5-2

 アオイドスがいる場所、それは埼玉県内某所のコンビニである。ここまで来ていたのは、いわゆる弁当を購入する為だった。

しかし、コンビニの入口にある自動ドアを開けようと思った矢先、スマホが鳴り出したので足を止めて別の場所へ移動する。

(メッセージ? 誰からなのか?)

 差出人は記述がなかったが、メッセージの内容はURLのみで文章は一切ない。

この手のメッセージは明らかにスパムの類やランサムウェアのようなウイルスなどが仕込まれていると考えるだろう。

しかし、アオイドスのスマホは一般的なスマートフォンではなく、ARゲーム専用のカスタマイズ型だ。

チートクラスのハッカーでもない限り、セキュリティを破るのは不可能であり、ほぼ無敵のスマホともいえる。

「差出人すらないURLだけのメッセージ、しかもピンポイントでこのARゲーム専用ガジェットに送るとは」

 ARゲーム専用である以上、それとは無関係のメッセージはシャットアウトする。

このメッセージはそうしたセキュリティを通過している以上、ウイルスの類ではないのは把握した。

そして、該当するURLをアオイドスは開いたのだが……。



 そのスマホを片手に見ているサイトは、エウロペのまとめ記事なのだが……その内容は非常にお粗末すぎた。

一部勢力はフェイクニュースと割り切ってスルーし、コメントしているのは民度の低い『バズり』目的のユーザーばかりである。

 極めつけていえば彼らの存在はかませ犬というよりも、もはやある人物を引き立てさせるような演出に過ぎない状態になっていた。

もはや、ここに集まっている連中はガーディアンに突き出して摘発してもらうまでもなく、警察が逮捕するのも時間の問題だろう。

話の本筋に関係すると思われていたまとめサイト勢力は、ここにきて思わぬ失態を演じたことで、敵という存在ですらなくなったのだ。

「ここまでお粗末な記事となると、もはやまとめ記事というよりは二次創作で特定キャラのカップリングで話し相手を探すような……」

 アオイドスも、まとめサイトのレベルがここまで落ちていると……相手にすらしたくはないという状態である。

下手に刺激しても面倒な事しか起こらない。それはエウロペをピンポイントで炎上させている勢力に材料を与え、混乱を広げかねない事情もあるからだろう。

「今まで相手にしていたまとめサイトの正体が、このような二次創作勢力と同レベルだったとは……」

 スケジュールの変更を余儀なくされている、と続けて言おうと思ったのだが、彼の目にある記事が見えた。

(彼が動くのであれば、敵はまとめサイトではなく別勢力に切り替わるでしょう)

 アオイドスの思っている『彼』とは、名前だけは見覚えのあった人物だったのである。

それこそエウロペよりも大物と言える存在で、もしかすると大きな波乱が起こるのではないか……と。

「彼らが相手をする敵は、彼に演じてもらう事にしよう」

 ここから流れを変えていけば、それこそ炎上中のコンテンツ作品よりは……という考えがアオイドスにあったかは定かではない。

まとめサイト勢力の正体を知った今となっては、彼にアンノウンを演じてもらうしかないという考えもあった。

(この状況を見て、向こうはどう思うかな……)

 日本でのみアンノウンの目撃情報が集中している事はアオイドスも把握していたのだが、こういう結末になるとは予想外だった。

わざわざフレイを担ぎ出した意味も……あったのかは定かではない。それでもSNS炎上の元凶を表舞台に引きずり出したことは大きいだろう。


 

 アオイドスのいる場所からはさほど離れていない別系列のコンビニ、その店外で入口近くのモニター画像を見ている人物がいた。

明らかに男性なのだが……顔はSFに出てきそうなメットをかぶっており、素顔は周囲に見えないだろう。こういった事情もあって、彼は店に入らないのかもしれない。

さすがにフルフェイスのメットをかぶった状態では、強盗と間違われるのは明白だ。それを踏まえ、店外からモニター画像を見ていたのである。

(あのアーマーは、まさか?)

 映し出されたのはバーチャルアバターなのだが、その装備しているアーマーの形状に若干の覚えがあった。

確か……アイディアを何処かへ出したような気配がする。そう考えていた辺りになってからは、モニターに表示されていたのは別のCMになっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る