第8話 予想外の結末

 まさに牛歩といったスピードではあるが、少しずつ前に進む。

 当然ながら体の近くにもハチはたかってくるが、風魔法で回りに膜のようなものをまとわせることで刺されることは防止している。

 

 刺されても痛いだけで実害はないだろうけど、毒でも持たれてると困るしなぁ。

 敵が自身に集中している隙に猫を進ませようとするが、敵もさるもの。なかなか思うようには進めない。


 …こっちを映してるっぽいテレビを気にしなくていいならもう少し楽に進めるとは思うんだが。

 

 ダンマスの大体の場所はわかるが、まだ敵ダンジョンにもたどり着いてはいない。

 この調子だとだいぶかかるな。


 …やはり早い段階でDP回収に走ったのは間違いじゃなかったな。正直、溜まるたびに使用している現状には不満もあるが、収入があるおかげで対策も打てるわけで。


 風魔法をさらに強化する。

 一時的に強風が吹く、程度なら自然現象としてありえることだろう。


 正直、処理しなければならないのはこのハチだけじゃないんだ。

 ネットなどを見る限り熊だったり、イノシシだったり、さまざまな動物が日本各地で暴れているわけで、正直さっさと退治して次に行きたいのが本音ではある。

 

 いやまぁ、正直なところ、ここは完全放置でもいいんじゃね?と思わないわけでもない。別にここでハチが大量発生しても個人的に何かが困るわけではないし、現状ハチは人に積極的に危害を出しているわけでもない訳で。

 まあ、牧場は倒産しかねないが。


 ただまあ、そういうことを思うとですね、ふっとの姿が脳裏をちらつくわけですよ。


 …思ってみただけですよ?

 さっさと退治しますというか、させていただきます。

 …すっと姿が脳裏から消える。


 ふう…この状態で放置という選択はないよなぁ。

 正直、生産与奪の権利は奪われてるしな。


 ただまあ、無理なことを言われているわけではないとは思っている。

 先ほどのハクビシンらしきダンマスは放置しているが、そういった事には何の警告もないし、このハチもさっさと退治しろと言ってくるわけではない。退治が難しいようであれば後回しにしても文句は言われないだろう。


 後回しにするのと完全に放置して何もしないというのは全く別の話だ、というだけの話だろう。

 放置してたら間違いなく牧場は倒産しそうだし、そういった事を無視して自身には影響ないから放置、という態度は良くない、という警告に過ぎないと考えてはいる。


 まぁ、正直上司に常にみられているようでやり難いことは確かではあるが。


 魔力をためて、強風を吹かせる。

 随分と正面がすっきりしたな。


 すぐにこちらに向かってくるが、再度の強風で散らす。

 こちらに戻ってくる前に敵ダンジョンまでは到着できた。


 敵ダンジョンに足を踏み入れた瞬間、一瞬だけ軽い頭痛と、悪寒のようなものが走る。


 次の瞬間だった。

 敵ダンジョンはなくなっていた。

 

 わかりやすく言うと、自身のダンジョンになっていた。

 ハチはすべて指揮下に入っており、ダンマスと思われる女王蜂にも指揮権のある状態になっている。


 …どうなってんの、これ?

 正直ダンマスのシステムをもう少し説明してほしいんですが、だれか説明していただけませんかねぇ。

 そんなことができるといった知識は自身の中には存在しないんですけど?

 

 ハトはまだ、降伏してきたからわからない訳でもない。

 まぁ、降伏というシステムが存在することも知らなかったわけではあるが。


 ハチに至っては自身でダンジョンに入っただけだよ?

 それで支配下にできるってどういうこと?

 というか、出来るのと出来ないのの差ってなんだよ。


 ただ、心当たりがないわけでもない。

 ネズミは猫で退治していて、自身ではダンジョンによりついてもいない。

 ハトは自ダンジョンが隣接していた。


 ハクビシンと思われるダンマスはダンジョン近くまで行ったが、ダンジョンには踏み込んでいない。

 踏み込んだのは猫だけだ。


 敵ダンジョンに自ダンジョンが隣接した時点か、ダンマス自身が踏み込んだ時点で何らかの判定がある?のか?

 しかし、ここまで問答無用だと逆に怖いな。

 敵から一方的に制圧される可能性を考えなきゃならなくなる。

 判定内容も勝利する方法もわからないしな。

 

 とはいえ、これどうするかねぇ。

 部下ハチの数減らしていったんこの牧場で生活してもらうのがいいとは思うんだけども、それはどうも女王バチさんが嫌らしい。

 

 うん、なぜか意識みたいなのは急に理解できるようになりましたよ?

 ホント、急すぎて何が何やらわかりませんが。


 ハトさんは上野公園の部下ハトをやや気にはしているものの、現状には不満はない模様。猫は少し空腹気味の模様。この後すぐにキャットフード買ってあげよう。


 花さえあれば移動してもいいらしいけど、そんなに長距離はむずかしいんだろうなぁ。ただまあ、このハチ優秀と言えば優秀で、花からハチミツをとっているあいだは緩やかにDPを取得できるらしい。

 獲得したDPはすべて働きバチに投資してたようだ。


 DPの取得効率次第じゃ強敵になりえた相手と言えるなぁ。

 これ、放置してたらまずかったかも。


 正直電車の収入とハチの収入と区別つかないから、どの程度の収入かはよくわからないけど、収入口が増えそうなのはありがたい。


 とりあえずハチの数は現状維持で、移動してもらうか。

 移動先はもう、自身のダンジョン領域を作るしかないだろうなぁ。

 自身のダンジョンに追加する形にはなるが、コストはさほど必要なく、ある程度は作りたいものが作れるみたいで、作った後で場所移動もできるようだし。


 いわゆる森ダンジョンみたいなのをイメージして、地下ダンジョンとして生成、この牧場の自ダンジョンにした建物の地下にDPを支払って空間を作り、そこからからつながるようにする。


 支払うコストで大きさは調整できるらしい。

 とはいえ、現状だと1000程度しか使えないんだけども。

 あとから追加コストを支払えばさらに大きくできるようだし、一旦はこれで作っておこう。これでも1キロ四方のサイズになるのか。


 ただ、実際の面積を使うわけではなく、いわゆる仮想空間的な感じにはなるようだが。そのうちの半分程度は花エリアにしておけば当面はいいだろう。


 いきなり急に消えるのもそれはそれで問題がありそうだが、基本ハチは夜行性じゃないはずだし、緩やかに巣に戻ると見せかけてダンジョンに移動してもらうか。


 掃除機がいっぱいになって動かなくなった態でいったん花畑から離れ、奥にある大きな建物に移動する。移動していると当然だが、TVクルーのいる場所から死角になる場所というところがある。さすがに監視カメラはなさそうだし、そこで転移しよう。


 転移先には一度猫に移動してもらい、だれもいないことは確認する。

 悩んだけど、ぱっと移動しても問題ない場所が思いつかなかったため、いったん自社ビルのWCに戻ることにする。


 自身の転移はできるのはありがたいが、人と出くわしたりといったことを考慮すると誰からも見られない移動先ってのは別に必要だなぁ…。


 これは検討要だな。

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