インターミッション
瀬川(せがわ)アスナがフレイに接触できていない理由は、単純な理由ではない。
だからと言って、ご都合主義や尺の関係、大人の事情や情勢の変化――物語外のリアル世界、我々のいる世界の干渉によるものでもなかった。
「つぶやきサイトや大手の百科事典などの荒らし行為――全ては、我々の世界にいるようなモブ悪党や炎上勢力と同じようですね」
パソコン上に表示されているもの、それはとある小説サイトだった。そして、様々な作品の更新を監視しているのは――アオイドスである。
彼が頭を悩ませるもの、それは様々な外部要因によるものが多い。ある意味でも自分が知りえないような情報なのだ。
(ただでさえ、アンノウンという存在もあるというのに――人は何故に争いを求めるのか)
アンノウンの情報を仕入れていく内に、その存在はなんとなくだが炎上勢力などと同類である可能性を掴む。
しかし、その情報も彼にとっては――些細なものに過ぎない。アオイドスの目的は別にあった。
「デスゲームのような命をやり取りで何かを得るような……その考えは終わった。それに、圧力の時代も終わりを告げようとしている」
彼がノートパソコンで様子見をしていたのは、つぶやきサイトの書き込みである。そこには、様々な話題が書き込まれていた。
それ以外にも、彼が警戒しているような『バズり』目的のアカウントも……。そうしたアカウントは大抵がガーディアンによって凍結されるのが、この世界のお約束と言う。
「この時代が求めているのは、プロゲーマーが様々なゲームをプレイして盛り上げていき、コンテンツ市場を拡大させるという日常だ――」
次にチェックしていたのは……WEB小説である。彼は異世界ファンタジーには興味を示さず、主に現代物の作品を探していた。
何故に現代物を集中的に検索しているのは分からないが、異世界ファンタジーではアオイドスの想定しているシナリオと剥離している可能性が高いだろう。
「SNS炎上勢力が自分たちのストレス発散という目的でコンテンツを炎上させ、ディストピアを生み出していく非日常系は――リアル世界に持ち込むべきではない」
そして、アオイドスは何かを決意したかのようにノートパソコンへ文字を入力していく。
これは、WEB小説の執筆を開始したというべきだろうか? 彼の場合は様々なタイムリー要素などが噛み合ってこそ、初めて作品のアイディアが生まれるという珍しいタイプと言えるだろう。
「我々の世界の争いごとを向こうに持ち込み、それこそデスゲームを生み出すことはあってはいけないのだ。それに警鐘を鳴らすためにも」
いつの間にか、アオイドスは本来の目的を忘れて小説の執筆をつづけている。これが意味する物とは、いったい何なのか?
小説の執筆に集中している点は、つぶやきサイトで『バズり』目的のSNS炎上を行うモブアカウントよりは――幾分か正常に見えるかもしれない。
しかし、時にこうした想定外の行動は……思わぬ落とし穴を生み出すことにもなることに、この段階のアオイドスは気づいていなかった。
その一方で、AZISのスタッフがあるものを発見する。それはエウロペのSNS百科事典の記事なのだが――。
「悪質な名誉棄損と言えるような内容ではないのですが、これはどうするべきでしょうか?」
記事の内容をチェックしていたスタッフは、偶然通りかかったリアルのエウロペに意見をうかがう。
しかし、彼女はその内容を見て不快感を示すことはない。その表情をスタッフが確認し、現状は様子見という事にした。
(解読できないような単純な文字列――具体的な記述ではない限り、運営側も動けない)
スタッフは様子見と判断するのだが、それでも若干の意図がある荒らしの手段という事でエウロペは少し思考する。
この記事に関しては数分後に正常な記事へと戻る。実は、これ以外にも百科事典の記事を荒らしていたこともあり、ガーディアンへ通報を行った人物がいた。
百科事典の荒らしを行った人物、それはSNS炎上勢力というわけではない。ふとしたことで、特定作品を批判されたことで逆上したユーザーだった。
こうした事は、この世界でもよくある事であり――リアル世界でもゼロではない事例と言える。こうした事をアオイドスが警戒していたのかは、定かではないのだが。
(炎上勢力は全て駆逐する。たとえ、この世界に影響がなくても……他の世界へ悪意を拡散し、非日常にしようとする存在は、全て――)
自室でガーディアンへの通報ページを開き、百科事典の炎上行為を行っているアカウントを通報しているのはフレイとも、アスナとも違う女性だった。
青の髪色にツインテール、何処かのバーチャルアイドルを意識したようなコスプレをしているのか……という女性だが、着ているのは赤っぽい色のジャージである。
体系こそはぽっちゃり系ではないようだが……彼女は、いったい何者だろうか?
(コンテンツ炎上で営業妨害をしようという勢力は……)
通報ページにはユーザーネームの入力スペースがあり、あくまでも任意入力のようだ。
彼女はそのスペースにあるワードを入力する。そのワードとは、アーカーシャ。
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