第3話

 「よく考えたら俺、異世界の事女神に何も聞いてねーや。」

 異世界とはどんなところなのか?

 異世界で自分はどんな存在なのか?

 異世界で自分は何をすれば良いのか?

 異世界で自分は何が出来るのか?

 異世界でどこを目指せば良いのか?

 異世界で言葉は通じるのか?

 異世界では何を食べれば良いのか?


 ・・・戻るか。

 確か、『ゲートよ開け』って心の中で念じれば異世界でどこにいてもゲートを通って日本に帰れるんだよな?。


 「何でそんな速攻で戻ろうとしてるんですか?。

 ビビってるんですか?。」声の方向に振り向くと、そこにはリズがいた。


 俺「ビビって悪いのかよ?。

 つーか、異世界がどんな世界かわからないで警戒してる俺を見て『何ビビってんすか?プークスクス』って女神様は俺を馬鹿にしてんの?。」

 リズ「そこまで警戒度MAXなら、いきなりゲートに飛び込まないで下さいよ!。

 臆病なのか、度胸があるのか、蛮勇なのか・・・。

 私には貴方という人が全くわからない!。」

 俺「それはともかく、リズってこの世界の女神だろ?。

 少しはこの異世界について説明しろよ、使えねーな。」

 リズ「説明しようとしたらいきなりゲートに飛び込んだ男が何言ってるんですか?。

 ・・・まぁ、良いでしょう。

 ここは異世界です。」

 俺「わかっとるわ!。

 『ここは八王子です』って言った方が意外性あって驚くわ!。」

 リズ「(無視だ。相手にしてると気が狂いそうだ!)ここは小屋になっています。

 しばらくはこの小屋を拠点として下さい。」

 俺「『ここに住め』って事かよ?。」

 リズ「貴方、異世界に住む気ないんですよね?。

 日本に戻る気なんですよね?。

 この小屋は拠点、休憩所、ゲート置き場として活用して下さい。」

 俺「わかった。

 ・・・で、この小屋はどこにあるんだよ?。

 青梅か?。」

 リズ「西東京から離れて下さい。

 ここは青梅でも八王子でも東村山でもありません。

 ここは異世界の王都『シルヴァニタ』の城下町です。」

 俺「『シルヴァニアファミリー』って割にはウサギだのリスだのはいないみたいだな。」

 リズ「シルヴァニタです!。

 では、異世界の風土について説明します。

 異世界は一つの星です。

 ですが、異世界は銀河系にありません。

 『地球と異世界は同じ時空にはない』と思っておいて下さい。

 異世界は一つの星ですので一年中熱い地域もあれば、一年中氷に閉ざされている地域もあります。

 地域により、気候はまちまちですが、今から行く『シルヴァニタ』には四季があり、それは日本のそれとよく似ています。

 違いと言えば、梅雨がない事と台風がない事です。

 梅雨がない事は良い事ばかりではなく、数年に一度は水不足になります。

 『シルヴァニタ』は4つある大陸の一つにある王国です。

 4つの大陸には違う王国が一つづつあります。

 他の王国との関係ですが・・・ほぼ、関わりはありません。

 ありませんでした。

 ですが無差別に魔族が攻めてきたのです。

 他所の大陸の王国と協力して魔族を駆逐する事にしたのです。

 しかし、人類は少なく魔族、魔物は際限なく湧き出ます。

 数が少ないだけでなく、戦力も人類は低い。

 戦況は圧倒的に不利なのです。

 なので、あらゆる手段を講じて異世界から人間を呼んでいるのです。

 私は異世界から人間を転移させている『聖教会』の女神です。」

 俺「『信仰してる女神がこんなクズみたいな観光気分の男連れてきた』なんて信者が知ったら、暴動が起きるな。」

 リズ「貴方の勘違いをいくつか正します。

 『聖教会』は多神教です。

 女神は私一人ではありません。

 別に私が連れてきた人物がハズレだとしても別の女神が連れてきた人物が当たりなら大した問題にはなりません。

 そして、私は貴方をハズレだと思ってはいません。」

 俺「そーかい、そーかい。

 お世辞でもありがとうな。」

 リズ「お世辞じゃないし、それより何より私嘘はつけません。」

 俺「それよりまず何すれば良いか、教えてくれよ!。

 観光だけして日本に帰ろうにも、観光もまだ出来てない状態なんだ。」

 リズ「・・・勝手に突っ走ったのは貴方だと思うんですが・・・まぁ、良いでしょう。

 まずは素手で倒せる小動物系のモンスターを倒しましょう。

 畑で害獣を倒して、畑の主から小遣いをもらえばそれも装備を整える費用の一部になります。

 また、冒険者ギルドで討伐クエストを受けておけば、レベルアップと小銭稼ぎのためのモンスター討伐でもさらに小銭が稼げます。」

 俺「俺なんかに倒されてくれるモンスターがいるだろうか?。」

 リズ「いると思いますよ。

 異世界の子供達は小遣い銭を稼ぐのに畑にあらわれる害獣を狩ります。

 いくら貴方が弱くても、素手のガキンチョより弱くはないでしょう。

 それに異世界転移者にはボーナススキルがあります。

 貴方は『聖教会』に呼ばれたので、『聖教会系』のボーナススキルが加算されます。」

 俺「『ボーナススキル』ってどんなの?。」

 リズ「主に『聖教会系』は『体力』と『防御力』と『異常耐性』にボーナス値が割り振られています。

 また『聖教会系』は刃物があまり装備できませんが、代わりに『素手』での攻撃力にボーナス値があります。

 そして、素手でしばらく闘っていると『戦闘僧(モンク)』というジョブを覚えます。」

 俺「『装備なしでもつよくなれる、ラッキー♪』

 なんて騙されるか!。

 テメー、武器も防具もケチるつもりだろう!。」

 リズ「聖教会は金欠なんです。

 ケチってる訳ではありません!。」

 俺「わかったよ!。

 じゃあ、ギルドの依頼受けるからギルドの場所教えてくれよ。」

 リズ「ギルドは小屋を出て北に真っ直ぐ向かった所にあります。

 一つアドバイスがあります。

 最初は虫タイプのモンスターを倒しましょう。」

 俺「何でだよ?。」

 リズ「例えば犬やウサギのような哺乳類タイプのモンスターを最初から殴り殺せますか?。

 まぁ、そのうちに魔族や人間を殴り殺す場面もあるかもしれませんけど、最初は害虫タイプのモンスターを殺して慣れましょう。」

 俺「女神に『殺しに慣れろ』って言われるのも変な感じだな。

 じゃあな、俺はしばらく異世界を堪能する。

 また何かあったら声かけるわ。」

 リズ「どうやってそっちから声かけるんですか?。

 あ、もぅ、行っちゃった・・・。」

 

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