そして、見てしまった。


・「ごめんね、クラス。

嘘ついて、、、

でも、時間稼ぎはするから、

逃げ切ってね。」


クラスが走り出した直後に呟いた言葉。

ニュートはその一言の後、、あろう事か巨大な影に向かって突進していた。

クラスの方に岩が飛んで行かない様に。


・「こっちだデカブツ!

うりゃー。」


ガンッ!


余りの硬さに拳が悲鳴をあげる。

だが、止まるわけにはいかない。

クラスが逃げる時間を稼ぐんだ。


ガン、ガン、バキ、、ゴン、ペキ、、コン、コン


ニュートの攻撃が弱くなっていく、、

右手の骨が折れる、、左手の骨にヒビが入る。

攻撃は弱くなっても避ける事だけは忘れない。

だが、、、、そう長くは続かなかった。


ドゴッ


・「ゴプッ、、、」


遂に食らってしまった一撃、、、

ニュートは動けなくなってしまう。

諦めかけた時、、


・クラス

「ニュートさまぁぁ!」


逃げてなかったのか?

足がすくんでいたのか?

無理もない、、

これで、まだ終わるわけにはいかなくなった、、


・「ぬぉぉぉ、」


立ち上がるニュート

しかし、現実は甘くない、、

立ち上がっても何も出来ない。

ゆっくりと巨大な拳が振り落とされる。


・クラス

「いやぁぁぁぁ」


・???

「随分と頑張ってるじゃないか、坊や」


ガン!


巨大な拳が止まった、、、

何が起きたのかわからない。


・???

「よく頑張ったな、後はゆっくりしてな、、

ヘイ、魔物さんよ、、、

随分とやってくれたな。」


・「は、、、ハリスさん?」


・ハリス

「後は任せておけ。

『スキル、挑発!』

さあ、全部纏めてかかって来いや!」


周囲の敵意が一気にハリスに向く。

引き付けたのか?


・ミミ

「ニュート君、こっちに」


受付のミミさんが背負ってくれた。

クラスと合流する。


・ミミ

「2人でここに居てね!

後は任せておいて」


ハリスの所には大量の岩小僧、そして巨大な影の拳が降り注いでいる。

しかしハリスには効かない。

ハリスは盾で弾く、いなす、止める。

気が付くと、既にサリーヌとドンクが戦線に参加していた。

みるみる岩小僧が減っていく。

驚愕なのはミミだった、、

ドンクとサリーヌも強い、、一撃で倒している。

だが、ミミはどうだ?

一撃で倒すのは同じだ、、、、

同じ筈なのに、一撃の元に粉々にしている。

あの攻撃は何だ?

ニュートは見詰める、、、ミミの戦いを。


・クラス

「ニュート様の嘘つき!

バカ、バカバカバカ。」


回復魔法を掛けてくれながら、、罵倒して来る。


・「ごめんね、、もう何も思いつかなくてさ。

でも間に合ってよかった。

キロスのお陰だな、、、」


涙を流すクラスに謝り、戦いを眺める。

流れる様に敵を倒すミミ。

豪快に敵をなぎ倒すサリーヌ。

盾をサポートしながら周りの状況を知らせ、死角にいる敵を倒すドンク。

ハリスは巨大な影の相手をしている。

絶対に他の人に攻撃が行かないよう敵対心(ヘイト を取る。


・「これが、パーティーの戦い、、、

一切の無駄がない。

まるで一つの意思の中で戦ってるみたいだ。」


ニュートは心奪われる。

クラスも同じく、、、パーティーを見ている。

程なくして、、、


・「クラス、ありがとう、

かなり回復できたよ。

また、助けてもらったね。

さぁ、、、2人で下がろう。」


・クラス

「助けて頂いたのはこちらです。

もう少し、この戦いを観ていたいのですが、。」


・「俺たちが下がらないと倒せない気がするんだ。

俺達もパーティーの一員だったら、今は下がる事が2人の出来る最善だと思うんだ、、、」


・クラス

「ニュート様、、、、わかりました。

では、肩をお貸しします。」


2人はゆっくりと戦線を離脱する。

それを見て、


・ハリス

「もう少し回復したら指示を出そうと思ってたが、中々良い状況判断能力だ。

ありゃ良いリーダーになれるぜ。

ドンクさん、良い弟子持ったな」


・ドンク

「あったりめぇよ!

俺ぁ、本来弟子なんか要らねぇ、

だが、良い素材を見ちまうと、どうしてもな。」


・サリーヌ

「ニュートちゃん達が離脱したわ。

一気に決めちゃいましょう。」


・ミミ

「りょーかい!

んじゃ、行っきまーす」


ニュートとクラスが歩く後ろで、

凄まじい振動と破壊音がする。

だが、2人は振り返らない。

今、自分たちに出来る事を精一杯する為に、、

ニュートは涙を流していた。

助かった安堵の涙なのか、、

逃げる事しか出来なかった、自分への不甲斐なさから来る涙なのか、、

一緒に戦えなかった無力感から来る涙なのか、、

自分でも分からない涙が止まらなかった。

クラスはそんなニュートの涙を見て、何も言わずに肩を貸しながら寄り添い、歩き続けた。


ここに、巨大な影との死闘が終わりを迎えた。

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