6:学園地獄
――――――― 2 ―――――――
世界は学力の炎に包まれた!
海は枯れ、地は裂け、あらゆる
しかし、学園は死滅していなかった!
ようこそ、この狂った
大陸は十三学区からなる
時には
―――――
――第十三学区。
俺の名は、ローリー・ペドリャフカ。
しがない没落貴族ペドリャフカ家の長子として育ち、平凡な暮らしをしていた。
お金はなかったが清廉潔白な両親に育てられ、学業に
王立の
この学校の卒業生は各国への仕官が約束されている。
騎士団への入団や官僚としての
しかし、それだけに卒業への道は厳しい。
家族は喜んでくれたが――
実は、
――俺には心配事が二つある。
一つは、幼少期からではあるが、特に最近、俺に語りかけてくる心の声がよく聞こえてくる。
風邪をひいた時、弱っている時、困っている時……精神的にまいっている時、この心の中の声がよく聞こえる。
俺はこの心の声を“
――いや、
幼い日、誰かに話したような気もしたけど、
もう忘れてしまった。
二つ目は、
第十三学区だけの話ではないが、貴族の間では幼少期の男児は異性装、つまり、女装をさせられ、女児として扱われる。
これは文化的・宗教的な理由がある。
貴族の男児はやがて、家督を継ぐ。貴族は権力闘争に巻き込まれることが
これを回避するため、貴族の息子たちは幼少期女児として育てられ、成長した折、男子として“お披露目”される。
有力貴族であれば尋常小学校入学前、中堅貴族であれば尋常小学校中頃、弱小貴族であれば尋常高等小学校卒業まで、女児として育てられる。
もちろん、文化的・風習的に広く知られたことなので、家督相続者の安全を守るという効果については形骸化されてはいるが、その慣例はいまだに残っている。
本来、遅くとも尋常高等小学校卒業時点でお披露目されるべき状況なのだが、没落貴族であるペドリャフカ家には、何せお金がない。
お披露目ができない状況で、春からの進学。
果たして、男子として通うべきなのか、女子として通うべきなのか?
取り敢えず両親は、男子用・女子用の制服を用意し、俺に選択するよう促した。
――そして、
明確な答えを出せないまま、
入学、いや、入塾の日を迎えた――
俺は、一歩一歩力強く歩を進めた。
未来が約束された我立羅漢英雄塾。
その巨大な黒き校門“
俺は、――
男子の制服を身にまとい、
――校門の前に立った。
「どいて、どいてーっ!」
――ドン!
ぐえっ――
背後に強烈な衝撃。
死角から衝突は予想外。
不意に襲った背中への痛打に伴い、ノックバック。前のめりになって転倒し、地面にしこたま頭を打ち付ける。
「ゴメン、ごめ~ん! 急いでたから! 今度、お詫びするねぇ~」
パンを
なんて――
なんて、危ないヤツなんだ!
お前は
道交法、守れ! 免許、返納しろ! 前見て走れ! 飯は座って食え!
あと、ちゃんと謝れ!!!
まったく、しょーもない!
コレだから、最近の若者は……
――ハッ!
アレ?
ここはいったい?
俺はいったい?
なんだ、ココは!
おい!
どーなってんだよ、幼女神!!!
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