第30話鍛錬

 俺は元の自分を取り戻すべく、猛烈な鍛錬を繰り返した。

 色欲に囚われている間に、情けないほど身体が衰えていたのだ。

 鍛錬を一日休むことが、ここまで身体を衰えさせるとは、思ってもいなかった。

 ダンジョンに挑むまでには、この身体を元に戻さなければいけない。

 その為には、命懸けの厳しい鍛錬が必要だと分かっていた。

 だから、シャルタン達に本気で殺す気で襲ってもらった。


 エルザ様も鍛錬に加わろうとしてくださったのだが、叩頭して止めてもらった。

 エルザ様のお腹には、俺の子供が宿っているのだ。

 その子が流れる可能性のある事は、絶対にさせられない。

 その代わり、言葉で叱咤激励してくださるようにお願いした。

 自分とお腹の子供の命をかけてでも、俺の名誉を守ろうとしてくださったエルザ様の言葉は、俺の中では特別なのだ。


「バルド、今回のダンジョン探査に加わる騎士や徒士の強さを確認しろ。

 流派によって相性があるから、自分と相性の悪い騎士や徒士には注意しろ」


 俺が色欲に囚われてる間は、父上とお爺様がダンジョン探査団の鍛錬を受け持ってくださっていたが、加わっている騎士や徒士を信じきってはいないようだ。

 名門功臣譜代家の残党が加わっていて、両閣下の手先だと思われている俺を殺して恨みを晴らそうとする者がいると、父上とお爺様は疑っているようだ。

 だから、自分たちの目が十分行き届く地上にいるうちに、全ての騎士や徒士の実力を確認し、非常時にも的確に応戦できるようにしようとされている。


 父上とお爺様はある程度対処できる目途がつかれたようだが、俺にはその準備ができていないので、急いで騎士や徒士と手合せさせようとされたのだ。

 その愛情には正面から答えないといけないのです、シャルタン達との鍛錬でどれほど疲れていようと、それはおくびにも出さずに試合をした。

 それが追い込まれた時の底力になると信じて、鍛錬場で倒れるまで試合をした。

 その時に刺客に襲われないように、常にシャルタン達が護ってくれていた。

 俺のような人間のためにそこまでしてくれる、有り難い事です。


 最初皇室が考えていたダンジョン探査の日までに、元の力を取り戻せた。

 八割方無理だろうと思いながらも、絶対にやらなければいけないとも想っていた。

 その為に血反吐を吐き血尿を流すほどの厳しい鍛錬を行った。

 ダンジョン探査に参加できなくなるほど身体を壊そうとも、止められない。

 色欲の影響を残してダンジョン探査をするなど、絶対に許されないと思ったのだ。

 そのかいがあって、身体を壊すことなく、元の力を取り戻すことができた!

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