2-3.5



 瀬川せがわアスナが目撃していた動画の正体、それはフレイがプレイしていた物……いわゆるプレイ動画だった。

アスナはモニターに表示された動画をバーチャルドライバーであることは把握していたようだが、フレイのプレイとは気づいていない。

それでも思う箇所はあったようで、他のプレイヤーとは違う何かを感じていたのだろう。CMに関しては共通で最後に流れる仕組みのようだが。

 しかし、この動画は案の定というか炎上をしていた。理由は色々とあるだろうが……。

【アマチュアの実況者でさえ、あのようなプレイはしない】

【やはり、リアル配信者はリアルで事件を起こしている以上、完全排除すべきだ】

【時代はリアル配信者ではない。それは平成の時代で終わっていると確信したはず】

【SNS炎上も平成の時代で終わったのだ。今は――】

【今の時代はWEB小説の一次創作の天下。リアル配信者や二次創作の時代は終わったのだ】

 フレイの事に触れているようなつぶやきなどは存在せず、そのほとんどは『バズり』目的の物ばかりである。

こうしたつぶやきはガーディアンが発見次第、該当の書き込みを行ったアカウントを即座凍結し、悪質な炎上行為であれば拘束もありえるのだ。

その光景をディストピアや新日常系と言及したのが『ヴァーチャルレインボーファンタジー』等に代表される作品なのだろう。

今もWEB小説では異世界転移や異世界転生などといったファンタジー物ばかりが書籍化していき、WEB小説サイト発の現代物はレアと言われるほどだ。



「やはり、誰かが動かないと全てを変えることはできない」

 その状況下で、フレイはある決断を下したのである。この世界を変えるため、SNS炎上が戦争と同等であるという認識を持たせ……世界から戦争を根絶する事。

既に世界は『人命を奪うようなデスゲーム』と認識されるような侵略行為などを全面禁止しており、ある意味でもフレイの考えは飛躍しすぎていた。

まるで、SNSで炎上することはデスゲームと同義なのではないか……という意味でも。

「SNSの炎上でも容易に命の奪い合いになるのは明らかだ。過去の事例、それこそSNSのないような昭和の時代でも仮にSNSがあれば……」

 彼は過去の様々なスレの記述を見ていく内に、人の悪意が戦争を引き起こすレベルで残り続けていることを知った。

それこそ、過去に起こった世界大戦を影で動かしていた人物が健在である事を意味するかのように……。

(アオイドスの言っていることが事実だとすれば、一刻も早く誰かが声をあげなければ手遅れになる)

 あの動画を配信し、炎上していることは分かっている。そこであきらめていては、一連の事件を解決することは不可能だ。

世界が『人命を奪うようなデスゲーム』を禁止した今こそ、再び世界大戦を引き起こしそうな元凶を発見し、止めることである。

「その為には、このゲームで自体の重要性を伝えることが……」

 そして、フレイはバーチャルドライバーでの活動を中心とした『フリーゲーマー同盟』を立ち上げることにした。

全てはSNS炎上という名の世界大戦を止めるために。



 しかし、実際にバーチャルドライバーをプレイしたフレイも操作感覚には苦戦しているようでもある。

こういったFPSタイプのゲームは、コントローラでやるものとばかり思っていた。

イースポーツタイトルの中には、パソコンのキーボードでプレイするようなものもあるのだが、このゲームではマウスを使う。

(それに加えて、武器が問題だな。ガチャ運に左右されないのが救いかもしれないが)

 ウェポンギア、アーマーギア、エクストラギアの三種類でバーチャルドライバーで使用するギアは構成されている。

これらは基本的にレンタル形式に加え、ガチャのようなシステムは適用されていない。その為、課金という意味ではそこまで気にしなくてもよいのだろう。

問題があるとすれば、各種ギアにはスポンサーロゴがプリントされている事だろう。これによって基本無料でプレイできるという証拠なのだが。

このシステムに関しては、もしかするとイースポーツ化も視野に入れたシステムという可能性は否定できない。

「スポンサーに左右されるのも、リアルの配信者や芸能人などと似ているのかもしれないのが皮肉というべきか」

 さすがのフレイも、このシステムには苦笑いするしかない。

ガチャを取るか、スポンサーを取るか……この辺りに関してはロケテの段階でも賛否両論だった。

ノンスポンサーにするという案も存在していたのである。その証拠が、何処かにあるというノンスポンサーウェポンだった。

(ノンスポンサーウェポンは、それこそ試作段階の武器……下手をすれば、チートとも受け取られかねない)

 SNS上の都市伝説を鵜呑みにしたくはないのだが、あまりにも強大な武器にはそれなりの噂はあるのだろう。

ノンスポンサーウェポンの一件は、その証拠と言えるかもしれないが……。

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