第2話

 二〇二一年一〇月一二日、一つのニュースが世界中を駆け巡った。

 《オリオン座のベテルギウスが超新星爆発か? 日本のスーパーカミオカンデを含む複数の観測機関が大量のニュートリノを検出。数十時間以内に増光する見通し》

 つい先程まで無機質かつ平坦な口調で原稿を読み上げていたニュースキャスターが、興奮した様子でテレビカメラを見つめている。

 『これは数千年に一度あるかないかの現象で、私達が生きている間に見られるのは奇跡と言っても過言ではありません』

 『皆さん、ぜひ今夜から空を眺めてみてください!』

 『西暦一〇〇六年にも一度、別の星の超新星爆発が観測されており、あの藤原定家も記録に残していたようですが、今回のものは、その時の規模を遥かに上回っており……』

 『専門家の方と電話が繋がりました。お話を伺いたいと思います』

 次々にテレビのチャンネルを切り替えても、扱っている話題は変わらない。久しぶりの明るいニュースに、皆、すがりつきたい気分だったのだろう。

 そして日本中、いや、世界中の人々に見守られながら、満を持してベテルギウスは増光し始める。数日後には、満月並みの明るさで夜空全体を青々と照らした。

こうして世間は、空前のベテルギウスブームを迎えたのであった。

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