第8話かわたれどきのしりゅうのそこの
なんでか夜間に出歩きだ。
嫌な予感がしてたまらなかった。
学園祭でここまで残るのも始めてだ。
最後だからと思った自分が忌々しい。
帰ってしまえば良かった。
けれどそれでは級友としこりが残りそうで。
結果がこれだ。
星の見えない不安な夜だった。
そもそも自慢ではないが夜目が利かない。
だから見えなくて不気味で怖い。
それに学園は山側にあるからか風が冷たい。
身震いした。
買い出しになんて付き合わなければ良かった。
今からでも良い、引き返すべきだ。
「…寒い?」
どこから現れたのか、倉敷が幸成の手を取り歩き出す。
思わず振り返る。
誰も居なかったことにほっとする。
「なんで居んだよ」
お前は隣のクラスだろ。
それでも手はされるがまま、暖かすぎて手放せない。
「夜だと繋いでても見えなくて、いいね」
語尾のハートが口の中に入ってきた。
喉にちくっと刺激を与えてから、やんわり内臓をほっこりさせてくる。
外灯がほとんどない、進みがたい薄明かり。
いやに紫の世界。
背筋が凍っても当然と皆は言うだろう。
けれど、涙が出そうなほど、嬉しかった。
「…ばーか…」
誤魔化す為に口にするが、抱き絞められるに似た手への抱擁。
それに力強く返す。
「ふふふ、幸せだね」
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