公爵家へ到着、早々にかましてやりました
馬車内ではそれはそれは恐ろしい光景が出来上がっていた。
「なぜわたしがそのようなことを」という反発から始まり、「私は子爵家の出身で」「ミシェイルお嬢様の側使えに選ばれて」「お嬢様から信頼されており」とライラの言葉は続いた。
そのたびにミシェイルは言葉を一つ一つ潰していき、外見に見合わぬ流暢さと威圧感に遂にライラは涙を流した。
「ねえ、泣く必要はないのよ。わたしの言う通りにしてくれたらそれでいい。一体何が困るっていうの?」
「わ、わたしには大それたことなど」
「そんなこと頼まないわよ。ただちょっと噂話なんかを教えて欲しいだけ」
「噂話?」
ライラは諜報活動のようなものを想像していたのか目をパチパチと瞬かせた。
「家でのお嬢様の立場や働いている人たちの様子なんかを知りたいの。彼女の今後のためにもね」
「はぁ、その程度のことでしたら」
そんな話をしているうちに、ついに馬車はクルストン公爵家に到着した。
公爵家の敷地内ではさすがに騎士の仕事をしようと思ったのか、扉をあけた騎士は何事もなかったかのように手を差し出した。
「またあとでたっぷり聞かせてもらうわ」そうライラにささやいて、ライラを先に出した。そのあとにミシェイルが出ようとしたのだが、騎士の手を無視して馬車から出ようとしたところすぐにジュダスがやってきて抱き上げた。
無視をされた騎士はメンツを潰され顔を赤くしていたが、ここで文句を言うわけにもいかず黙って引き下がった。
開かれた正門からジュダスとシェーナを従えて入ると、中で待っていたのは10人の女性使用人と5人の男性使用人と思しき人々がずらにと並んで待ち構えていた。
(なんか脅し入ってるわね)
ミシェイルは素早く理解すると、すぐに平然とした面持ちを保ちながらも疑問でいっぱいだった。
(おかしいわね。いくら家に入れたくない農民だからってここまでするかしら?しかもこっちはまだ3歳なのに)
恐らく一番偉いのだろう女性が前へでてミシェイルを見下したように見つめた。
「やっとついたようですね」
(ふむ、挨拶もなく喧嘩腰か)
一番偉いだろうにこの様子はいったいどういうことなのか、ミシェイルはよく観察をすると待っていた使用人たちは全員同じような表情でこちらを見ているのだ。
(本当に公爵家の使用人なのかしら。ライラがなってないだけではなく、全体として質が悪い)
そう思っていると、侍女長はミシェイルの今後について勝手に話し出した。
「まったくレナリア様の優しさに付け込んだこのような者たちを招き入れねばならないなんて。いいですか、せっかく来たのだから下働きとして仕事は与えてあげましょう。せっかく拾われたのですからレナリア様のために尽くしなさい」
「お嬢様からはそのようなことは聞いておりませんが」
3歳児が流暢にしゃべりだしたことに侍女長も使用人たちもぱかりと口を開けて目を見開いた。
「そもそも私の采配に関してお嬢様から許可は得ているの?」
なおも追撃すると、我に返った侍女長は怒りをあらわにした。
「使用人の権限はわたしの管轄です!お前たちの采配もわたしが決めます!」
「そうですか、じゃあ帰ります」
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