第25話色欲
俺は自分がこんなに色に濃い人間だとは思っていなかった。
色に溺れて勉学や武芸を忘れてしまうような、性根の腐った情けない人間だとは、よもや思っていなかった。
女との情愛の快楽に溺れるあまり、ダンジョンを恐れいきたくないと思っていた。
その事を自覚してしまった時、こらえきれず嗚咽を漏らしてしまった。
自分に色に濃い大爺様の血が流れている事を、生まれてはじめて恥だ。
その恥ずかしさと恐怖感が、俺を更に色欲に溺れさせた。
自分の怯懦を忘れるために、朝起きてから夜倒れるまで女性の部屋に籠り、女性たちの上で激しく色欲を満たした。
家族や両閣下に子作り期間を認めてもらっている事を言い訳にして、血が噴き出すかと思うほど激しく女性を求めた。
「バルド殿、昨晩子供を宿した確信がある、もうこれ以上子作りは不用じゃ。
さあ、今日からは武芸の鍛錬にもどるぞ、その方が子種が濃くなるという。
何をしておる、めまいがするほど女色に溺れるとは、それでも武芸者か!」
エルザ様に激しく面罵され、稽古用の木太刀でボコボコに叩きのめされた。
俺が主人で夫であろうと、宮中男挌であろうと、全く関係なかった。
昨日までの寝室での態度は何だったのかと思うほどの、豹変だった。
いや、初めてエルザ様と閨を共にした時に、普段の態度とは違う可愛らしさに大いに驚かされたが、やはりエルザ様の本質は武芸者であった。
愛を交わすのも子供を宿すのも、優秀な子孫を得るという目的のためだった。
エルザ様に徹底的に叩きのめされても、死の恐怖からは解放されなかった。
女との情愛を優先したくて、ダンジョンに行きたくないと本気で思ってしまった。
初恋のエルザ様に対する思いは変わらないが、それ以上に情愛の快楽が忘れられず、それを失うくらいなら卑怯憶病のそしりを受けてもいいと思っていた。
心の隅にそれを恥じる気持ちはあるのだが、それ以上に情愛の快楽を求める気持ちが大きかった。
「わっはっはっは、そんな事は当たり前の事で、何も心配はいらんぞ、バルド。
男は誰だって一度は色に溺れるモノよ、それは当たり前の事だ。
色魔色情狂こそ男の本質で、その為に卑怯未練な事をするのが普通なのだよ。
それを心身を鍛錬する事で乗り越えるのだが、バルドの歳では無理な事だ。
出陣に間に合わなければ病気届を出せばいい、バルドの代わりにヴィルヘルとクリスをダンジョンに行かせればいいのだ」
思い切って、恥を忍んで大爺様に相談したが、軽く笑い飛ばされてしまった。
大爺様はそう言ってくれるが、頭から信じる事はできないし、そう簡単に仮病で逃げる事などできない。
いや、心の中に大爺様の言う通りにしようという部分がある。
それもわずかにあるのではなく、心の大半が同意してしまっている。
俺はこんなにも卑怯で恥知らずだったのか!
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