第39話幕間10
無事出産を終えられたエルザ様が、ダンジョン探査に加わりたいと言い出された。
あれだけお世話になったエルザ様に無理だと言える者など、テオドシウス王家にもアルベルト家にも誰一人いない。
もしエルザ様が命懸けで喝を入れてくださらなかったら、バルド様は腑抜けのままだっただろう。
シュレースヴィヒ伯爵が止めてくださるかと少しは期待したが、我らが止められないと思うエルザ様のご気性を、実の父親が理解していない訳がなかった。
止めるどころか、隠し子だった実の娘のエルザ様を、養女という形にして後見し、ダンジョン探査騎士団に押し込んでしまった。
まあ、押し込むも何も、身体強化を別にすれば、バルド様よりも強い武芸者なのだから、騎士団の誰も勝てるはずのない御方なのだ。
よくよく考えれば、エルザ様のお気持ちもよくわかる。
自分よりはるかに弱かった者達が、ダンジョンで狩りをすることで身体強化され、自分よりも強くなってしまったのだから、腹立たしく思って当然だ。
大恩ある我々が、全く邪念なく真摯に強くなりたいと思われるエルザ様を、手助けしないわけにはいかなかった。
正規の狩りの時間以外は、全力を持ってエルザ様をサポートした。
バルド様もクリス様もヴィルヘル様も我々も、エルザ様配下の騎士として連携して狩りをして、エルザ様に指揮官職身体強化が分け与えられるようにした。
エルザ様の天賦の才と、積み上げられた努力と経験は想像を絶するモノで、百人の部隊を指揮しながら、己も最前線で大羊を一撃で斃す腕前であった。
エルザ様は高級武官登用試験と高級文官登用試験を軽く合格され、皇帝の口頭試問も満点で返答されたそうだ。
口頭試問の内容を事前に知っていたかどうかは分からないが、武芸だけの猪武者ではないのかもしれない。
自分の娘のためだからと言って、シュレースヴィヒ伯爵が何とか真っ当に運用され出した登用試験で不正を行うとは思えない。
そんな事をしなくても、高級武官登用試験は軽く合格して騎士に成れるのだから。
だが全く助力しなかったわけではない。
エルザ様の部隊配属にあわせて、女武芸者だけの部隊を編成したのだ。
皇帝の妻妾しかいない後宮警備の部隊を鍛えるためと称して、女騎士団や女徒士団を編成して、その団長にエルザ様を任命したのだ。
しかもダンジョン探査団副総団長の地位も与えてだ。
シュレースヴィヒ伯爵と言えども親馬鹿な所があるのだと、妙に親しみを感じてしまったが、馴れ合いは危険だから、心を引き締め直す!
俺も、エルザ様がバルド様の男子を生んだことで、大きく動かしたことがある。
隠れていたテオドシウス王家とアルベルト家の半数を表に出したのだ。
文武官登用試験を受けさせて、高級文武官登用試験の合格を目指した。
高級文官登用試験の合格は流石に厳しかったが、高級武官登用試験の合格者は八人もいたし、上級武官登用試験には全員が合格した。
彼らがダンジョン探査で身体強化されれば、皇国を転覆させテオドシウス王国を再興する事も難しくないだろう。
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