第5話 新しい命の価値 ③
僕たちは並んで…いや、僕がリリーネに半ば強引に引っ張られながら劇場へと向かっていた。
ほんとに貴族のお嬢様かよという感じでおてんば娘に見えて仕方ない。
「なぁリリーネ。なんでそんなに落ち着きがないんだよ〜!」
『そうかな?ごめんね諸刃くん…私天界じゃ1人であることも多かったし、純潔の神だから男神と触れ合う機会もなかったから…デートが楽しくて…』
シュンとしてしまって、赤い瞳が揺らぎ出したリリーネの顔を見て僕は…
ギュッ、 テクテク
『…ふぇ?諸刃くん?』
僕はリリーネの手を握り返し劇場へと向かい出した。
歩きながら思った…リリーネも僕と共通点があると…そしてその辛い過去から解放されて今を楽しもうとしているんだ。
それを否定する権利なんて僕にも誰にもない。だから、否定するんじゃなくて僕が協力してかなきゃいけないんだ…
その気持ちが溢れていたのかどうかは分からないが、リリーネが僕の手をさらに強く握り返して『ありがとう』と一言をこぼした。
僕たちは手をつなぎながら街道を突き進んでいく、僕たちが魔人ということもあってかすれ違う人達は、軽く会釈をしてくる。
そこまで上下関係があるのかな?
まぁ気にしないでおこ
劇場に到着してチケットを買おうと並んでいるとお母さんと一緒に来たのだろうか、小さい女の子が僕たちを指差して、
『おねーちゃんたち、可愛い!!』
と言ってきた、
お、おねぇちゃん…!?
僕男の子なんだけど…
僕はすぐさま否定しようとしたのだが…
「ありがとね、私たち可愛い?」
とリリーネがその女の子に乗っかった。
『うん!白髪のおねぇちゃんも可愛いけど、みじゅ色の髪のおねぇちゃんも可愛い!』
「あ、ありがとうね…君も可愛いね」
『うん!』
その女の子は満面の笑みを浮かべて僕たちに笑いかけてきた。
か、か、かわええぇぇ〜〜
そのあとその女の子のお母さんが僕たちに向かって謝ってきた。
ちゃんと大丈夫だからと伝えてそのまま会場へと入った。
「ねぇ、リリーネ。僕ってそんなに女の子っぽい?」
「え?気づいてなかったの?私が最初あったとき女の子かと思ったからね!あ、だからって髪の毛切らないでね?後ろでポニーテールにしてる諸刃くん好きだから!短いのも可愛いけどね」
「そ、そっかじゃあこのままにしておいた方がいいのかな?」
男の子というよりこのままじゃ、男の娘になっちゃうよね…
劇は2時間ほどで終了した、
内容は俗に言う恋愛もので,魔人族の女の子が人間族の王子様に恋をする物語だ。
互いに愛し合っていたが、結局人間の男が裏切り魔人の女の子を殺してしまう。だが、その魔人の子はアンデット化してその男と一緒に過ごすため彼を殺してしまうと言うちょっと…いや、だいぶ重い内容の劇だった。
僕はあまりライトノベルとかアニメは見なかったから分からなかったけど、いわゆるサイコホラーだよね?
横を見たらリリーネは泣いて感動してるし…感動の基準がわからない。
まぁ…それほど純粋ってことだね…
でも…人間界か…
また行ってみたいな…
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