はっと目を開いたら、いつの間にか朝になっていた。目をこすりながら起きあがって窓の外を見ると、日が随分高い位置にあることに気付いた。久しぶりの「遅刻した！」という心臓から汗が噴き出るような感情を体験した。

急いでベッドから飛び降りると、そこへシェーナが入ってきた。

「姫様、起きられたのですね」

「どうしよう！寝坊しちゃった！」

「大丈夫ですよ、レナリアお嬢様には伝えてあります」

なんでも、初日でくたくたに疲れて眠り込んだミシェイルを見て今日は休ませなければと思い、レナリア及びその周囲の人々に説教をしに行ったらしい。

「ミシェイルはまだ3歳なのです、午睡や補食など配慮が必要な時期にあなたがたはいったいなにをしているのです？いくら貴族だからと成長のさまたげになるほど勉強するなどありえないでしょう。レナリア様、それはあなたにも当てはまりますからね。幼児の体に合った生活をしませんと、いつか体に反動がきてしまいます！」

レナリアはそれを考慮していなかったとでも言うようにぽかんとした表情をし、聞いていた使用人たちも忘れていたという表情をしていたようだ。「あの方たちはどうしてああなのでしょうか？」と少々不気味な物でもみたかのような顔をシェーナはしていた。

そこに、こんこんとノック音がしたためシェーナが対応すると、こちらをうかがうように振り向いた。

「姫様、レナリアお嬢様がいらっしゃいました。お話がされたいとのことですが……」

「午後のお茶とお菓子をご一緒しましょう。わたしもまだ寝起きだから」

シェーナは頷いてそのことを伝えるとぱたんと扉を閉めて戻ってきた。

「天気がいいので外の東屋でということでした」

「わかった。はあ、どういう話かしら」

「本日私がお説教を聞いて青ざめていらっしゃいましたから、謝罪をされるのではないでしょうか？」

「うーん、なんというか、しっかりされているのに不器用な方ねえ」

この訪問で目が覚めたミシェイルはお茶会の準備をするため動き出した。

そしておやつ時、ミシェイルが庭園の東屋に向かうとすでにやってきていたミシェイルお嬢様がお茶とお菓子の采配を使用人たちにふるっていた。こちらに気付くと目を大きく見開いて足早に近づいてくるものだからミシェイルとシェーナがぎょっとしていると目の前で立ち止まりがばっと頭を下げた。

「申し訳ありません！」

開口一番の謝罪に二人も周囲にいる使用人も目が点になっていたが、いつまでも下げられたままの頭にミシェイルは慌てて声をかけた。

「ちょ、いけませんお嬢様！頭を上げてください！」

「ですが、あなたは王家の」

「あー！待って待ってください、そのことはお気になさらず！まず、そうまずはお茶をゆっくり飲みましょう、ね？」

そう言ってなんとかレナリアに頭をあげてもらったミシェイルは、その背中を支えるように押して東屋の椅子に向かったのだった。

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