躾がなっていない侍女の根性を叩きなおす
先ほどの脅しも効力が切れたのか、侍女はふてぶてしい顔でミシェイルには目もくれず正面に座っていた。
「ねえあなた、名を名乗ることもできないの?本当に無能」
ミシェイルが冷たい表情で言うと、すぐにこちらを睨みつけた侍女は苦々しげに答えた。
「お前に名乗る必要性を感じないわ」
「あっそ。お嬢様ったらこんな無能を送り込んでくるなんて資質を疑うわ」
レナリアについておとすと、途端に侍女は牙を剝き出すように叫んだ。
「お嬢様を侮辱するなど!」
「お嬢様を侮辱しているのはお前よ」
「な⁉わたしはお嬢様の」
「いい?わたしは、お嬢様に、迎え入れられたの」
血が上った頭にも理解できるよう、ミシェイルは言葉を強調するように区切って伝えた。
「あなたはお嬢様がわざわざ探し出して招き入れた存在なの?」
「!!」
「違うでしょ、あなたは推薦かなにかでお嬢様のお屋敷にやってきただけに過ぎない。わたしは違うわ、お嬢様が自ら視察にきて、自ら召し抱えると告げられた存在なの」
「そ、それは」
小首をかしげた3歳児の幼女などきっと恐ろしいに違いないが、ミシェイルは盛大に偉そうにして見せた。
(すぐにキレるし頭は悪そうだし、本当にこのような侍女がお嬢様の専属なの?)
「きっとお嬢様はわたしによくしてくれると信頼してお前を送り出したんでしょうに、お前ときたらとんだ役立たず……」
「くっ」
唇をかんだ侍女は、怒りを抑えるために数回呼吸をした。
「わたしはライラよ。お嬢様の専属侍女をしているわ」
「そう、よろしくライラ。まああなたがやったことはきっちり報告させてもらうけど」
こぶしをぎゅっと握ったライラは、ふと真顔になった。そして大きく目を見開き思ったら顔を真っ青にした。
「よ、幼児がこんな言葉を発するなんておかしいわ。あ、あなた、まさか悪魔」
「そんなわけないでしょ。あなたのお嬢様だって似たようなものじゃない」
「お嬢様は特別なんです」
「そうでしょうね。そしてわたしも特別だった。だからお嬢様に選ばれたのよ」
はっとした顔をしたライラは、今度はまじまじとミシェイルを観察しはじめた。
「お嬢様は自分のことについてあなたに何か話しているの?」
「……まだ信用できないあなたに何か伝えることはできません」
(それ、なにかあるって言ってるようなものじゃない)
そう思いながらもミシェイルは軽く頷くにとどめた。
「あなたに言っておくけれど、わたしもお嬢様の屋敷にいる人間を信用できない。あなたも外の騎士や従者も、敵愾心が強すぎるわ。だからしばらく子供のふりをさせていただくからそのつもりで」
わたしは行きたいと言ったわけでもないのに、とぶつくさ言うミシェイルにライラは困惑したような顔をした。
「それではなぜわたしに子供のふりをすることをやめたのです?」
「わたしの役に立つように躾なおそうかと思って」
「は?」
意味が分からないという顔をしたライラに、ミシェイルはにっこりとほほ笑んだ。
「これからわたしの手足となって情報を集めてもらうからよろしくね」
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