バーチャルとリアルの境界線

３－２．５

　アーカーシャと名乗る人物、その正体は憶測だけが広まっていた。個人のフォロワーが少ないようなユーザーだけではなく、まとめサイトまで憶測を広げているのである。

実際、その正体に関してはエウロペのサブアカウント説まで出てくるほどに真相が出てくるような気配がない。

「エウロペにサブアカウント？　それこそありえないだろう」

　この一言をつぶやいたのは、ＡＺＩＳのスタッフの一人だった。

動画サイトなどでもエウロペに対して批判的な動画に対し、通報を行っているのだが……その過程で、一連のサブアカウント説を知ったのである。

「そうですよね。他のバーチャルアイドルなどによる炎上かもしれませんよ」

　銀髪で若干巨乳気味の女性が、スタッフのつぶやきに対して答えた。しかし、それでもスタッフは納得していない様子。

エウロペ本人が見ていたら、どのような反応をするのか……とお互いに考えていた中で、スタッフの見ていたサイトで新たなニュースとが飛び込んできた。

「どういうことだ！？　アンノウンが瞬時消滅なんて」

　ここ数日、アンノウンの目撃情報があり、それをエウロペも撃破はしている。

しかし、それ以上に撃破記録を残して情報が拡散していた人物、それがアーカーシャだった。

「アーカーシャか。名前自体はどこかで聞き覚えが……」

　銀髪の女性がスマートフォンを片手に、あるサイトを検索したところ……予想外の人物にヒットした。

その人物とは、バーチャルドライバーとは違うゲームのプロゲーマーのようである。しかし、ランキングリストには同じ名前が二名以上いるようにも見えた。

（同じキャラを使っているのか？　それとも……）

　リストを見て疑問に思う箇所はある。しかし、ランキングのスコアで細工がされたような形跡はない。

この上位プレイヤーより下にエウロペの名前を発見したのだが、これに関してはＡＺＩＳのエウロペではないのは明らかだろう。

　その一方で、瀬川（せがわ）アスナとフレイはそれぞれで情報収集を行っている。しかし、思った以上の情報は得られない。

アスナもアーカーシャの情報は得ているのだが、それがバーチャルドライバーに出没しているアーカーシャとは限らないだろう。

そうした裏付けをするためにも、アスナは様々なサイトをめぐっているのだ。単純にまとめサイト一つだけを巡れば全て解決にはならない。

　フレイの方はアスナよりもゲームのプレイ歴が浅いので、フレイはバーチャルドライバーのプレイがメインになっている。

ゲーム自体はコントローラでも出来ることは出来るのだが、非対応ガジェットでのプレイは推奨されない。

むしろ、そうしたプレイをチートと騒ぎ立てて炎上させるようなバズり目的のユーザーもいるので、フレイは仕方なくマウスでプレイしていた。

一般的なマウスではなく、運営も使用を認めているゲーミングマウスで……だが。

（組み合わせ要素が四箇所しかないのに……）

　近距離武器、遠距離武器、アーマー、特殊武器の四種類を上手くカスタマイズしていくのがバーチャルドライバーのポイントとなる。

重量制限、違うスポンサーによって装備不可能という要素はない。近距離及び遠距離武器もビーム兵器と実体武器の二種類の属性だけだ。

これを属性というのかも疑わしいが、対ビーム防御のアーマーで出撃しても、相手がビーム武器を使わなければ意味はない。

要するにダメージ軽減の有無だけの属性というべきだろう。スポンサーも特に悩む箇所はないはずだ。

（スポンサーは悩むな。自分のお気に入り企業を探すだけでも……）

　スポンサーに関しては、それこそバーチャルドライバーで一番の重要箇所だろう。

スポンサーロゴの付いている武器は基本的に運営が使用を認めている武器という証明にもなる。それに、武器の使用に関して費用はかからない。

ソーシャルゲームの中には、武器が課金要素のガチャで出てくるようなパターンもあるのだが、そこをスポンサー付きの武器という事にして課金要素ではないとアピールしているのだろう。

バーチャルドライバーで課金要素なのは、フィールドだと運営は説明している。有名なスポットをイメージしたフィールドもあるのだが、そこは課金が必要らしい。

武器のスポンサーが負担すればいいのでは……ともいわれるが、色々と事情があるのかもしれない。