14:同意します

―――――



 1-Aの教室。

 校庭から戻った生徒達は、教室で思い思いの様子で女教師せんせいが来るのを待っていた。

 俺は例のイジメっこアイツから一番離れた席に座った。まだ、自分の席が定まったわけじゃないから、適当に座る。

 その場所は、教壇から見て左手前。教室全体からしたら右前。出入口近く、一番前。


 おいッ!

 なんちゅー席に座っちまったんだよ、俺!

 ふつー、主人公って、窓側の席だろ! しかも、一番後ろ! 左後ろ、教室の左後ろ、窓側後方って相場が決まってんだろ!

 なのにッ!

 くっそー、イジメっこアイツがその主人公席付近に陣取っちまってっから、とんでもねーモブ席に座る羽目はめになっちまったやないか!


 まあ、これも仕方ない。

 俺が驚異的に“弱い”のが悪い。

 ――っとによぉ~?

 普通さぁ?

 転生したら、強くなるんじゃないのォ?

 なんで、入学、っつか入塾早々、イジメっこにおびえにゃアカンのよ、俺は……


 んで、どーなってんのよ、レベルはさぁ?

 学内に一歩踏み入れてレベルアップ、入塾式終わってレベルアップ、って軽快にレベルアップしとったやろ?

 その後、音沙汰なしやんけ!

 ホント、ガバガバ過ぎんだよ、異世界!


 取り敢えず、なんも分からんから魔王辞典ペドペディアを開いてみる。


 ――なんじゃコリャ!?


〔プッシュつうちをおんにしますか?

 ○ どういします ● いえ、いまはいいです〕


 なんだよッ!

 プッシュ通知機能、オンになってねーじゃねぇ~か!

 いっちょまえに、ユーザーワイに確認してんじゃねーよ!

 なんで紙媒体のクセに、同意求めとんねん!

 丁寧か! おまえはユーザーフレンドリーなんか!

 めんどくせーな~、そら、ポチッとな。


〔● どういします ○ いえ、いまはいいです〕


 これで、よし!


 ―みょこん!

 ん?

 みょこっ、みょこん、みょこッ、みょここ、みょこん!

 うわっ!?

 すっげー、いっぱい、通知きてるんですけどォー!?

 どれ、どんな通知きてんだ?


<【ローソン】

 バカンス気分スイーツ、新発売!>


 なんで、ローソンやねん!

 ここ、異世界やろがい!

 バカンス気分ってなんじゃ! 異世界に来とる時点で、そんじょそこらのヤツより、よっぽど俺はバカンス気分じゃい! Go ToよりGo Toじゃい!

 そもそもなんで、ローソンからの通知、入っとんねん!

 えっ? えっ?

 もしかして、ローソンあんの?

 つーか、Wi-Fi受信してんの?

 Wi-Fiがあんのか? いや、そもそもフリーWi-Fiがどっかにあんの?


 ンなワケ、ないやろがいッ!


 なんか、混線してんじゃねーか、コレ?

 変な電波、拾ってんじゃねーだろ~なァー??

 おまえ、そもそも俺自身が毒電波発信中でお馴染みなんだから、これ以上、外からヤバげな電波なんぞ、受信したくないわい!


 タララッタッタッタ~ン!

 タララッタッタッタ~ン!

 タララッタッタッタ~ン!

 タララッタッタッタ~ン!

 タララッタッタッタ~ン!

 タララッタッタッタ~ン!

 タララッタッタッタ~ン!

 タララッタッタッタ~ン!


 うッ、うるさッッッ!!!

 な、なんだよ、この着信音地獄は!?

 なにが、なにが起こったんだよ!


<きりゅういんひよりはれべるが1あがった>

<きりゅういんひよりはれべるが1あがった>

<きりゅういんひよりはれべるが1あがった>

<きりゅういんひよりはれべるが1あがった>

<きりゅういんひよりはれべるが1あがった>

<きりゅういんひよりはれべるが1あがった>

<きりゅういんひよりはれべるが1あがった>

<きりゅういんひよりはれべるが1あがった>


 し、……しつけぇ~~~!!!

 しつこいわッ!

 頼むから、まとめてくれ!


 ちょっと~、異世界の運営さんよぉ~?

 もーちょっと、使い易いよーに改善してくれよ!

 これじゃ~、課金する気が起きねーよ!


 ま、金、ねぇーけどなァ!

 ぶわぁーはっはっはっはーっ!

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