10:ランウェイで笑たろか

 ローリーアイツを前の学校でイジメてたヤツか……

 よろしい、ならば、戦争けんかだ!

 ローリーオマエの代わりに俺がイジメっこコイツをブチのめしたるわッ!


 まずはこの野郎コイツの戦闘力を確かめておくか。

 確か、<解析アナリシス>って魔術があったはず。消費魔力は「2」か、問題ない。

 そりゃ!


<戦闘力:38>


 ――あっ!

 ダメ、だ!

 俺、勝てないわ――


 俺、戦闘力「3」しかねーわ。

 逆立ちしても勝てねーわ。

 参ったな。

 うーん……


 ――閃いたッ!


 この鬼龍院きりゅういん日和ひよりド畜生てんさいである!

 真正面から挑むなんざ、アホの所業。賢い俺はからめ手で攻める!

 まずは、トイレだ!

 トイレに逃げ込む!

 そりゃ!


 むっ!

 追ってこねーな?

 よっしゃ、それでいい。

 さぁ、トイレに駆け込んで、大用、すなわち、個室に入る!

 そして、ここからが勝負だ!

 俺のジョブ、召喚師としての能力を遺憾なく発揮する。


 魔王辞典ペドペディアによると俺の召喚には三種類の方法がある。

 一つは、絵を描き、その描いたものを召喚する方法。

 二つ目が、テキストを書いて言霊ことだまを吹き込み、文章を具現化する召喚法。

 三つ目が、俺が見知った物体を空間をブチ抜いて召喚する方法。


 今回使う召喚は三つ目。

 ローリーアイツの実家の部屋からこの学校の女子用制服を召喚する。ついでに、メイク道具とウィッグもだ。

 よし、取り寄せたぞ、アイテムを!


 ここからが本領発揮!

 女装家コラムニスト、島風ドグラマグラこと鬼龍院日和の独壇場!

 男から女に化けるメイクアップ!

 ただ、女っぽくなるメイクじゃあ~ない!

 かわいく、圧倒的、息を飲む程、きゃわいく変身するだァッ!

 せいッ! そりゃッ! うりゃッ! どりゃッ!

 ふぅ~……


 ――完成!

 性別不詳、いな、性別:俺、女以上俺未満、男ののメイクアップ!

 ローリー・ペドリャフカ改めローリン・ペドリャフカ!

 ワイド変態せいそですわよ!

 どやッ!


 鏡で確認。

 ふふっ。

 ふふふっ、ふははっ、ふぁーっはっはっはっはーっ!

 パーフェクツ!

 さすがは俺!

 どっからどーみても、お・ん・な・の・こ♪

 元々、ローリーアイツツラが中性的ってのもあるが、こうも美しく化けるとは、やはり俺、天才!

 クククッ。

 これなら、この女装姿かんぜんたいでなら、イジメっこヤツを出し抜ける!


 トイレから出て、颯爽さっそうと歩む。

 まるで、モデルのように。

 ランウェイを歩くように。

 ランウェイで笑ったろ!


 フン、フンッ!

 大股で歩く。

 間もなく、俺の教室。

 イジメっこアイツ、おるな?

 しかし、俺に、ローリーに気づいてない。

 クックックッ。

 このまま、ヤツの脇を素通りし、教室に入り、比較的遠い分かりづらい席についてしまいだ!


 ――バン!

 うおっ!

 いきなり、目の前に腕が。

 引き戸の柱に腕が伸び、俺を制止する。

 なにごとッ!?


「よう、ローリー!」


 なっ、なん……だと……

 お、俺の、この完璧な女装が――

 ――バレている……だとッ!!?


「やっぱ、さっきのは見間違いじゃなかったか。男装よりも女装のほうが、ローリーちゃんには似合ってんだよ、はっはっはっ」


 う、迂闊うかつ

 そう云や、ローリーのヤツ、この学校への入学前まで、女装で過ごしてたんだっけか?

 さすがに長年、ローリーの女装を見てきたヤツをくには、もっと化ける必要があったか。

 くっそ! 微妙にナチュラル感を意識しちまったせいで、ちょっとかわいいコくれ~に仕上げちまった!

 もっとガッツリ、コスプレちっくに大化けしときゃ良かった!


 こうなったら――

 無視して、室内へGo!


「おいッ! 無視すんな、コラッ!」


 ガッ!

 痛ーッ!!!

 えっ!?

 ええーッ!!?

 こ、こいつぅ~、ぐーで殴った!?

 うっそ~ん!

 いきなり、グーで殴るか、ふつー?

 やべーよ、コイツ!

 かーなーりー、イッちゃってんぞ、マジで!


「待て、そこのおまえ!」


 えっ!?

 だ、だれっ!!?

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