19:遅刻しても安心

「チッ、きやがったか――終わった後、裏庭来いよ、ローリ~!」

「うるせっ、戻れッ、タ~コ!」

「!!! ――……」


 すごすごと戻るイジメっこ。

 ケケケッ♪

 さすがに教師がおる前じゃ、手ぇ~出せないわなァ~?

 虎のを借りたら日本一、いや、世界一、いやいや、全異世界一!

 それがこの鬼龍院きりゅういん日和ひより

 大統領だってぶん殴ってみせらぁ、より大国の支援があったらな!


「え、えーと――取り敢えず、塾生諸君は起立してください……」


 おい、女史マム

 いや、先生さぁ~?

 完全、最初のキャラ、忘れちゃってんじゃん。つーか、テンションだだ下がりやん。

 よっぽど、御石様おいしさまブッ壊れたこと、ショックだったんかな?

 まぁ、悪いことしたな~くらいは思ってるけど、もう、証拠もねーし、かんけーあらへん♪

 あ!

 しのびっ娘にはバレちまっとるよーだが、かなりの不思議ちゃん系なので然程さほど問題にはなるまい。


「お、御石様による英雄適正診断の結果を発表して行きますので――呼ばれた順に、左前、窓際の一番前の席から横へと移動しながら……座っていってください」


 ん?

 席順がこれで変わるのか?

 よっしゃ!

 これで、一番前の廊下側っつーロクでもない席から離れられるぞ!

 さ~て――

 ――俺の席は、どこになるのか、なァ~~~???


 ……

 …………

 ………………

 ……………………

 …………………………

 ……――呼ばれん!

 全然、呼ばれん! どんだけ、呼ばれないねん!

 いつまで、待たせんのじゃ!


「……――ローリーくん……、以上となります」


 ――って、最後かい!

 一番後ろになったんはラッキーだが、やっぱ廊下側かい!

 なんで、一番後ろの窓側、主人公席ちゃうねん!

 俺、主人公やろがい!

 少なくとも、ぶっ殺されて、生き返って、異世界に飛ばされて、ここへ来たってのは俺の人生やろ!

 なぜ、廊下側!

 窓側がいい!


 いや、――

 ――待てよ?

 これからこの学校に通い、最低でも一年間はこの教室で過ごす訳だよな?

 まぁ、どっかしらで席の交代はあったとしても、何度も通学していたら、当然、遅刻する事も考えられる。

 遅刻した場合を想定するに、この一番後ろの廊下側、ってのは都合がいいんじゃないか?

 後ろの扉から静かに潜入し、しれ~っと席に座っちまえば、意外とバレない可能性も濃厚。

 むむむっ!

 もしや、これはラッキーだったのでは!?

 ふふふっ、さすがはボーナスポイントを全部、幸運にブチ込んだ男。幸運「358」は伊達じゃあない!!

 まぁ、間違えてボーナスP使い切っちっただけだが。


「え~と、――ローリー・ペドリャフカくん」

「! ――は、はい?」


 なに?

 なにごと?

 まさか、バレた!?


「御石様が壊れてしまって、ローリーくんの英雄適正診断ができなかったので、今回は“判定不能アンノウン”になってしまいました。ですので、これからの授業やテストなどを通し、その適性度を見て参りますので、覚えておいて下さいね」

「……はい」


 ば、バレてなかった。

 正直、まともに判定され、妙な診断下されるより、判定不能となって、診断が先延ばしされたほうが都合が良かった。

 なにせ、この世界に馴染む時間が欲しいんだよ、俺は!


「先生!」

「はい、なんでしょう?」


 ぬっ!

 あのイジメっこ、発言するつもりか!?


「入塾初日に恐縮ですが、魔斗決闘ダースデュエルの許可をもらいたいのですが」

「ええっ!? いきなりですか!」

「そこの、判定不能アンノウンのローリー・ペドリャフカ君との魔斗決闘を希望します」

「構いませんけど、両者ともに立ち会いが一人ずつは必要ですよ?」

「立ち会い?」


 おおッ!

 立ち会いが一人必要なんか!

 アイツぅ~、大見得おおみえ切って、独りできな、とか云っとったのに!

 ぷぷっ、ぷぷぷぅ~♪


「立ち会い、大丈夫です!」

「そ、そう……では、いつ魔斗決闘を行う予定です?」

「今日! このホームルームが終わった帰宅時」

「ええッ! はっ、早い!」


 ダメだ!

 断るんだ、先生!

 んな、入塾早々、喧嘩みてーなことするバカ、おりゃんせんて、普通。

 だろッ、せーんせいッ!


「分かりました、いいでしょう!」


 うっそーーーん!!!

 なんでやッ!

 てきとー過ぎんだろ、せんせー!

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