第31話小手調べ
「バルド殿、まずは私に戦わせてください」
「分かった、だが危険だと判断したらすぐに増援をだすからな」
「はい」
一番最初にダンジョンに入ったのは、俺を含めた騎士百騎だった。
全員が武官登用試験で好成績を上げているにもかかわらず、家柄の問題で採用されなかった不遇な者たちだ。
まったく採用されない訳ではなく、実家の身分に相応しい、小者・中間・足軽・若党・徒士といった待遇で召し抱えられていた。
能力のある者を登用するための制度だった試験が、生まれ育ちのいい者が、能力のある者を見つけて、不当に利用するための制度になっていた。
それが両閣下によって討ち破られ、虐げられていた者たちが世に出る好機となり、特にダンジョンを解禁する事で、皇国の財政も改善させようとしていた。
ダンジョン探索は、絶対に失敗できない挑戦だった。
だから、不遇な処分を受けていた者の中でも、特に武勇に優れた者から登用し、皇室の力を強化しようとしていた。
俺はその先兵というか、一番期待されている存在だが、危うく大コケするところだったので、今回は特に慎重になっていた。
だから、一緒に派遣された第一陣の中でも、積極的な者を優先的に使った。
ありがたい事に、一番積極的だったのは、エルザ様と同じ女武芸者だった。
彼女たちの存在があったからこそ、シュレースヴィヒ伯爵は、隠し子のエルザ様のダンジョン参加を認められていたのだろう。
そうでなければ、いくらなんでも、男達ばかりの部隊に参加させなかったはずだ。
まあ、現実には、これの子を妊娠されて参加できなくなったが。
ダンジョンに入って最初の敵は、獰猛なネズミだった。
物理的な攻撃力は小さいが、その口には人間に有害な雑菌が数多くあり、噛まれたら毒に冒されると考えなければならない。
後々発病して、ダンジョン内で戦えなくなるだけでなく、命を失う事すらあるので、ネズミごときと侮れない相手なのだ。
「大楯隊、後続のネズミが隊の中に入り込まないようにしろ。
槍隊、盾の上からネズミを叩け。
抜刀隊、盾を超えてくるネズミを始末しろ。
先方、戻ってこい、ネズミの増援が来たぞ」
俺は立て続けに指示命令を下した。
ほんの少しの遅れが、味方を傷つけ毒に冒される結果になる。
ダンジョンに入って早々、こんな所で傷を受けて撤退するなんてできない。
個々の能力でネズミに劣る者など一人もいないのだ。
これで撤退に追い込まれたりしたら、俺の指揮能力がない事になる。
そんな事は絶対に認められない!
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