第22話幕間7

「フォレスト、ダンジョンに入る騎士や徒士を選ばなければいけないのだが、何か参考になる情報はないか」


 俺の苦悩はバルド様のこのひと言から始まった。

 何を悩むかといえば、テオドシウス王家とアルベルト家の血統を、表に出してダンジョンに入らせるかどうかだ。


 もし、今迄の全ての出来事が、この世界に隠れ潜む、テオドシウス王家とアルベルト家の血統を炙り出し、根絶やしにしようとする皇室の策謀であったら?

 今まで隠忍自重して護って来たテオドシウス王家とアルベルト家が完全に滅んでしまう事になるのだ。

 一部だけ表に出せばという一族の者もいるが、そんな事をすれば、結局芋蔓式に全ての傍流が見つけ出されてしまう。


「ここは自重する、表に出ている我が家だけがダンジョンに入る事にする。

 分家傍流には今まで以上に隠れてもらい、皇室に見つからない事を第一とする」


「はい、承りました」


 俺独りでは決められない事だし、決めてはいけない事だから、テオドシウス王家の現当主で、アルベルト家の隠居であるアンディ様に決めていただいた。

 アンディ様は七七歳の御高齢だが、今だにお盛んで、テオドシウス王家の隠れた分家傍流を創り出してくださっている。


 方針さえ決まれば後は簡単だ、表に出ていない分家傍流は、全て今まで以上に深く静かに潜んでもらったが、本家は将来を見据えて動いた。

 隠居のアンディ様が皇都警備隊足軽に復帰され、当主であられるヴィルヘル様と、見習に出ておられたクリス様が、上級武官登用試験合格者として、バルド様指揮の騎士団の騎士としてダンジョンに入る事になった。


 表に出ているアンディ様の弟はルドルフ様だけで、他の弟君は全て陰に隠れて暮らしておられるから、ダンジョンに入ってもらうわけにはいかない。

 それはルドルフ様のお子様も同じで全員各地に散らばって隠れ暮らしておられる。

 クリス様の子弟も同じで、表に出ているのは長弟のトーマス様だけで、他の弟君やトーマス様のお子様は各地に隠れておられる。


 だから、一時は予備の部屋住みとして皇都警備隊足軽の見習いをされていたトーマス様が、現役復帰されたアンディ様の見習いとして皇都警備隊に出仕されている。

 問題はバルド様の長弟ゲイリー様だが、表に出ておられるとはいえまだ十二歳なので、このまま文武官登用試験に頑張っていただく。


 問題は表に出ているアルベルト家が根絶やしにされた時だが、その場合は隠れておられるバルド様の次弟に本家を継いで頂く。

 表に出ているアルベルト家がこのまま存続できた時のために、表に出ておられる全ての方に、多くの子供を作っていただく。

 


 

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