第4話 黒い封筒 4

「思ったよりも落ち着いてたな、東堂のやつ」


「えぇ。でも竜也くんの声を聞いた時、やっぱり少しうろたえていたわよ。」


「そうだったか?さすがは看護師の卵、観察力が違うね。」


裕二と陽菜が今の電話を振り返り、興奮気味に話している。


「とりあえず第一歩は成功だな。」


「でも、竜也くんが『お兄ちゃんたち』って言っちゃったけど、大丈夫かしら?」


陽菜は心配そうに聞いてくる。


「あぁ、こちらの情報は可能な限り向こうに渡らないようにするのがゲームの鉄則だからな。でも、そんなに問題ないんじゃないかな」


「そうか?俺はあの言葉を聞いたとき、このガキんちょをひっぱたいてやろうかも思ったぞ?」


「大体犯罪なんてのは、十中八九、男が犯人だろ?それに、複数犯での誘拐ってのも、そんなに珍しい話じゃない。女が混じってるってバレたら面倒だったけど」


「まぁ、それもそうか。それよりも、東堂は本当に警察に言わないのか?」


裕二の心配はもっともだ。それに彼には、まだ本当のことは言ってない。


日本の警察は優秀だ。戦後、誘拐事件は288件報告されているが、その内身代金の獲得に成功したのは何件か?を知っているだろうか?

ゼロだ。

身代金の受け渡しという、物理的な接触が必要になるため、マンパワーを活かした警察の網から逃れられない。


ただし、これは警察が操作に介入した場合の話だ。実際には、警察には言わず、身代金を渡して



つまり、警察が動けば俺たちは絶対に捕まる。だからこそ、今回の誘拐は、警察に報告されないことが前提で計画が立てられている。


「あぁ、東堂社長は絶対に警察には言わない。竜也よりも大事な物があるからだ」


「会社か?」


「それも一つ。だけど、それだけじゃない」

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