永遠からの解放⑥
私は全て失ってしまった。
美を失い、若さを失い、それらを回復する術も失ってしまった。
永遠などいうものはなかったのだ。私が手にしたと思っていた永遠はまやかしだったのだ。
これでよかったのかもしれない。
世の理に反し、手に入れた永遠など、決してあの人は喜ばないだろう。
私はある時から分かっていたのかもしれない。
あの人が私の下から離れていったのは、私が美を失ってしまったからではなく、世の理に従い、その天寿を全うしたからなのだと。
でも、私は信じたくなかったのだ。永遠なる美を愛し求めてきたあの人の寿命が有限であるということを。それを認めてしまうと、ただ一人残されて老いていかなければならない私は正気を保てなかっただろう。
私は老いるべきだったのだ。一人残されても緩やかな時間の中で、あの人が眠る霊廟の傍で老いればよかったのだ。そして時としてあの人と過ごした時間を思い出し、懐かしめばよかったのだ。
それこそ記憶という美しき永遠のものではないか。
今更気がついたところで遅かった。
私の肉体は光の中に包まれ、衝撃によって消し飛んだ。
あの人のことを寸時も思い出すことなく、ただ醜く美と永遠を渇望し、得られるままに生命としての活動を停止させた。
報いなのだろう。多くの人間と天使から生命力を奪っていった報いなのだ。
その報いを甘んじて受けなければならない。
もういいんだよ。
意識が消し飛ぶ瞬間、私はそういうあの人の声を聞いたような気がした。
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