第9話坩堝

「で、お前はそれを俺にしたいのか?」


ベッドにあぐらをかき、幸成は最終確認をした。

倉敷は若干乱雑になっていた机の上を片付けつつ「うん」元気よく首肯してくる。

幸成は溜息を吐き「…こないだもしなかったか?」ベッドに倒れ込んだ。


「あれは違うよ、これとあれは違うのっ」

「そうなのか?」

「そうだよ」


天井を眺めていると倉敷が覆い被さってきた。

光を背にしているのに、相変わらずの面構えだ。

なんでまた、優良遺伝子なのにそれを残そうと本能は働かないのか。

働いてほしいのか?


「…欲しいわけねぇだろうがっ…」


考えておいて苛つき呟いてしまう。


「…嫌?」

「あ、違う、嫌じゃねぇけど」

「じゃあする」


そう言うや、素早く手早く。

すぐに熱くなって目眩がした。


「…んなに…手放しにくくしてどーすんの…」


ついつい熱に浮かされ口にしてしまえば、


「俺の思うつぼってやつだよ」

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