レナリアお嬢様の現状
うつらうつらとしながらもジュダスとシェーナの情報を聞きたいミシェイルは、ソファに深々と座りながらジュースを飲んで目を覚まそうとする。「後日にしてはいかがか」と二人から言われているが、「大丈夫だから」と目をこすって先を促す。
「まず屋敷にいる使用人たちですが、どうも公爵と公爵夫人が用意している使用人たちのようですね。人数を集めるのにけちったようでろくな人員ではないようですな」
「お嬢様に対しては過保護というか忠誠心があるのは、どうやら彼らをなんとか教育し直して給金を上げるように計らってみたいで……。公爵夫妻は帳簿など見ませんから、お嬢様は秘密で采配を振るったようです」
「その割にはわたしに対して酷い対応だったけど」
「まあ教育途中ということでしょう。あれがお嬢様のためになると思ってるんだ」
なるほど、と頷いたミシェイルは、次に「家族のほうはどうなの?」と尋ねた。
「公爵夫妻と兄はあまりこちらの屋敷には帰らず本館で過ごしているようです。こちらは別邸ですね」
「本館のほうは人を招いたり贅をこらしているようですが、お嬢様は勉強と称してこちらに一人で住まわせているみたいです」
「どうしてお嬢様だけ?」
「どうも以前に家族に対し正論を吐きすぎて煙たがられてしまったようですな。しかし王子の婚約者として利用したいから領地に閉じ込めるわけにもいかず、ここにいるということです」
うう~ん、とミシェイルは細めでうなって天井を見上げた。
正論を吐きたくなるのは理解できる、前世の記憶もあるしおかしいとおもうことはたくさんあるのだ。実際ミシェイルがモニカだったときもやらかしてしまった記憶がある。
(でもあれ、今考えるとくそ生意気だし受け入れられるワケないだろって思うんだよね)
前世の知識をもとに小さな子供から大人まで正論をぶつけるとそりゃあ気持ちいい。だけど普通に考えてその行為は「痛い」と言わざるをえないとミシェイルは思う。
(思い出すのも恥ずかしいけど、そういう我慢できずにかましちゃうところはやっぱ子供としての自分に引きずられてしまうのかな)
ミシェイルの周囲にいる大人たちは笑って許してくれたが、レナリアの家族は許してくれなかったらしい。それがこの孤立となってしまったということか。
「わたしは今日一日彼女に付いて一緒に勉強したのだけれど、どう考えても5歳の勉強量ではないしわたしに対してもできて当たり前というような態度だったわ。そりゃあわたしならできることはできるけど、普通の3歳にはできることじゃないのよね。なんというか……そう、生き急いでいる。味方が少ないから焦っているのかしら……」
そう言いながらもうつらうつらしはじめたミシェイルに、ジュダスとシェーナはお互いの目を見合わせた。
「姫様、そろそろ寝ましょう」
寝ましょう、という言葉に、「ええ」と返したあと、ミシェイルは一瞬のうちに意識を手放したのだった。
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