第33話討議検討

「さて、まずは全員無事に戻れたのを喜ぼう、乾杯!」


「「「「「乾杯」」」」」


「皆で本音を言い合いたいから、しっかりと飲み食いして、遠慮がなくなった頃に無礼講として探索の問題点を話し合おう。

 まずは思いっきり食って飲んで探索の成功を祝おう」


 俺の言葉を受けて、九十七人の騎士たちが遠慮することなく食べ始めた。

 最初はぎこちなかったが、共に命懸けに戦いをしたというのは大きい。

 多少の考え方の違いなど、戦友にとってはささいな事だ。

 まあ、だが、深く付き合い命懸けの戦いを続ければ、どうしても許せない考え方の違いというものが表面化するとは思う。

 その時にどうするか、今から考えておかなければいけない。


「さあ、遠慮せずに飲んでくれ、それでどうだ、何か気になる事はあったか?」


「そうだな、気になると言えば、我らが進んだのが犬の所までだという事だ。

 最初の探索で安全を期したのは理解できるが、我らの実力ならまだまだ先に進めたはずだから、撤退が早すぎたのではないか?」


「何を言う、安全が第一だぞ。

 俺たちが死んだら、いや、怪我するだけで、残された家族が困るのだ。

 今の状態では、ネズミに噛まれた時の薬を買うのも困るではないか。

 一角兎の突きに盾に穴をあけられた連中は、修理費の捻出に頭を悩ませている。

 明日以降の事を考えれば、あれ以上の探索はできんぞ」


「そうだ、そうだ、犬までなら穴の開いた盾でもどうにかなるが、その先で穴の開いた盾を壊されでもしたら、それこそ全滅の危険がある。

 まずは犬までの探査を繰り返して、軍資金を貯め身体強化をするのがいい」


 慎重論と積極論が戦わされているが、その割合はどれくらいなのだろう?

 その割合によっては、騎士を増員して二隊三隊に分けた方がいい。

 考え方が違う者が隊を組んでいたら、追い込まれた時の踏ん張りが利かなくなる。

 同じ考えの者同士なら、内輪もめで実力を発揮できなくなる事はないだろう。


「まあ、まあ、まあ、待て、待て、待て。

 問題は盾役にかかる修理費の負担をどうするかだ。

 盾役だけが何時も多額の修理費を負担しなければいけないというのは、今後の探索に問題が起こるぞ。

 盾役が経済的に安心して働けないと、最悪盾を修繕せずに探索に加わり、強力な敵と出会った時に盾が破壊され、味方が全滅するようなことになりかねん」


 確かにその通りだ、盾の修繕費は全体で負担しなければいけないが、それは抜刀隊の砥ぎ代や、槍隊の修理費も同じだ。

 武器と防具の保守点検と買い替えは、隊全体で費用負担すべきだが、その資金をそうやって集めるのかが問題だな。

 皇国主導でダンジョン探索をするといっても、細やかな決まりをどうするか、色々と問題があるな。

 

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