末離編 外伝3 スベテヲクラウ イッシンドウタイ
私はこの子に自分を食べさせていった。血から小指、手、腕、足とどんどん食べるようになっていった。でも、この子は絶対に私を殺すことはなかった。いつかは私をすべて食べてもらわなければならない。それでこそ本当に一つになれるから。
そして何年たったかも忘れたような日に私はこの子に言った。
「よし、今日で終わりにしよう。そうだ、まだ名前つけてなかったね。えっとね、地獄だからヘルちゃんでどう?」
そう言うとお座りをした。
「うん、それじゃ。最後の仕上げ。ヘルちゃん、
“私”を食べて 」
ヘルちゃんは怯えているようだ。
「私と一緒に行きたいならそのくらいできないとダメだよ。」
ヘルちゃんが悩んだ様子を見せ、少し経った。
痛みは一瞬だった。ヘルちゃんは私が苦しまないように正確に首を飛ばした。
いくら経っただろう。私は再び目覚めた。ヘルちゃんが私の顔を舐めている。
「ありがとう。最後に一つだけ聞くね。本当に私なんかと一緒に来てくれるの?私と一緒に生きてくれる?」
ヘルちゃんは遠吠えをあげた。
「じゃあ、一緒になろうか。ヘルちゃんが現実世界にいると目立つからね。私と融合して二人一緒に行こう。」
私が左手を前にかざすと左の背中から翼が生えた。まだうまくコントロールはできないけど、私は悪魔の力も使えるようになった。その力の一つが「契約」だった。何かを代償に願いを叶えることができる。その力で私はヘルちゃんと融合する。
いろんな感覚が流れてくる。だけど、そのほとんどは自分にもあった。
「ふぅ、終わったかな。」
私は新しい自分を見る。
(ねぇ、ヘルちゃん。新しい右腕って出せないかな?ちょっと不便だから。)
そう伝えると新しい右腕が生成される。それに色がつくことはなく影のように真っ黒でゆらゆらと揺れている。
「これでいいけど、さすがに人前には出せないかな。」
そう思っていると後ろからあの時の大きな蛇が現れまた飲み込もうとしている。その時、私の右手は獣の腕に変化した。
「こんなもんね。」
終わった時には大きな蛇は輪切りになっていた。
「ヘルちゃんの力と悪魔の力を併用できるようになったらもっと便利かも。」
そう思っていると閻魔様の声が聞こえてきた。
「終わったか。孤独の暴食よ。」
「私は暴食なんかじゃない。あの“ワタシ“とは違うの。私は食べることだけじゃない、私たちは自由なの。言うならば強欲ってところかな?」
「“混沌に混ざり希薄になりやがて深淵に呑まれる“それがお前の運命だ。」
「私が混ざり物って、言い例えね。私は私じゃダメ。色んな私でないとお姉ちゃんたちに会えないから。」
「あの代償は一体性か…」
「ううん、違う。私は全部を受け入れた。そこには新しい私が在る。失ったものといえば、私の弱さかな。力にしても心にしても、ね。」
「お前は永遠に救われないだろう。次にここへ戻るときは罪人か。」
「私は元から罪人だった。私は私の弱さに負けたの。だから、暴食に呑まれた。アイン君を救ったとき、私は心の強さを手に入れた。だから、暴食にも勝てた。」
「なれば、救われぬ。お前の未来は…白…?」
「…?」
急に閻魔様は不思議な反応を見せた。
「そうか…。お前は救われる。白に染まれぬ黒にも堕ちぬ混沌の悪魔よ。贖罪の時はいずれ訪れる。永遠にも満たぬ深き深淵の獣よ。」
「?」
その言葉は意味不明だった。
「今は分からぬ、お前の未来はそういうものだということだ。」
「そう。もう私は行くね。」
私は地獄から抜け出した。
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