第34話部隊増設

「父上は徒士隊の指揮をお願いします」


「おお、任せておけ、完璧に指揮してみせるぞ」


「御爺様は若党隊をお願いします」


「おお、安心しろ、役に立つ奴を見つけてやる」


 昨日の初ダンジョン探索が成功したので、今日は徒士隊百兵と若党隊百兵が、ダンジョンでどれだけ通用するか、確認することになっている。

 騎士隊とは装備が格段に違うので、ネズミや一角兎とどう戦うのは不安ではあったが、彼らも生活がかかっているのです、戦国時代の教訓を生かして、竹で作った盾と槍を用意していた。


 竹製の盾と槍なら、製作費用が安く済む。

 いや、自分で作る事すら可能だから、鉄製の盾を貫通させられて修理費に顔を青くするよりは、よほど実戦に即している。

 騎士隊に関しては、装備の修理費を公平に負担するために、その日の損害はその日の収入で修理することにした。


 問題はいつまで収入を高額で維持できるかだった。

 今は信じられないほどの高額で売却できるネズミ、一角兎、犬の毛皮だが、ダンジョン探索の回数を重ねるごとに市場に毛皮が出回るから、その価格は徐々に低下していくだろう。

 順調に行けば部隊を増設する予定だから、商品が溢れることになる。

 できる事なら、毛皮が売却できなくなるような状況になっても、修繕費が賄えるようにしたい。

 肉を家庭用に確保するだけでいい、というくらいにしておきた。


 そういう意味では、徒士隊と若党隊が用意していた竹の盾と槍は、とてもいいものだから、騎士隊でも使用を考えた方がいい。

 せっかく得られた騎士の地位だから、それに相応しい装備を身に付けたい気持ちは分かるが、その為に今まで以上の貧乏生活になっては意味がない。

 そんなことになるくらいなら、騎士の地位を得ただけで満足して、ダンジョン探索に参加しない方が、生活はこれ以上悪くはならない。


 今回は急いで修理した盾を使ってダンジョンに入るが、ネズミと一角兎の一角は、徒士隊の後をついていくことにする。

 そうすればネズミや一角兎と戦わなくてすみ、犬か次の魔獣から戦うことができるかもしれない。

 盾の修理の必要のない犬だけを狩り、そのまま犬を持って帰れれば、昨日とは比較にならない利益を得ることができるかもしれない。


「いいか、今日は徒士隊がネズミや一角兎を斃した後に続く。

 我々は犬以降に備えるが、万が一徒士隊が危険に陥った時は、即座に救援できるように心構えはしておけ」


「「「「「おう!」」」」」


 父上と御爺様の代わりに入った二人の騎士を加え、合計百騎が心を一つにしてダンジョン探査に挑む。

 昨日の無礼講のお陰か、皆の心が近づいている気がすす。

 この後また反発するとは思うが、それまでに個性を知りたい。

 個性を知ったうえで、伍、十、廿の班分けをして、後の騎士隊増設に備える。

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