第40話新陳代謝

 ダンジョン探索と言う名の狩りが始まって一年半、皇国は大きく変わった。

 特に皇国直臣団は大嵐に見まわれたと言える。

 譜代功臣家の大半が潰された事に始まり、ダンジョン探査に動員された、武門に相応しくない当主が狩りに失敗して次々と事故死した。

 怖気づいた当主が隠居届を出して幼子に家督を譲り、世間から憶病と罵られることになり、大量に召し放ちとなった。

 驚く慌てた者達は、武官登用試験に合格した者を娘や妹の養子に迎える事で、何とか家を保つことに成功した。


「大盾隊、上手くいなせよ」


 少なくない犠牲は出したが、意識して皇国直臣団に新陳代謝が起こるように仕向けた事で、腐敗していた皇国政治が一新された。

 両閣下と同心の者達だけでなく、皇国直臣団全体が世の中をよくしようという気概に満ちるようになった。

 その影響もあり、皇国に仕える小者までダンジョンで狩りをしたいと言いだした。


「いなして隙を見せた大猪の急所を、槍隊は的確に狙え」


 皇国の貸与武装を装備した、といっても竹盾と皮鎧で防御して、槍と剣で武装しただけだが、ネズミを狩るだけなら小者でも十分だった。

 同じ装備で中間が一角兎を狩り、若党隊が犬を狩った。

 足軽隊に至っては、大羊を狩れるほど強力な戦闘部隊になっていた。

 その根本的な原動力は、正しく運用されるようになった武官登用試験だった。


「大盾隊は素早く体制を立て直して次の突撃に備えろ」


 だがそれだけでは百人の力もバラバラに使われるだけだ。

 一年間戦い抜いてきた最初の騎士や徒士が、各部隊の百人隊長となって的確に配下を指揮した事が何よりも大きい。

 配下一人一人の能力と性格を把握して、百の力を連携させて使いこなしている。

 それが陪臣だけで狩ったダンジョン獣を運べる体制を築いたのだ。


「次に大猪が湧くまでに、陪臣に狩った獲物を運ばせろ。

 ケガをした者は相方が手早く治療しろ。

 抜刀隊は不正規出現に備え臨戦態勢を続けろ。

 全員が身体強化を終えたら、次の大牛に向かうんだぞ、気を抜くな!」


 いよいよ大牛を狩る時が来たのだ。

 羊・鹿・猪と狩れるようになり、よく利く薬を製造できるようになった。

 今まで不治の病だった病が治るようになり、頭打ちだった農作物の収穫も、ダンジョン獣の汚物から作った肥料を農地にまく事で、飛躍的に収穫量が増えてきた。

 戦国時代の文献を信じるのなら、大牛を狩れればもっと大量に素材が手に入る。

 ここで躓くわけにはいかないのだ。


「各部隊担当表」

ネズミ:皇国小者隊

一角兎:皇国中間隊

犬  :皇国若党隊

大羊 :皇国足軽隊

大鹿 :皇国徒士隊

大猪 :皇国騎士隊

仕留めた獲物の輸送は陪臣小者・中間・若党・足軽が担当

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