永遠の魔女
永遠の魔女①
美しいものは永遠だと言う。
確かに、あの人は私にそう言った。しかし、私にはその意味を深く理解することができなかし、共感することもできなかった。
そもそも、美しいなどという曖昧な価値基準は、人の感性によって異なるもので、あの人にとって美しいと言っているものが、必ずしも私とっても美しいものであるとは限らない。
ましてや永遠という言葉もいかがなものかと思う。仮に万人が美しいと思えるものがあったとしても、人の価値基準など世代によって変わるものであるし、形あるものならいつくは朽ちて果てる。永遠に存在することなど不可能なのだ。
私がそのようなことを言うと、それは小賢しい考え方だよ、とあの人は私を諭した。
美とは感じるもので理屈ではないのだよ、とあの人は手を広げて言った。
美しいものは永遠。いや、美しいからこそ永遠であるべきなのだよ。あの人は大げさな身振り手振りを交えて私に説明をした。
要するに美しいものは永遠というのはあの人の願望だったのだ。
世代超えた普遍的な美などないから永遠であって欲しい。
形あるものはいずれ朽ちるから永遠であって欲しい。
こよなく美を愛したあの人だからこその願望なのだろう。
そうだとすれば、あの人が私から離れていったのは、やはり美が永遠になれなかったからなのだろう。
あの人は、私のことを美しいと言ってくれていた。
あの人は、私のことを愛してくれていていた。
なのに、あの人は私から離れていった。永遠ではなかったから。
美が永遠であれば、あの人は戻ってくるのだろうか?
私はそう信じたい。
だから私は……。
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