3-3
数日後、フレイはSNS上でとある情報を得る。それはバーチャルアイドルに関する物なのだが……。
いつも通り、リアルのフィールドではなくバーチャルフィールドの方で待ち合わせを行う事に。
(都市伝説のアイドル? まさか……)
都市伝説になっている存在のアイドルは数多くいるだろうが、神出鬼没のアイドルなんて聞いたことがない。
フィクションの世界だと、ゾンビのアイドルだったりロボットのアイドルというのはあるだろうが……。
どうしても、リアルにそういった設定のアイドルというのは現実味がない。フレイも最初はフェイクニュースと思って放置を考えていた。
(この名前には聞き覚えが……)
フレイに教えてもらったURLをチェックし、その内容に驚いたのは瀬川(せがわ)アスナである。
彼女にとって、その情報の内容よりも記事に書かれていたアイドルの名前の方が若干気になっていた。
「何もしないというよりも、行動を起こした方がいいかもしれないな」
フレイの落ち着いた発言には、別の意味でもアスナは驚くしかないのだが……確かに一理あるだろう。
今まではフリーゲーマー同盟として情報を集めているだけだったが、どれも真実とはいいがたく、自分たちが動くことはなかった。
その後にガーディアンが動き出し、フェイクニュースを拡散したとして該当アカウントが凍結されるパターンが多かったのである。
つまり、二人としてもフェイクニュースばかりをつかまされており、そろそろ本格的な情報が欲しいと思っていた所だった。
その状況下で、都市伝説のアイドルの話題……アスナにとっては心境は複雑である。
その話の中で、フレイはアスナにシルフィードという名前のバーチャルアイドルへの接触を提案した。
しかし、アスナの方は乗る気ではない。むしろ、警戒するべきという意見を出す方だったのである。
「都市伝説こそ、なおさら手を出すべきではない。SNS上でフィクションの交流企画をノンフィクションに見えるように捏造する手段など、いくらでもある」
シルフィードという名前をフレイから出されるとは思わなかったというのもあるのだが、アスナの方はフレイ以上にヒートアップしている。
(まさか、シルフィードに関して何か知っているのか?)
フレイの方は、アスナの反応を見てシルフィードと何か関係があるのか考える。
確かに同名のバーチャルアイドルは数人いるかもしれない。都市伝説のシルフィードが、アスナの知っているシルフィードともこの段階では同一人物とも思えないが……。
「明らかにフィクションである都市伝説やWEB小説をノンフィクションであるかのように語るのが、最も危険な発想と言えるのだ」
アスナの方も若干言い過ぎた……とは思っている。それでも都市伝説やWEB小説の類をノンフィクションと同列で語るのは危険だと考えていた。
過去に起こったSNS炎上などは、こうした事例がきっかけともいわれている。それこそ、あの『不正破壊者の我侭姫』も……。
「確かに、都市伝説を過剰に信用するのは危険だろう」
フレイの方も都市伝説に関しては、そこまで信用はしていない。
むしろ、それを過剰に信用し、炎上させる方が悪だと考える方である。
「しかし、SNS炎上を恐れて何もしない方が……」
フレイが何かを切り出そうとした瞬間、アスナの反応が変化する。
フレイとしては地雷を踏んだという感覚はない。しかし、その反応は明らかに……。
「そういった発想の人物が、特手コンテンツを炎上させ、自分がバズればそれでいい。そう考えるのだ」
その発言は大声や絶叫という類ではないのだが、間違いなくフラグだった……というものである。
アスナは自分の過去を知ったような感覚で発言しようとしていたフレイに対し、このまま同盟は鬼も考えた。
しかし、瞬間的な感情だけで行動すればそれこそある勢力の思うつぼとも考え、ここは抑えることにする。
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