痛覚と世界説明
「それとこれがお金」
金袋につまれた銀貨が渡された。ミナトは直ぐにカバンに収納した。
「5000リルね。10リルくらいで可愛いモノやお菓子が買えるから」
例えが曖昧で分からない。そこらへんはゲームをプレイしていれば分かるか。
「そのお金が無くなる前に稼いでね。意外とQWはお金を使うから。それと初心者を狙った窃盗にも注意。運営はこれ以上の金銭的支援はしないから」
計画的に使えって事だ。割と現実味がある。それと、窃盗についてこれだけ口酸っぱく言われるという事はよっぽど被害が多いといえる。
「じゃあ最後に痛覚の……」
痛覚の表示をオンにするかモモシュシュが言おうとすると、
「ありでお願いします」
すぐさまミナトは答える。
「そうだよね、なしだよね……えっ、痛いよ~。モンスターに食べられたら凄く。そのまま精神的なダメージになってゲームができなくなった人もいるし、本当に大丈夫?」
今まで半開きの目が一気に見開きモモシュシュは意外だと驚きの顔をみせた。
「大丈夫、ほとんどのプレイヤーは痛覚なしでプレイしているよ。本当に痛いし」
それでもミナトは変える気はなく、真っすぐモモシュシュを見つめていた。どうやら本気で痛覚ありでプレイするようだ。
「参考までに聞くけどどうして」
「だって、この世界はゲームであって本当に実在している世界でしょ。なら俺たちはユニットを使い生きている。痛覚があって当然じゃないですか」
当たり前のようにミナトは答えた。モモシュシュは考え事をするように数秒だけ固まったが元のけだるげなまなざしに戻る。
「…………そう、この世界を世界と認識している君ならあの子を……」
そして、モモシュシュはミナトには聞こえない程度の小声でぶつぶつと独り言を言った。
「ん、何か言いました」
「いいや、ありがとう。痛覚をオンに」
モモシュシュはなぜだが分からないがミナトにお礼を言うと痛覚のボタンを入れた。
痛覚をオンにしたことによって肌に伝わる感触が現実のものとまったく変わらないものとなった。
血管が脈をうって血流を感じる。〈QuantumWorld〉で生きている実感が沸いてくる。
「すげぇ、こんなにもリアルなのか」
目を輝かせ両手をじっくりと眺める。もう驚き通り越して感動さえ覚える。
「今なら元に戻せるけど、その心配はないみたいね」
腕をつねってみるとそれ相応の痛みがきた。
「設定も終わった事だしこのゲームについて少しだけ説明しようか」
モモシュシュは地図スクロールを広げた。地図の画面は見慣れたものだ。
「東京の詳細な地図と変わらないんですね」
「そりゃそうだよ。じゃないとARゲームにならないでしょ」
「あっ、そうですよね」
「ウェイブがダイブしている場所はここね。まあスポットはどこにでも設置されているからいいよね。そこがこの世界の街だと考えてもらっていいよ。そしてそれ以外の場所がモンスターの蔓延るダンジョンとかになっている」
スポットをファンタジー世界での街で道路や施設がダンジョンという仕組みにQWはなっているようだ。
「で、僕らはそこで何をすればいいんですか。ゲームというからには何か目的はあるんですよね」
ソーシャルゲームでも一応ストーリーがあり、その設定の上でゲームをしている。〈QuantumWorld〉もそうなのだろうとミナト尋ねた
「自由~」
と返させた。
「この世界にはRPGのような物語はありません~」
「自由って何でもありって事ですか」
「うん。そう考えていいよ。魔王になるのも英雄になるのも、行商やるのもウェイブ次第。何をしたっていい。ここは可能性の世界なんだから」
「可能性……」
「まあ基本的にはクエストやミッションに参加して強くなるのが一般的、あとチームを作ってランク戦とかダンジョンに何年も入り込むプレイヤーもいる」
どうやらなんだってありの異世界のような設定らしい。その分やりこみ要素はたくさんあるとみえる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます