16:吸血ニンジャ

「ねぇ、おぬしぃ~」


 ――ん?

 なんか、声が聞こえたような。

 辺りを見回す。

 いや、俺、独りぼっち


 他の生徒れんちゅうどもは親交を深めるべく、よろしくやってるようだが、何せ俺は、俺自身を把握しきれてねぇー!

 果たして俺は今、鬼龍院きりゅういん日和ひよりなのか、しゅん画太郎がたろうなのか、島風ドグラマグラなのか、ペド顔ダブルピースことペドマンガ先生なのか、それとも、ローリー・ペドリャフカなのか、まるで分からん状態。

 ――いや、ローリー以外は全部俺か。

 俺なのか、それとも、ローリーなのかよく分からん、ふわふわした状態。

 こんなアブネェー状態で、他の生徒と仲良くなっちまったら、後が大変だ。


「ねぇねぇ、お主、おぬしぃ~~」


 あッ……

 今、ハッキリ聞こえちまった。

 いや、まぁ、さっきも聞こえてはいたんだが、気のせい、ってことでスルーしたったろ、とか思ってたんだが、まさか、食い下がってくるとは――

 よし!

 ここは折角せっかく手に入れた俺だけのユニークスキル<辛抱強さペイシェンス>を使って耐えてみるか。

 スルーし続けりゃ、諦めるだろ、声のぬしも。


「ねぇねぇねぇ、お主、そこのお主ぃ~、おぬしぃ~~~」


 ……――ふふっ。

 余裕――

 凄いぞ、ユニークスキル!

 全然、気にならんぞ、こんなにハッキリと俺へ呼び掛けている者が近くにいると云うのに。


「ねぇねぇねぇねぇ~、お主、おぬしっ、ねぇねぇ、お主ぃ~、そこのおぬしぃ~~~、ねぇねぇねぇ」


 しつけぇ~~~!

 いや、ペイシェンス使ってるから全然耐えられんだけど、これ、大分だいぶしつこくねーか?

 ユニークスキル使ってなきゃ、確実に反応リアクションしちまってんよ。


「ねぇ、お主ぃ~、ガン無視してると御首級頂戴クリティカルヒットしちゃう……ぞ」


 ……――ペイシェンスの効果は効いている。

 全然、耐えられる。このまま、スルー可!

 ……しかし、

 この――

 ど真ん中ストライクである!!!

 小さい、それすなわち、可愛きゃわいい!

 きゃわいい、それすなわち、小さい。

 小さいことはスモーラー・イズいいことだ・スマーター


「……えーと、――どちら様ですか?」

「あたし、……間違えたの。拙者せっしゃ怒子神ぬこがみ禰蠱子ねここ。吸血ニンジャだよ、ニンニン」


 こ、これは――

 痛いコ、きたッ!

 や、ヤバい。あんま関わっちゃイケない、と俺の漫画家としてのかんが訴えている。あんま当たった試しないけど。

 見た目はちっちゃきゃわいくて、どストライクなんだが、この感情の起伏のなさ、抑揚のない口調に無表情、フガフガ臭う、ヤバみが。


「え、えーと……そのぉ~、吸血ニンジャさんが、どーして俺に?」

「おぬし、――あの御石様おいしさま触る時……左手になにか持っていたの……ね?」


 ――ハッ!?

 ば、バレてる……

 ま、マズい――

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