異世界編 第2話 小さな冒険
ミクルはかっこいいパパと優しいママの大切な子供なのです。今日は友達のモモちゃんとゼロ君と遊んでいるのです。
「ふふっ、ミクルちゃんかっこいい。」
「エッヘンなのです。」
その日はママがくれた黒いマントを着て遊んでいた。
「ふっふっふっ、これはママが勇者をしてた時の物らしいのです。」
「え~、すごい!ミクルちゃんのママはすごかったってお母さんが言ってたよ。お母さんがピンチの時に助けてくれたって。ねぇねぇ、ゼロ君のママはなんて言ってたの?」
「…優しい人だって言ってた。」
「ふ~ん、ゼロ君も気になってるんだ。ミクルちゃんのママがどんな人だったのか。」
「…」
「ねぇ、それならさ。危ないところ行ってみない?私たちだってできるってお母さん達に認めてもらおうよ。」
「ふふん、ミクルに任せるのです。」
「…うん」
「決まり!じゃ早速、出発ね。」
3人は森の中へ歩いて行った。
進んで行くと荒れ地に大きな祠があった。
「ここからは危ないってお母さんが言ってたけど、今の私たちなら大丈夫!」
3人は祠に入って行った。しばらく歩くと広い場所に出た。
「おお、こんな広い場所があるんだ。」
モモが振り返り二人に笑いかけると後ろで大きな影が落ちてきた。
「…!」
「モモちゃん!危ないのです!」
「え?」
大きな手がモモに襲い掛かった。その瞬間、モモは持っていた盾でガードした。
「あっぶないな。もう、誰よ!」
(わしの眠りを妨げるのは誰じゃ)
目の前には大きなドラゴンの骨があった。そしてその骨がドラゴンを形どりながら動いていた。
「わっ、何こいつ。」
(焼き尽くして骨にしてやる)
ドラゴンの口に黒いものが溜まっていく。
「―メガシールド―!」
モモは持っている盾を魔力で巨大化させ3人を護った。
(ん?その娘どこかで…)
ドラゴンはミクルを見て言った。
(思い出したぞ!昔、わしの眠りを妨げた挙句その後わしを消し飛ばした小娘か!許さん!)
ドラゴンの手がミクルに向かう。
「危ない!」
モモがミクルを突き飛ばした。モモはそのままドラゴンの手に薙ぎ払われてしまった。
「はは、ちょっとまずいかもね。」
「モモちゃん!」
「…!」
二人がモモのもとへ駆け寄る。
「2人は先に行って!ここは私がやる。」
「でも…」
「ママと同じ勇者になりたいんでしょ!私のことはいいから!」
「だめなのです。モモちゃん、ミクルは…」
「…」
ゼロが相槌をするとミクルを抱え奥へと走った。泣き叫ぶミクルを見てモモは覚悟を決めた。
「さて、私もお母さんの稽古を頑張ってきたんだ。これくらい倒せないとね。」
ふらふらと立ち上がった。立っているだけで限界に近い。
「自分の命を張ってでも友達を護る。お母さんの言ってたこと守るよ。」
ゼロはあの場所からある程度離れた場所でミクルを下した。
「モモちゃんが…早く助けに行かないと」
ゼロはミクルの胸元を押さえた。そしてマフラーで隠していた口元を見せて言った。
「あいつは…ああ決めたらもう引き下がらないんだ。あんたが言ったところであいつの邪魔になるだけだ。あいつの意思を考えろ、あいつを無駄死にさせたいか…」
「こんなゼロ君初めて見たのです。」
「俺とあいつは腐れ縁だ。あいつのやりたいことはわかる。だからこそ、お前は前に進まないといけない。」
ゼロ君の言葉を受けて、私は吹っ切れた。
ありがとう、優しくそう言うと突然とてつもない寒気がした。
「急に寒くなったのです。」
「…!」
足元が急に凍り始めた。
(誰じゃ?妾の邪魔をするのは)
そこにあったのは強い冷気をまとった大きな結晶だった。
(ほぉ、これはいい体じゃ。氷像にし、糧にしてやろう。)
「…!」
ゼロ君が私の前にでた。そしてゼロ君は私に目で伝えた。先へ行け、と。私は急いで先へ急いだ。ゼロ君を残して。
(一人は逃がしたがまぁいい。)
足元の氷をつたって足が凍っていく。だが、ゼロは平気だった。そしてゼロが手をかざすと氷を吸収していった。
(その魔力、見覚えが…。そうか、貴様はあのレイの子か。ならちょうどいい。妾の復讐に役立ててやろう。)
周りが氷のドームで囲まれた。
「…ちょうどいい。俺はあまりこの姿を人に見せたくはなかったからな。」
ゼロは着ていた厚手のコートを脱ぎ捨てた。その体の一部は凍りついていた。
「これで全力を出せる。お前の氷はぬるすぎる。俺はとっくに母さんの力を超えてるんだ。」
ミクルは必死に走っていた。ただひたすらに涙を堪えて。
しばらくするとまた広い場所に出た。
(我はカースゴースト。呪いを司る太古の怨霊なり。汝は何をしに来た。誰かを呪いたいのか?)
「ミクルは勇者になりに来たのです。」
(勇者…、我には何も言えん。我は幽霊になり間もない頃、勇者に倒された。我は勇者に怨念があるのだ。)
「ママに倒されたのですか?」
(ママ…?そうか、お前はあいつの…!)
「な、なんなのですか?」
(お前は絶対に許さん!だが、利用してやろう。お前に憑依し、あいつの前でとんでもないことをしてやる。そうなればあいつは絶望するだろうなぁ。はっはっはっ…)
ミクルは気がつくと得体のしれない圧迫感を感じた。何かが自分の中に入ってこようとする違和感に襲われた。
「な、なんか変なのです。」
(ちっ、精神力が強すぎる。なら、まず体力を削ろうか。)
周辺の壁が迫ってきた。
(これでつぶれろ。)
ミクルは大丈夫だった。自分の魔力は物を柔らかくすることができる。手が届く場所に壁が迫った時、壁に手を当てた。そして完全に閉じてしまった。
(これでもう立ち上がれないだろう。)
壁を元に戻そうとした。だが、まだミクルは平気だった。
(なぜ無傷で…)
「ふふん、ミクルを舐めないでほしいのです。」
(なら、これで)
目の前から大きな岩が転がってきた。ミクルは絶体絶命だった。物を柔らかくするためには自分の魔力を直接流し込まないといけない。勢いよく転がる大岩の前では無意味だった。
「くっ…」
ミクルはそのまま転がってくる大岩に押しつぶされてしまった。
「ううっ…」
(はっはっはっ、最後に絶望させてやろう。)
ミクルの頭の中に白い靄がかかり、映像が流れだした。その映像はところどころ白骨化してぼろぼろのモモと氷漬けになっていたゼロだった。
「あっああああああ…!」
ミクルは絶望した。自分のせいで友達が死んでしまった。つい今朝まで仲良く話していたのに今では惨たらしい姿になっていた。
気づいたころにはミクルは完全に意識を失ってしまっていた。
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