第6話
その日の夜からランニングを始めた。
入院で寝たきり、筋肉の落ちきった身体には5キロのランニングは思った以上にハードだった。
この状態で『生きるか死ぬか』の異世界に行かせようというのだから、最初から俺に異世界を救わせる気はなかったんだろう。
だとしたら、何のために俺を異世界に連れて行った?。
連れて行く事にノルマがあるのか?。
確かに女神に嘘はつけないだろう。
だが、リズが語っていない部分に真実があると考えて間違いはなさそうだ。
誰も『女神は黙秘出来ない』とは言っていない。
リズが何を企んでいるかは知らないが、その企みに乗ってやる事にした。
俺が異世界転移に応じている理由は、いくつかある。
一つ『何故か外国語が理解出来るようになった。』
異世界の言語が何故か読み書き出来るようになっただけじゃない。
日本に戻ってきて、ランニングを終えて何気なくテレビで『BBCニュース』を副音声、英語で聞いた。
驚いた。
英語が読める。
英語が書ける。
これは恐らく異世界転移の副産物だ。
リズは「『異世界転移者』には『ステータスボーナス』『スキルボーナス』がある。」と言っていた。
きっと、異世界転移者は『就職に有利』なんてもんじゃない。
一つ『ステータスが見える』
ステータスは客観的な数値だろう。
本当に情けない数値だ。
だが『客観的に見て俺は情けない』という事だ。
客観的に見て、ステータスがもう少しマシになるまで異世界で頑張ろうと思う。
もちろん日本でも。
しかし『かっこよさ』が0なのは『悪い情報も全て受け入れよう』と思っていた俺ですらちょっと泣いた。
客観的に見て、『俺はまるでかっこよさがない』という事らしい。
まあ『美しさ』は少しはあるので、置物として見た時に、ゴミ以下・・・という事はなさそうだが。
俺はその日のうちに空手道場の扉を叩き、門下生になった。
『客観的に見て、俺はなんの価値もない人間だった。置物として見ても『かっこよさ』すら全くないゴミのような存在だった』
認めたくない。
でも数値で表されると認めざるを得ない。
チクショウ!。
もう少し鍛えて人並みになってやる!。
今に見てろよ!。
次の日
俺は秋葉原に来ていた。
しかしない。
『防具屋』がない。
武器屋は秋葉原にけっこうあった。
そもそも俺はモンクを目指さなきゃいけないし、武器はオープンフィンガーグローブとメリケンサックを買っただけだった。
ヌンチャクやトンファーは買わなかった。
使える自信がなかったのだ。
俺が本当に欲しかったのは『防具』、『武器』はオマケみたいなモンなのだ。
昨日、ネットで『防具屋』を検索した。
いくらでもヒットする。
ただし、どれもこれも剣道の防具屋だ。
『コレジャナイ』感が半端ない。
ネットで見つけた武器屋で話を聞く。
俺「あの、防具が欲しいんですけど・・・。」
店員「勾玉(まがたま)ならございます。」
いや、俺は霊的な物というか、スピリチュアルな物から防御しようとしてる訳じゃなく、もっと物理防御力を求めているんだ。
つーか、オメーら一体何と闘って防御に勾玉使ってるんだよ!。
「もっと物理防御力が上がるような防具が売ってるような店はないのか」と武器屋で何度も聞くと、「系列のミリタリーショップに軍服が売ってます」との事。
店員「軍服なら防刃、防弾の物もありますし、何より丈夫です」
俺「あるじゃねえか、現代の鎧!。
・・・で、いくらなの?。」
店員「全部で45万円・・・端数金額は切り捨てのサービスさせていただきます。」
結局、有り金で買えたのはヘルメットとアーミーブーツだけだった。
金がなければ安全も買えない。
みんな貧乏が悪いんだ。
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