第9話幕間2
「お頭、噂は十分浸透しましたが、まだ続けるのですか?」
「もう少し続けて、大臣筆頭閣下に恩を売る。
恐らく閣下はバルド様を婿候補の一人にしているはずだ」
「エルザ様の婿ですか?
四つも年上の男勝りの姫君を押し付けられるなんて、バルド様も運が悪いですね」
確かにこいつの言う通り、運が悪いと言えるかもしれない。
バルド様がもっと無能なら、適当な騎士職や宮中貴族職を与えられて終わりだっただろうが、如何せんバルド様が優秀過ぎた。
政敵が多く、本家を潰される可能性を考慮している大臣筆頭閣下は、隠し子を有能な上級士族の嫁がせて、血を残す策を取ってる。
これは滅んだと思われているテオドシウス王家と同じだ。
テオドシウス王家は、戦国末期に皇室と激しく争い、力及ばず皇室に滅ぼされたことになっている。
だが実は違うのだ、今も脈々と血筋が受け継がれているのだ。
幾つかの血筋に分けられて、市井に隠れて平民として血筋が保たれている、本家筋だけは卒族として表に出ている。
それがアルベルト家だ。
そしてアルベルト家の血筋は、俺は受け継いでいる。
テオドシウス王家とアルベルト家の血筋は、皇室皇国に露見した時の事を考えて、一四〇年の間に大陸中に分散されているが、本家筋は皇都警備隊足軽のアルベルト家と、俺の家になっている。
その事を知ったうえで、自分の隠し子をバルド様に押し付けようとしているのなら、シュレースヴィヒ伯爵マクシミリアン卿はとても恐ろしい相手という事になる。
恐らく、隠れ家の闘鶏場に現れたのも、俺に対する謎かけだろう。
テオドシウス王家の本家筋を陰に隠すのか、それとも表にだすのか、はっきりしろという事だろうが、そう簡単に決められるものか!
バルド様の才能が開花するのはこれからなのだ。
バルド様は優し過ぎるくらい優しい方だが、この世の汚れを受けるほど、清濁併せ吞む英傑に成長されるのだ。
シュレースヴィヒ伯爵マクシミリアン卿とエルザには、バルド様が成長するための砥石になってもらう。
もしかしたら、バルド様を護る忠臣に化けるかもしれないし、バルド様に情愛の素晴らしさを知らしめる愛妾になるかもしれないから、捨て石とは言わないが、切り捨てるべき時には躊躇なく切り捨てる。
それがアルベルト家の当主である俺の役目だ。
向こうも役に立たないと判断したら、躊躇うことなく滅ぼしにかかってくるだろうから、お互い様だ。
「バルド様をお隠しするための隠れ家を用意しておけ。
旧都と副都の両方にだ」
「分かりました。
今度は何屋にしますか?」
「闘鶏場と料理屋は目星をつけられてしまっている。
刀剣商と鍛冶屋にしておけ。
それなら武器を扱っていても疑われない」
「分かりました、旧都と副都に刀剣商と鍛冶屋を確保しておきます」
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