18:奥歯ガタガタ

 しまったァーッ!

 不思議ちゃん系ロリっ忍者の相手に気を取られ、イジメっこが近づく気配に気づけなかった!

 このワイ気取けどらせず背後を取るとは……

 やるやないけ!


 どうするぅ~?

 ダッシュして逃げてーけど、教室で待ってなきゃだし。

 戦闘力、段違いだんちだし。

 ドッドッドッ、ドクドクドクドク……

 こ、鼓動が早く、難易度高めのリズゲー並のBPMを刻む――

 ――ドクッ、ドック、ドッく、ドッくん、ドッっくん、ドッっっくん……

 あ、あれ? あらら?

 おかしい。

 妙に、妙に、……落ち着きを取り戻したぞ?


 あっ!

 ユニークスキル<怖れ知らずドレッドノート>が働いている。

 これって、パッシブスキルだったんかい!?

 ま、いっか。

 落ち着きを取り戻してんなら、いいぜ!

 あんま、こーゆーヤツを調子に乗せちまうと、後々面倒だからな。

 得意の、かましてやんぜ!


「あんま気安く俺の名を呼んでんじゃねーぞ……」


 アレ?

 コイツの名前、なんつ~んだ?

 ローリーの記憶を探る――いやッ!

 探る必要はねぇー!

 こんなクソザコモブ野郎ヤローの名前なんざ、思い出す必要も、覚えておく必要もねぇ!


「……随分ずいぶんとナメた口くじゃね~か、ローリーちゃんよぉ~?」

「おいッ、おどれぇ~、“さま”をつけろよ、クソザコモブ野郎!」

「!? な、なんだとォ!」

「ダレがローリーちゃんや! ローリーちゃん様と呼びさらせッ!」

「――けっ」


 ふふふっ、どやッ?

 俺の勢いに気圧けおされたやろ、このガキがッ!

 おまえ、ローリーの中身、アラサーのおっさんやぞ!

 この鬼龍院きりゅういん日和ひより、ちょっと前まで中学生ちゅーぼーだった小僧こぞうっ子におくするこたぁ~ねーんだよ!

 なまじっか戦闘力とか見ちまったから軽くビビッちまったが、本来の俺は、女子供に滅法めっぽう強い!

 強いヤツには下手したてに、弱いヤツにはチョーォ~上から!

 ザ・きったない大人こと、鬼龍院日和をナメんな!


 ――この鬼龍院日和、女子供に容赦せん!


「てめぇ~、ふざけんなよ、おかま野郎ォ!」


 ぐいっ――

 痛ッ、いたたたたたたッ!

 ほっぺをつねられ、ひねり上げられた。

 こ、こいつぅ~!

 マジ、なんなん!?

 なんで、すぐ手ェ~出すん?

 頭、おかしーんか?

 そっこー、暴力に訴えるとか、頭、涌いとんのとちゃう?


 いてぇー!

 今度は耳をつままれ、顔を近づける。

 小声でそいつが息巻く。


「おい、ローリーちゃん! 教師せんせー戻ったら魔斗決闘ダースデュエルの許可もらうからよォ~? 学校ガッコー終わったら裏庭にまで独りできな!」

「――……」


 ――コクコク。

 小さくうなずく。

 い、いや、……

 その、ほらッ!

 ダースデュエルってのが何なのか分からんけど、……まぁ、イヤな予感しかしねーけどさ?

 こいつ、すぐ暴力振るうから、ここは承諾したフリしとくのが一番なのよッ。


「おーい! お~い、そこのヤカラァ~。あんま、おやかたイジメとると、あた……拙者せっしゃがおぬしシメたる……ぞ」


 ひぇッ!

 怒子神ぬこがみさん、怒子神禰蠱子ねねこさん?

 挑発すんの、ヤメて、マジで。

 ほらっ、コイツ、手が早いからッ!


「――なんだ、このチビ女? ぶん殴られてーのか!」

「おぬしぃ~、あたしのこと、完全になめとる……ね? 尻穴アナルから手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ云わせたるの」


 わわッ!

 なんちゅー、お下品なこと云うとんのよ、この忍者っ娘!

 あおんなや!

 少しは忍べよ、しのびっ娘ォー!


 ハッ!

 こ、コレ、もしかして、ユニークスキル<庇護アサイラム>の効果じゃねーだろうな?

 もしかして、これも……パッシブスキルだったんか~い!

 マズい、マズマズですよぉ~、コレは。

 放課後どころか、今、始まってしまいますよォ~、喧嘩がッ!!?


 ――ガラッ!

 おっ!?

 引き戸が開き、中に入ってくるもの……


「お、――お待たせしましたぁ……」


 おおっ、女教師せんせい

 待ってたぜ、せんせーーい!

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