11:ミカエレ・“ソード”・カエサリオ

「入塾した塾生同士の魔斗決闘ダースデュエルは学園の承認がなければできないぞ」

「だ、誰だ!」

「承認なき私闘であれば、代わりにわたしが闘かおう」

「引っ込んで――げぇッ!? て、てめぇーは……ミ、ミカエレ」

「このミカエレ・“ソード”・カエサリオがお相手しよう」


 だれよ、この!?

 り、凜々りりしい!

 んでもって、すっごく綺麗!

 俺より背も高い。スレンダーで身のこなしも美しい!

 一目惚ひとめぼれ――

 ――もし、

 もし、俺じゃなかったら、一目惚れしちゃうトコだね。

 ちょっと俺からすると、。ボール1つ分、ボール……

 そう、俺のストライクゾーンはなのだ!


 教室内から女性の声が、

「後ろのドアの処にいる新入生達、早く席につきなさい」


「――……チッ、またあとだ」


 ふて腐れた様子でそのイジメっこは教室に入る。


「わたし達も入りましょう」


 スレンダー美人の彼女の声に従い、俺も室内へ。

 ほ~う。

 おるな、おるな、しょーもない連中せいとが大勢。

 ひー、ふー、みー、よー、いー……むぅ~、多い! 多いんじゃ!

 1クラス、50人以上おるんか?

 多過ぎやしねーか?

 こんな多くて、まともに教えられんのか?

 まったく、教育ってもんをめとんな!

 ま、俺、中卒だけど! いや、高卒なんだが、通信制故、高校よく分からん!

 つーか、そもそも、異世界の学園とか、わけわからん!


 教壇に立つのは、女性教師。

 三角形に尖った眼鏡をかけている。

 この手のメガネをかける者は、明らかに意識している。

 上から目線でナメられないよう、デキる女を演出、そう意識している。

 もしくは、ドSのどっちかだ!

 絵描きの観察眼はダテじゃない!

 よく、間違うが!


「新入生諸君、入塾おめでとう! ようこそ、この地獄の学園生活へ」


 えっ?

 いきなり、そんな感じですかぁ?


「まず、新入生諸君にやってもらうことは、自己紹介だの塾生同士の交友などでは~、断じてぇ~ないッ!」


 ――お、おう……


「諸君らにはまず、英雄適正診断を受けてもらう! 英雄科にふさわしくない塾生は容赦なく退塾してもらうので、そのつもりでなッ!」


 えーっ!?

 入学試験っちゅーか、入塾試験っての、ローリーの記憶では受験したことになってんだけどな?

 しかも、それを合格したから入塾したんだよな?

 似たようなことを入塾式当日にまたやんのか?

 どーゆーこっちゃ?


「先生!」

「発言を許可した覚えはないッ! ――と云いたい処だが、説明前だったので発言を許す! なんだ?」


 おっ!

 さっきのコ。俺を助けてくれた娘じゃねーか。

 すげーな?

 よく、こんな状況下で質問とかできるな?

 なに喰ってきたら、こんなに豪胆になれるんだ?


「わたし達は入試を受験し、合格してきた者達です。だと云うのに、殊更ことさら別途試験のようなものをさせ、あまつさえその出来如何できいかんでは退塾も有り得る、とはどのようなお考えからなのでしょうか?」

「――うむ、」


 うわ~、随分としっかりしたお嬢さんだ、この

 俺が思っていた疑問、っつーか、恐らく、ここに多くの子らが思っている疑問を、率直にぶつけとる。

 こりゃ、助かるわ~。

 このコは、よき。


「英雄適正診断を受けてもらう理由は、諸君ら塾生の出来不出来、高低を確かめるため――出来の良い者と不出来な者とを見分け、区分するため! いやッ! 差別するため!」

「さ、差別……」


 ええーッ!

 マジか!

 元の世界と違って、こっちの世界、いろんな種族しゅぞくおるはずやろ?

 なのに、サラッと云いよった……

 異世界って、マジ、ぱねーな!!


「――わたくし差別主義者レイシストなのだわ!」


 なのだわ、って!

 や、ヤバイ――

 こ、この教師、

 バブみが、いや、バブみじゃなく、

 ――ヤバみがしゅごい……

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